研究会の趣旨


 19 世紀以降、旅行、在日勤務、長期出張などの目的で
日本を訪れた外国人が、多くの記録資料を書き残したこと
が知られている。それらは当時、様々な形で読まれたもの
であるし、日本においては現在も読まれ続けている。ただ
し、それらの資料の総体を整理分類し、多面的なアプロー
チによって分析するという作業は十分に行われているとは
言い難い。この点に貢献することが、本研究班の主旨であ
る。年代的に言えば 19 世紀の半ばから20 世紀半ばまでの
約百年間、いわゆる「長い19 世紀」を対象とし、その期間
を通じて、世界の中で近代日本がいかにして形成されていっ
たのかを検討してみたい。 


 日本について書かれた諸資料を読むにあたっては、様々
な側面を考慮する必要がある。近代日本と外の世界との関
わりはもちろんのこと、日本という存在がそれぞれの国の
知識人や大衆の文化の中でどのような位置を占めたのか、
そしてまた日本を訪れて記録を残した人々が、そのような日
本の位置づけにどういう形で関わっていたかという点など
である。本研究班では、それらを念頭に置きつつも、上述
の諸資料を「近代日本の記録」として読むことを基本とす
る。ただ同時に、近年、文化史研究において意識されてい
る、「見る」行為、「見る」側の立場によるアプローチや内
容の差異、という点にも注意をしておきたい。 


 本研究班のもう一つの目的は、同種の資料を専門とする、
あるいは関心を持つ、国内外の研究者を招くことにより、
研究ネットワークおよび研究者ネットワークを構築すること
である。研究班を通じて整理分析された資料を、研究資源
としてそのようなネットワークの中に置き、活用していくこと
で、「外から見た近代日本の記録」研究の成果を、再度「外」
へ向けてフィードバックすることが可能となるだろう。


京都大学人文科学研究所 付属人文学国際研究センター