戦間期ドイツの精神分析の発展と社会理論への影響についての研究

班長 上尾 真道

本研究の目的は、戦間期ドイツにおける精神分析の理論・実践・制度に関する発展について調査し、それらが広く社会理論へ与えた影響について細かな分析を行って、その実相を明らかにすることである。
 戦間期ドイツは、当時もっとも民主主義的な憲法と謳われたワイマール憲法のもとで、民衆の生き生きとした文化的実践が花開いた時代であった。と同時に、第一次大戦が人々の心身に残した大きな傷跡と、やがて来る第二次大戦とファシズムの予兆とに挟まれて、暴力性や排他主義など、今日でも解決を見ない大きな課題に直面していた時代としても理解される。そうしたなかにあって、ドイツ語圏の精神分析は、一方で制度として、無料診療所の運営や、教育セミナーの開設など、社会的アクターとして定着していくと同時に、他方では、マルクス主義やその他の社会主義思想などとの影響を通じて、創始者フロイトの着想から離陸するような、幾つかの新たな理論的展開をも示している。こうした多様な動きについて、これまで、社会史的観点も踏まえつつこれを総括的に捉える研究は行われてこなかったのに対し、本研究は、歴史的対象としての精神分析を細かく検討することで、現代社会にも光をあてるような、精神-社会の理論・制度的な節合関係を解明することを目指す。

班員
立木康介