転換期中国における社会経済制度

班長 村上 衛

 本研究班は中国において社会・経済を規定してきた慣習・常識・規範・秩序・行動様式といった固有の「制度」が転換期(1980年代以降、清末民国期、明末清初期)において、どのように維持され、あるいは変容してきたのかを検討する。
 近20年の中国の高度成長の中で中国経済の世界経済に占める割合は高くなり、経済水準は大幅に上昇した。しかし、中国経済の拡大と人的交流の増大にともない、中国固有の「制度」が顕在化する場面も増えてきており、様々なレベルでそれに直面した日本人を含む外国人が当惑するケースも増大している。これは経済発展にもかかわらず、中国の社会経済「制度」が欧米や日本とは大きく異なっており、外国人がそれを理解できていないことが原因である。様々なレベルで生じている中国人と外国人の間の摩擦を解決するためにもこうした「制度」を理解することが重要になっている。
 また英語圏におけるグローバル・ヒストリー研究は比較史研究を活性化させたが、19世紀以降における西欧と中国の「大分岐」あるいは日本と中国の「小分岐」についての説明は十分にできていない。それは、これらの「分岐」の背景にあるそれぞれの地域の社会経済「制度」の違いを理解していないからである。かかる歴史的な課題の解決のために「制度」の研究の必要性はますます高まっている。
 本研究班では転換期において様々な衝撃のなかから顕在化してくる社会経済「制度」を様々なレベルで検討し、その研究成果を広く発信していくことを目指す。その際には前回組織した「近現代中国における社会経済制度の再編」班において積み上げられた個別実証研究をふまえつつ、より抽象的なモデルの抽出の段階へと進んでいきたい。

班員
石川禎浩、岩井茂樹、籠谷直人、武上真理子、森川裕貫