第一次世界大戦の総合的研究(2010~2013年度)

班長 山室信一、岡田暁生

第一次世界大戦の総合的研究
第一次世界大戦は大量殺戮兵器が実戦で本格的に使用された戦争である。そればかりでなく、この戦争は従来の世界 システムそのものを根底から変化させ、既成の思想や芸術のありようを一変させることとなった。

1914年から始まった第一次世界大戦(以下では第一次大戦と略記)は、21世紀の今日なお、その中にわれわれが生き続けているところの「現代世界」の幕開きを荒々しく告げる出来事であった。戦争のグローバル化およびボーダレス化、技術開発競争、科学界・産業界までも巻き込んだ総力戦、理性への不信、教養文化の崩落と科学技術崇拝、国際’協調システムの模索など、現在でもわれわれは第一・次大戦がもたらした衝撃の只中にいるといっても過言ではない。第一次大戦とともに始まったこの時代は、たとえばホブズボームのいう「短い20世紀」のように、ソ連・東欧の社会主義の崩壊とともに終結したわけではなく、それはむしろ「長い20世紀」として現在にまで及んでいる。しかもロシア革命およびマルクス主義が世界的規模において有した絶大なインパクト自体が、第一次大戦による「西洋の没落」(シュペングラー)とその克服の模索を背景としていたと捉えれば、社会主義の崩壊によって、我々はまさに第・凸次大戦がもたらした境位に再び改めて直面しているとさえ言えるだろう。

このような第一次大戦のインパクトの内質を、文化の垂直軸(文化ジャンル横断的)および水平軸(通文化的)の両面で検討し、同時に大戦後世界(第二次世界大戦を含む)を視野に入れつつ模索することが、本研究班の目的である。1年目となる2007年度は、芸術、政治、経済、社会、思想のさまざまな分野において、第一次大戦がどのような位置を占めていたかについて発表者に問題提起をしてもらい、その共通点と相違点を探った。また2008年度には、全学共通科目の提供、レクチャーコンサートの開催などを通して、社会発信も積極的に行ない、ブックレット出版も構想されている。


所内班員
石川禎浩、伊藤順二、岩城卓二、王寺賢太、大浦康介、小野寺史郎、籠谷直人、小関 隆、高木博志、高階絵里加、竹沢泰子、田中雅一、立木康介、富永茂樹、水野直樹、藤井俊之、小野容照、藤原辰史、石井美保、小川佐和子、瀬戸口明久