前近代内陸アジアとその隣接地域の社会と文化

班長 稲葉 穣

いわゆる古代文明発祥の地であり、伝統的に独自の歴史文化を形成してきたとみなされる西アジア、南アジア、東アジアは地理的には海上と内陸アジア(中央アジア、中央ユーラシアとほぼ同義で用いる)の陸上ルートを通じて様々な形で接触してきた。その接触の場を提供し、時にこれら大陸縁辺の世界に多大な影響をおよぼした内陸アジア世界もまたそれらの地域と同等に一つの文化世界、歴史世界であるかのように措定されてきたが、そのイメージは砂漠とステップと遊牧部族が支配的な空間、というものであった。しかし20世紀末にソヴィエト連邦が崩壊し、パミール以西の内陸アジアが世界の研究者に対して門戸を開き、また東トルキスタンにおいて中国の非常に活発な研究が進んだことにより、当該地域を研究するための材料や視点は漸次増大してきている。このような状況を踏まえ、今後進められねばならないのは、上述のようにステレオタイプ的に理解されてきた内陸アジア内部の地理的なdiversityや、社会結合のあり方、都市に関するより詳細な研究である。本研究班は古代から近代に到る内陸アジアとその隣接地域に関する様々な社会研究、文化研究のケーススタディを積み重ねることで、多様な内陸アジア像を描き出し、ステレオタイプ的な理解の克服を目指す。

班員
船山徹、稲本泰生、中西竜也