絵画修復への寄付

東日本大震災への対応

東アジアの宗教文化と自然学

班長 武田 時昌 

 東アジアの自然学の形成と展開において、道教、仏教を中核とする宗教文化の果たした役割はきわめて大きい。五経の経典解釈を政治思想に応用しようとする儒学は自然探求の学問には消極的であったために、科学研究、技術開発の場は官僚体制の枠外にあった。一方、道教は道家の自然哲学や養生術を理論的基盤とし、仏教は古代インドの科学知識に立脚して独自の世界観、生命論を主張しており、世俗空間に生息する科学と宗教は相補的な関係にあった。そこで、本プロジェクトでは、東アジアの道教、仏教、神道及び民間信仰とその周辺において唱えられた言説が自然学の中心的論題である宇宙論、自然観、生命論などの形成にどのような作用を発揮したかを考察する。

 主要な考察対象は、以下の2つの事項である。(1)道教、仏教の修養法における身体論、養生術と医薬学の関連性、(2)仏教、道教が依拠する世界観とイエズス会士によってもたらされた西洋の宇宙構造論との抵触及び近世天文学研究への影響。それぞれについて、中国、韓国そして日本における具体的な様相を探り、それぞれ場合を比較しながら、宗教文化と自然学の相互連関に構造的把握を試みる。

班員
ビル・マック、髙井たかね