前近代ユーラシア東方における戦争と外交

班長 岩井 茂樹・古松 崇志

ユーラシア東方は、草原・砂漠から成る乾燥地帯の中央ユーラシア東部と世界屈指の農耕地帯である中国本土とにまたがる地域である。そこは、古くから北の遊牧・狩猟民と南の農耕民という異なる生態環境に根ざした生業を持つ人びとが接触・交流する場であった。北方の遊牧・狩猟民集団は、前近代には最強だった騎馬軍事力を武器として、何度も強大な遊牧王朝を形成して南の中国王朝と対峙し、ときには中国本土を軍事制圧して支配下に入れることもあった。北方草原の遊牧民と中国本土の農耕民とあいだの対立・共存・支配被支配・融合といった多様な関係性は、ユーラシア東方の歴史の基調をなすといってよい。本研究では、12世紀前半にマンチュリアより勃興してユーラシア東方に覇を唱えた金(女真)と宋朝との関係をおもに記した南宋時代の史書『三朝北盟会編』を取り上げる。文献の精読をつうじて、ユーラシア東方における遊牧王朝と中国王朝とのあいだの戦争と外交の実態を実証的に解明するとともに、金の華北征服という北方からの衝撃が、当時の中国の政治・社会・文化にいかなる影響を及ぼし、いかなる変容をもたらしたのかという、中国史上の重要な問題を考究することをも目指すものである。

班員
矢木 毅・村上 衛・高井たかね