藤原辰史の研究室  


★プロフィール
 1976年、北海道旭川市生まれ、島根県横田町(現奥出雲町)出身。1995年、島根県立横田高校卒業。1999年、京都大学総合人間学部卒業。2002年、京都大学人間・環境学研究科中途退学、同年、京都大学人文科学研究所助手、東京大学農学生命科学研究科講師を経て、現在、京都大学人文科学研究所准教授。

★専門
 農業技術史、食の思想史、環境史、ドイツ現代史

★研究概要
 農業とは何か? 食とは何か? 
 なぜ、人間生命の根源であるはずの食は、これほどまでに衰微したのか?
 なぜ、食べものは、世界中のおなかが減った子どもたちに届かないのか?
 なぜ、食べものを自然から創り出す農業は、市場経済に馴染みにくいのか?
 このような問いを、歴史学の立場から考えることが、研究の目的である。
 世界第一級の工業国・科学立国であったにもかかわらず、人間および家畜の食べものを国外からの輸入に頼り、農民たちも戦争にかり出されたため、第一次世界大戦時に飢餓に陥ったドイツ。この悲惨な体験に学んだナチズムは、「子どもたちを飢えさせない」国内食料自給自足体制の構築を目指したが、この事実からわたしたちが知らなくてはならないのは、世界史のなかで最も暗黒な時代をつくりあげたナチスの根幹には、農業蔑視にたいする怒り、食べものにたいする恨み、生きることにたいする不安があった、ということにほかならない。
 たとえば、大量の化学物質を添加した食料品、夜に野宿者へ弁当配りをするうボランティア、料理酒をラッパ飲みする男性がくつろげるフードコート、自社の農薬にのみ耐性をもつ種子の遺伝学的な開発、借金を返済できない農民、夜中に仮眠をとる客を追い出すファストフード店など、食と農の現状を知るたびに、「食べること」を主軸にした人文・社会科学の再構築が必要である、という思いに駆られる。たしかに、人間はパンのみにて生きているわけではない。他の生物を刻んで、焼いて、咀嚼し、飲み込む行為にのみ人生が割かれるだけでは、文化は衰弱する。けれども、食べものがこれほど不安定であり、生が脅かされつづけるこの世界システムのなかでは、生成する文化は、その持続力を失い、すぐに消費されてしまう。「食べること」、もっといえば「生きること」が生み出す人間社会の根底から、つまり、肉体から絞り出された言葉と思想こそが、持久力を持った文化を生み出し、それを土壌に新しい社会が育つのである。
 この文化創出プロジェクトのために必要な歴史の事実を調べ、まことにささやかではあるが、現在と未来に伝えていきたいと思っている。

R.W.ダレエ『血と土』黒田禮二訳、春陽堂、1941年。
原典初版"Neuadel aus Blut und Boden"は1929年。


シュトゥットガルト近郊のホーエンハイム大学農業博物館に展示されている木炭ガストラクター(1943年製、25PS)

残飯屋(松原岩五郎『最暗黒の東京』。さし絵:久保田金仙)

★研究テーマ
 ナチスの有機農業
 ナチスの収穫感謝祭
 ナチス期の農民生活
 第一次世界大戦期ドイツの食糧問題
 帝国日本における水稲品種
 台所の歴史
 食の思想史
 トラクターと化学肥料の農業技術史
 帝国日本の農業経済学者


★これまで書いた単著

       
       

2013 『食べること考えること』共和国
2012 『稲の大東亜共栄圏──帝国日本の<緑の革命>』吉川弘文館
2012 『ナチスのキッチン──「食べること」の環境史』水声社(河合隼雄学芸賞)
2011 『カブラの冬──第一次世界大戦期ドイツの飢饉と民衆』人文書院
2005
 (2012=新装版)『ナチス・ドイツの有機農業──「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」』柏書房
(日本ドイツ学会奨励賞)

著書(共著、編著)
2014 『現代の起点 第一次世界大戦』(山室信一、岡田暁生、小関隆と共編)岩波書店
2008 『食の共同体──動員から連帯へ』(池上甲一、岩崎正弥、原山浩介と共著)ナカニシヤ出版

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