グローバル化は人、資本、情報、資源などの地球規模での大量流通を特徴としているが、情報の一種である思想・宗教の流通と消費については未だ十分に議論されているとは言いがたい。現代社会において、思想や宗教の流通と消費にはどのような特徴があるのか。本研究班では、この問題を、複数文化の重層的接触という観点でとらえ、現代のみならず、過去150年程度のスパンの中でこれを分析、考察している。そのための柱として、宗教と進化論(ダーウィニズム)の二つをテーマに据え、それらの伝播の諸相を人文学の諸分野にわたって検討している。

宗教の伝播が人文学の大きな研究テーマであることは、ここに改めて述べるまでもない。仏教、キリスト教、イスラーム等の各地への伝播過程や変容過程を複数文化の接触としてとらえ、論じてゆく。

また進化論は、近代の代表的な科学理論であるが、それはまた社会進化論等の形で思想・哲学としても大きな影響を与えてきた。アジア地域での進化論の受容、または影響については、特に日本の場合が各分野で個々に論じられているが、その全貌は未だ明らかではない。この研究班では進化論を近代思想の一つと見なし、宗教学等の諸学の形成と展開、政治思想、芸術運動、宗教、社会・文化現象等にどのような影響を与えてきたかを包括的に吟味し、さらにその検証の範囲を中国など他のアジア諸国まで広げ、「文化現象」としての進化論を幅広く追及することを目指している。

この研究を通じて、思想・宗教のグローバルな展開について、複数文化の接触という視点から一定の見取り図を描くことが可能となるだろう。また研究班と、それに伴う情報の蓄積と公開が、関係諸分野の相互交流を刺激し、活発化させることも期待される。グローバル時代にふさわしい人類像、人間像の提示を複数宗教の接触過程や進化論と伝統的思考との接触過程を通じて提示することで、現代の人文学の可能性を明らかにしたい。また人文科学研究所、とりわけ人文学国際研究センターの基幹プロジェクトであった「複数文化接触領域(コンタクト・ゾーン)の人文学」研究班の問題意識を継承しつつ、その他の諸活動と連携して、積極的に成果を海外に発信すると共に、さらに公開講演などを通じての社会還元を企画している。


トップ   編集 凍結解除 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2011-08-04 (木) 12:55:22 (286d)