日本鍼灸医術の形成―近世医学史の再構築

班長 長野 仁

現代鍼灸は、極端な欧化政策による鍼灸廃絶の危機を回避するために、医科学的アプローチによる臨床研究を最優先課題とし、医道の伝統を継承しつつも歴史的な側面は置き去りにしている。日本医学の通史を振り返る時にも、近代医学の系譜として先駆的業績を顕彰するに止まり、近世に大いに発展した鍼灸医術の種々の流儀や理論的構造に論及することはない。しかし、京都大学の富士川文庫をはじめとして、数多くの流儀書、理論書が伝存しており、日本医道における技術的伝統は手がつけられないままに埋没している。

そこで、本研究では、鍼灸関連の古医書の総合的な考察を試み、鍼灸医術の形成、伝承形態の具体的様相を明らかにし、多角的なアプローチによって鍼灸医術の本質的特色を探る。そして、「日本鍼灸学」という新分野を開拓し、医薬、鍼灸の学界に遡及的考察を行う研究基盤を構築することによって、近世医学史の再構築を図る。

班員
武田時昌(副班長)・古勝隆一・高井たかね