近現代中国における社会経済制度の再編

班長 村上衛

近現代中国における社会経済制度の再編
福建省南部の漳浦県にある土楼の瑞安楼。1816年建設。福建省南部においては、宗族同士の争い(械闘)が盛んであり、こうした土楼のような防衛施設を兼ねた大型集合住宅が数多く建設された。械闘や土楼建設、そして宗族の地域社会の安定に対する役割といったことも制度をめぐる一つの重要なテーマとなる(2002年撮影)

近三十年あまりの中国経済の躍進にともない、日本人を含む外国人が中国で経済活動を行う機会は増大し、中国系の人びとと中国の内外で頻繁に接触するようになった。しかし、相互の常識・行動様式などの違いにより、様々な摩擦も生じている。そうした問題を理解・解消するために、中国の社会・経済に対する深い理解が一層必要となっている。

また、英語圏の歴史研究ではグローバル・ヒストリーのような、広域的・長期的な視野をもちつつ比較を重視する研究が大きな潮流となっている。その中で、中国に関しては、18世紀までの中国の中核地域における経済水準が西欧のそれと匹敵していたことが強調される傾向にある。しかしながら、こうした研究では、19世紀以降において、中国と欧米・日本の間で経済格差が拡大していったことや、近三十年間に中国が急速に経済発展したことについての説明は十分できていない。したがって、前近代の中国経済を評価する潮流に対し、中国近現代における社会・経済の発展を規定していたものを探求し、その研究成果を日本から発信していくことも重要であろう。

そこで本研究班は、前近代中国、特に17世紀以降の中国において社会・経済を規定してきた慣習・常識・規範・秩序・行動様式といった「制度」が、近現代においていかに変容したかを多角的に検討する。

具体的なテーマとしては、例えば社会を安定化させる制度、取引を円滑に行うための制度といったものが想定される。また制度を機能させていたものとしては、例えば地方政府・地方官僚、商人団体(会館・公所、商会)、企業、血縁集団(宗族など)、秘密結社、武装団体(団練・郷勇など)、仲介者など、さまざまなものが考えられる。本研究班では、そうした制度やそれを支えるものが、近現代にいたっていかに変容をせまられ、変化したか、あるいは変わらなかったのかを、社会・経済の様々なレベルの実証研究を通じて明らかにしていきたい。同時に、これらの制度が中国だけの特殊な制度であるのかどうかを、他地域との比較を通じて検討してみたい。


所内班員
石川禎浩、岩井茂樹、籠谷直人、武上真理子、山崎岳、森川裕貫