京都人類学研究会 例会の記録
発表者の所属は発表当時のものです。

季節例会NO.1 1996年11月30日(土) 会場:京都文教大学
シンポジウム 暴力の人類学・人類学の暴力
オーガナイザー:田中雅一(京都大学)
発表者
●行木 敬(総合研究大学院大学)「虐殺されるニューギニア高地人たち:殺す側の論理と殺される側の論理」
●栗本英世(国立民族学博物館)「未開の戦争論再考」
●冨山一郎(神戸外国語大学)「暴力論の現在」
コメント
春日直樹(大阪大学)/ 田辺繁治(国立民族学博物館)

季節例会NO.2 1997年3月15日(土) 会場:芝蘭会館
シンポジウム 牧畜文化の形成と展開
オーガナイザー:谷泰(京都大学)
発表者
●鹿野一厚(島根女子短期大学)
●太田至(京都大学)
●藤井純夫(金沢大学)
●小長谷有紀(国立民族学博物館)
●谷泰(京都大学)

季節例会NO.3 1997年11月20日(土) 会場:京都文教大学
シンポジウム 外国人調査者の見た日本
オーガナイザー:ベフ・ハルミ

発表者
●トマス・パラモア・ギル (京都文教大学 人間学部)
「社会人類学からみた日本:リーチ動物カテゴリーを例として」
●李 仁子 (京都大学 人間・環境学研究科)
「東京都、高内(こね)村に住んで」
●バフティアール・アラム (インドネシア大学 日本研究センター副所長)
「インドネシアにおける文化人類学と日本研究」
コメント
●ベフ・ハルミ (京都文教大学 人間学研究所長)

季節例会NO.4 1998年6月13日(土)
シンポジウム 開発と人類学者
オーガナイザー:松田 素二 (京都大学)
発表者
●石川 登 (京都大学東南アジア地域研究センター)
「ボーダーランド再考;ボルネオ島西部における国家的「場」の創出について(1841-1968)」
●西川 麦子 (甲南大学)
「バングラデシュ農村における調査と開発;M村1988年−1996年の事例より」
●三島 禎子 (国立民族学博物館)
「援助大国セネガルにおける自発的発展とは;開発行為者をフィールドから考える」
コメント
橋本 和也 (京都文教大学)/ 小牧 幸代 (京都大学人文科学研究所)

季節例会NO.5 1998年11月4日(水)
(アフリカ学会関西支部およびアフリカ地域研究会との共催)
発表者
●リチャード・リー (カナダ、トロント大学人類学科教授)
「ジュホアンシ社会と変化の波;40年に及ぶ研究から」
●ジョージ・ウェンゼル (カナダ、マックギル大学地理学科教授)
「狩猟採集民の生業経済の社会的次元;カナダ・イヌイットの事例から」

季節例会NO.6 1999年11月27日(土)京都大理学部2号館1階大講義室
シンポジウム人類学にとって家族とはなにか?
オーガナイザー: 菅原和孝(京都大)
●司会 松田素二(京都大)
発表者
●山極寿一(京都大) 家族の起源再考---類人猿からの視点
●榎本知郎(東海大) 性ときずな-霊長類の「われわれ」関係と性行動(確定)
●保坂実千代(京大)一夫多妻社会におけるマトリセントリック・グループの形成と共妻関係
●遠藤央(京都文教大)ジェンダー論から見た母系

コメント
大澤真幸(京大) / 渡辺公三(立命館大)

季節例会NO.7 2000年7月8日(土)
京都大学人間・環境学研究科棟 B23(A) (地下講堂) 
シンポジウムPWH(HIVウィルスとともに生きる人々)と南北問題  
オーガナイザー・司会: 松田素二(京大)
発表者
●報告者 色平(いろひら)哲郎(アイザック事務局長・長野県「厚生連」佐久総合病院)地域医療と外国人PWH :アジアのムラと日本のムラ
●道信良子(お茶の水大学大学院)タイにおける開発とエイズとジェンダーを考える」

コメント 田邊繁治(国立民族学博物館)

季節例会NO.8 2000年12月16日(土)京都大文学部第一講義室
シンポジウム 現代ファッションと人類学
オーガナイザー: 田中雅一 (京都大)
●司会 松田素二

発表者
●内海涼子(成安造形短期大学)バリの『伝統的』衣装の変容---19世紀末から現代
●金谷美和(京都大学研修員) カースト・アイデンティティ、「手工芸」、ファッションとしての布:インド、グジャラート州カッチ地方における染色業を事例にして
●皆川魔鬼子(三宅一生デザイン事務所)インドのクラフトマンシップを都会の服に

コメント 春日直樹(大阪大学)/ 杉本星子(京都文教大学)
【チラシより】 現代世界は、一方でIT革命に象徴される急激なグローバライゼーションの進展、他方で民族紛争にみられる伝統性やローカリティの増幅という、いっけんすると相対立する二つの現象が、同時にそして激しく進行しているようです。またデザイナーに注目すれば、伝統や社会規範と個人の創造力を考えるうえでも重要なトピックです。人類学は、小さな地域社会の生活から出発した学問ですが、21世紀を迎える現代社会のこうしたダイナミックな現象と向き合うことを避けることはできません。むしろ人類学的な思考と実践によって、こうした現象を積極的に読み込み新たな文化理解の地平を切り開くことが要請されています。
 現代ファッションは、この試みの格好のフィールドです。アジアやアフリカの社会では、伝統的な織物や衣裳が、新たな定義を与えられ、あるいは新たな意味をつくりだして、現代ファッションとして再創造されています。それはファッション産業のなかでは「エスニック調」として位置づけられますし、1990年代の人類学の議論のなかでは、「伝統の創造」「文化の客体化」といったコンセプトで語られてきました。
 今回のシンポジウムでは、こうした動きに焦点をあてて、主としてアジアのいくつかの社会をとりあげて、議論を深めていきたいと考えています。みなさまのご参加をお待ちしています。文責 松田素二

季節例会NO.9 2001年7月13日(金)京大会館2F 210号室
シンポジウム 21世紀の人類学:知識・学習・技術・社会
オーガナイザー: 足立明(京都大)
●司会 島薗洋介
 ご存じのように、人類学をめぐる研究環境は大きく変化しています。かつての「未開社会」や「伝統社会」が変貌する一方で、それらを研究してきた人類学自身が、「未開」や「伝統」を作りだしてきたという反省をふまえ、未開・伝統/文明という図式を放棄せざるを得なくなってきました。その結果、人類学の研究対象は、従来の枠を超え、ウォール街の金融市場や、筑波の先端科学研究機関などにまで広がりつつあります。また、研究視角も、隣接する認知科学や、科学技術の社会学などの領域横断的な研究に刺激されながら、従来の自然、社会、文化といった研究上の棲み分けを放棄しつつありまあす。そして、社会、身体、言語、モノといった関わりの中で、出来事や現象を把握しようと試みています。今回の季節例会では、このような新しい研究対象と研究視角を持った研究者による発表を予定しています。

発表者
●福島真人(東京大学)
  「知識のエコロジー−徒弟制モデルから複雑なシステムへ」
●杉野 周(ゲダス ジャパン)
  「ナレッジ・マネージメントとその限界―経営学におけるナラティブ」 

コメント 田辺明生(京都大)

季節例会No.10 2001年12月7日(金)京大会館2F 210号室
COE形成基礎研究費「類人猿の進化と人類の成立」
人類学連携シンポジウム 暴力の進化史 京都人類学研究会協賛
司会 上原重男 (京都大学)
10:00―10:10 シンポジウムの目的とするところ      竹中 修 (京大)
10:10―10:40 雌雄のきずなと子殺し:ゴリラの社会構造の可塑性をめぐって 山極寿一 (京大)
10:40―11:10 ピグミーチンパンジーの暴力と攻撃性五百部裕 (椙山女学園大)
10:10―11:40 チンパンジーにおける暴力と平和  保坂和彦 (京大)
11:40―12:00 討論 類人猿における暴力とは
司会 三上章允 (京都大学)  
13:00―13:40 脳内神経伝達物質関連遺伝子多型と攻撃性 村山(井上)美穂 (岐阜大学)
13:40―14:20 ネアンデルタールの暴力:生と死      奈良貴史
司会 足立 明 (京都大学)
14:50―15:30 平等主義社会における暴力:ハームレス・ピープルの神話 菅原和孝 (京大)
15:30―16:10 母の暴力・父の暴力         田中雅一 (京大)
16:10―16:50 ジェンダー/セクシュアリティからみる暴力 宇田川妙子 (金沢大学) 
17:00―18:00 総合討論  山極寿一、菅原和孝、田中雅一
18:00―    総合討論(続)、懇親会
ディスカッサント 加納隆至、青木恵理子 (龍谷大学)、栗本英世 (大阪大学) 
世話人  菅原和孝、山極寿一、竹中 修

季節例会No.11 2002年7月26日(金)1330−1800
京大人文科学研究所本館大会議室
記憶と記念碑をめぐる人類学と歴史学の対話
■報 告:
 ・ 「健康化する日本語――佐久間鼎と日本語学」 (安田 敏朗 :一橋大)
 ・ "The Objectification of Social Memory in Japan: Monuments for the Untimely Dead"   (Jan van Bremen :ライデン大学)
 ・" The Violent and the Benign: How Kobe Remembers its Rivers"(Tsu Yun Hui :国立シンガポール大学)
■オーガナイザー Tsu Yun Hui
■司 会: 田中 雅一・竹沢泰子(京都大学人文科学研究所)
■コメンテーター: 小山 哲 (京都大学文学部)
 
         
季節例会No.12 12月14日(土)13時より
京都大学文学部新館2階第7講義室
●テーマ:
人類学のワイルドサイドを歩こう(Walk on the Wild Side of
Anthropology)

・趣旨説明 「なぜ今、人類学のワイルド・サイドなのか?」 田中 雅一 氏(京都大学)ルー・リードの名曲「ワイルド・サイドを歩こう」が喚起する性の風景を学際的視点から考えていきたい。
●報 告:
  1.「−そして、女が「男×男」を愛するとき」
      藤本 純子 氏(大阪大学大学院)
  2.「ゲイの共同性から考える---『セクシュアリティの人類学』は他者探しのゲームに終止符を打てるか?」村上 隆則 氏(成城大学大学院)
  3.「セクシュアリティが人類学にどう関係するというのか」
      小田 亮 氏 (成城大学)
■オーガナイザー:田中雅一
■コメンテーター: 古川 誠 氏(関西大学)ほか
■司 会: 松田 素二 氏(京都大学)

季節例会No.13
2003年7月10日(木)15:00〜18:30

◆場所京大会館2F 210号室

共通テーマ『運動とアカデミズムの間で』

趣旨:人類学者や地域研究者がフィールド調査のために訪れる地で、みずからの生活
や権利を守るために運動する人々と出会う機会が増え、研究者のアウトプットが、そ
うした運動の主張と何らかの形で関わることも少なくありません。今回は、人類学に
限ることなく、そのようにして研究の対象となる人々、地域、事象とそこに繰り広げ
られる運動に自ら関わるお二人の研究者に、調査し、記述し、論じながら運動に関わ
る研究について語っていただこうと思います。そこで、抽象的な「書くことの権力
性」とは異なる次元で、同時代を生きる人間社会を対象とする我々のアカデミックな実践
の中での研究者としての主体と、研究の営みとしての分析理解とその成果である作品、そして対象地域の人々との関係について考えてみたいと思います。

◆プログラム
15:00-16:00 川橋範子(名古屋工業大学)
「実践としてのフェミニストエスノグラフィー 佛教界の女性運動を書く」
16:00-17:00 石田紀郎(市民環境研究所)
「公害・環境問題と研究者」
17:00-17:20 休憩
17:20-18:30 ディスカッション
 コメント:黒木雅子(京都学園大学)
      林行夫(京都大学東南アジア研究センター)
 司会+オーガナイザー:速水洋子(京都大学東南アジア研究センター

季節例会No.14 2003年12月13日(土)13:00〜18:00
◆場所 京都大学 京都大学人間環境学大学院地下講堂

共通テーマ『観光文化の人類学』

観光をめぐる研究は人類学において既に少なからぬ蓄積がある。観光人類学が分野と
して認知されていくのと同時に実際の「観光」のあり方はエコツーリズム、グリーン
ツーリズム、オルタナテイヴツーリズムなどの呼称に見られるように、多様化してき
た。一方、人類学者は調査地で、様々な形で観光と関わってきた。そして観光は無視
しえない事象として我々の視界に入ってくるのみならず、観光をめぐる文化の客体化
とそこに関わる人々のアイデンティティや権力作用を見ることは、人類学の諸概念や、
視点にも、再考を促す。今回は、このテーマで研究を続けて来られた三名をお招きし
て、観光人類学の現在と観光文化の研究が人類学に何をもたらすかを考える機会とし
たい。

◆プログラム
13:00-14:00 安藤直子(お茶の水大学)
「地域社会からみた観光−祭りの『商品化』と地元住民の主体性−」
14:00-15:00 川森博司(甲子園大学)
「ゆるやかな土着−ふるさと観光と地域づくり−」
15:00−15:20 休憩
15:20−16:20 橋本和也(京都文教大学)
「地域文化資源『開発』と観光 −オセアニアの事例から」
16:20-18:00 コメント及びディスカッション
コメント:江口信清(立命館大学)
川村清(神戸学院大学)
司会+オーガナイザー: 速水洋子

季節例会 No. 15

共通テーマ 複製技術時代の文化人類学
日時 7月10日(土)午後2時半ー6時半
場所 京大会館

問題提起 
田中雅一(京都大学人文科学研究所)
 剥製技術から複製技術へ
報告
慶田勝彦(熊本大学文学部)
 複製技術の原初形態としてのトーテム
岡田浩樹(神戸大学国際文化学部)
 増殖する仏陀 韓国仏教における物質化と複製、そしてポップカルチャー
桑原知子(九州大学大学院人間環境学研究科)
 複製技術と礼拝価値 南インドにおける『映画館で映画を観る』ということ

◆コメンテータ 箭内匡(天理大学)、杉本良男(国立民族学博物館)
◆司会+オーガナイザー 田中雅一

ベンヤミンの『複製技術時代の芸術作品』が出版されて六〇年が経ている。ベンヤミ ンが念頭においていたのは写真や映画であったが、この季節例会では、それだけでな く複製技術の前史としての剥製技術や呪術、また模倣や身体の再生技術などをも考察 の対象とすることで、現代社会における文化人類学、ならびに現代社会についての文 化人類学の可能性を探りたい。
季節例会No.16
日時: 2005年7月2日(土)13:00-18:00
場所: 京都大学文学部新館第七講義室
「かれら探し・わたし探しの文化人類学」
 エスニック・ツアーの観光客と人類学者は似ている。両者はともに異なる社
会、異なる文化に接しようとして旅に出る。わたしたちは「かれら探し」の旅
に出る。それはまた、「わたし探し」の旅でもある。旅を通じてかれらの「本
当の姿」に接し、わたしたちもまた「本当のわたしたち」に出会う――出会う
はずだ。このように観光地とフィールドとがかぎりなく一致する状況、それが
今日のフィールドの特徴だと言えよう。しかし、なにが「真実のかれら」なの
か、なにが「真実のわたし」なのか。
 この季節例会では、観光地を典型とするような複数の視線が交錯する場にお
ける真正さの問題を取り上げる。その場は観光地におけるホストとゲストの視
線が微妙にからまる場所やイベントかもしれないし、多民族社会という状況か
もしれない。4つの報告を通じて人類学にとってかれら・わたしの「真正さ」
とはなにかを考えたい。
コメンテータ: 吉野耕作 東京大学大学院人文社会系研究科 教授
【発表1】 田中雅一 京都大学人文科学研究所
『だれにとっての暴力か
 ―シンガポールのタイ・プーサムをめぐって』
シンガポールのヒンドゥー教徒にとってタイ・プーサム祭は最大のイベント
であり、多くの観光客が内外からやってくる。祭りの最大の山場はたくさんの
針を刺した信徒たちの行進である。かつてこのような自傷行為は野蛮であると
して、改革運動の対象であった。ところがいまそれは信仰の証となり、観光客
もこれを否定することなく受け入れている。ここにわたし探しとかれら探しの
旅が重なる。そして、祭りはますますスペクタクルなものへと変貌する。本報
告ではタイ・プーサム祭の分析を通じて、真正さやスペクタクル概念について
考察したい。
【発表2】 谷本和子 関西外国語大学・国際言語学部
『羊の屠殺・解体は乙女のたしなみ?
 ―ナヴァホ・インディアンのページェントにおける伝統技術の実践』
 ビューティー・ページェントは、共同体のアイデンティティを「適切に」表
象する女性を選ぶ儀礼的な行為である。一人の女性の身体とパフォーマンスを
通して、女性のあるべき姿、共同体のモラルやその地域独自の歴史・文化観が
そこに示される。本報告では、ミス・ナヴァホ・ネイション・ページェントの
中で、最もナヴァホの文化的独自性が強く、技術的難易度の高い「羊の屠殺と
解体」に着目し、民族の代表に選ばれる女性が観衆の面前でこの伝統技術を実
践する意義を考察する。
【発表3】 金谷美和 京都大学人文科学研究所
『「良きムスリム」をめぐる交渉の場としてのムハッラム祭礼
 ―インド西部地震とコミュナル暴動後の変化』
 インド北部、西部では、ムハッラム月10日にイマーム・フセインの殉教を悼
み、葬送儀礼を表した行列が行われる。カッチにおいてムハッラム祭礼は、も
とはヒンドゥー王権によってパトロナイズされ、ヒンドゥーとムスリムの双方
が参加する祭礼であった。2001年のインド西部地震、2002年の宗教間暴動を経
た2004年と2005年には、祭礼はマイノリティであるムスリムの代表的な祭礼で
あり、かつヒンドゥーとムスリムの調和の象徴として政治的に表象される場に
なっている一方で、一部ムスリムの間ではムハッラムは非イスラーム的な祭礼
として批判が高まっている。
【発表4】 大野哲也 京都大学人間.環境学研究科
『旅は「わたし」を変えたか
 ―日本人バックパッカーの「自分探し」の論理から』
 バックパッカーから、旅の途中で、あるいは旅の果てに「旅をして自分は変
わった」という言葉を聞くことは、ある意味、日常的である。近年注目されたC,Noy
の論文を紹介しながら、日本人バックパッカーの語りをとおして、「変わる」
ということを考えてみたい。

季節例会 第17回

日本人類学会 進化人類学分科会
 「「快楽」としての性?――性行動のもたらす意味」

日時 7/16日(土) 1時〜 
場所 京都大学大学院理学研究科2号館第1講義室

椎野若菜  (青山学院大非常勤)
 はじめに 

松本直子 (岡山大学・認知考古学)
「考古学における性とジェンダー」  

久世 濃子  (東工大・霊長類学)
「レイプするサル−オランウータンの性行動と繁殖戦略」

竹ノ下祐二  (日本モンキーセンター・霊長類学)              
「性と生殖の関係について考える」

椎野 若菜 (青山学院大非常勤・社会人類学)
「性交の種類――「義務」か「快楽」か」

棚橋 訓 (首都大学東京・都市教養学部/東京都立大学人文学部
         社会人類学・オセアニア研究)
「快楽の構造、ふたたび」

田中雅一  (京大人文研・文化人類学)               
 「痛みが快楽に変わるとき、暴力が信頼の証となる――性進化の極北へ」

コメント
 黒田末寿(滋賀県立大学・霊長類学)                    
 青木恵理子(龍谷大学・文化人類学)

討論

京都人類学研究会 第18回季節例会


「移動媒体としての映像と人類学」
日時:12月23日(金・祝)13:30〜
場所:京都大学人間環境学研究科 地下大講義室 ※3階333教室ではありません
■趣意
 19世紀末、事象の運動と変化をとらえるものとして映像という技術が人類に加
わった。映像の世紀といわれた20世紀、スクリーンを通した時間的・空間的な移
動に人々は魅了された。そして映像によって人々は、スクリーンの彼方へも連れ
去られていった。この移動の痕跡は、対象を言語(あるいは定められた焦点)に
よって固定し、分析し、主―客の位置を迫る近代科学の手法ではとらえきれない
。異なる感覚器官、時間と空間、主体と客体、意識と無意識、嘘とまことのあい
だを往還する映像は、表象の可能性ばかりか限界をもあぶりだすものなのだ。い
ま、映像を移動媒体として人類史的経験の位相に重ね合わせながら、映像を用い
た人類学的なアプローチの可能性について考えてみたい。
■発表者・上映作品
 13:30〜14:15 岩谷 彩子
     (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科研修員
     ・日本学術振興会特別研究員)
 14:15〜15:15 川瀬 慈
     (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程)
     『僕らの時代は』(55分)上映 
 15:30〜15:40 分藤 大翼
     (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科研修員) 
       『Wo a bele −もりのなか−』(30分)上映
 15:40〜17:00 北村 皆雄
     (ビジュアルフォークロア)
     『見世物小屋〜旅の芸人・人間ポンプ一座』(60分)上映
17:10〜   総合討論・質疑応答
コメンテーター
 山中速人氏(関西学院大学総合政策学部メディア情報学科教授)
 菊地暁氏(京都大学人文科学研究所助手)

■発表者略歴と上映作品の概要

岩谷 彩子 (いわたに あやこ)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科研修員。2005年京都大学大学
院人間.環境学研究科博士課程修了(人間.環境学博士)。1995年より、南イン
ドやフランスで「ジプシー」と呼ばれている移動民の宗教.社会研究にたずさわ
る。主な論文としては、「『宗教をもたない民』の改宗―フランスの『ジプシー
』の事例より」(2000年、『宗教と社会』、第6号)、“Strategic ‘Otherness
’ in the Economic Activities of Commercial Nomads: A Case of the Vaghri inSouth India”(2002年、『南アジア研究』、第14号)、「夢が連鎖する空間と主体の生成―南インドの移動民が神の夢を語るとき」(共著『社会空間の人類学』所収、2006年刊行予定)。

発表では、映像を媒介にした複数の次元の移動の問題に焦点を当て、本例会全
体のテーマである「移動媒体としての映像と人類学」にかかわる問題提起を行な
う。特に、これまで南インドの商業移動民ヴァギリの居住地や行商地で発表者が
撮影したビデオ映像や、移動をテーマにした民族誌映画を例に、移動民コミュニ
ティの生活の諸局面を映像でとらえることの意義について論じる。

川瀬 慈 (かわせ いつし)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程。2001年よりエチオ
ピア連邦民主共和国にて二つの音楽職能集団、アズマリ(自称:Enzata)とラリ
ベロッチ(自称:Rawaji)の調査・研究と民族誌映画制作に従事。近著は"Enzata",
"Lalibalocc", in Encyclopaedia Aethiopica, Uhlig ed. 2005, "Musical
performance and self-designation of Ethiopian minstrels: Azmari", in
African Study Monographs Supplementary Issue 29 (forthcoming)
など。映画『Lalibalocc-Living in the Endless Blessing-』2005/25min.(日本
語版:『ラリベロッチ−終わりなき祝福に生きる−』)を京大ASAFASメディアライ
ブラリhttp://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/media/media.htmlにて配信中。『僕らの時代は』 撮影:編集:録音 川瀬 慈
アムハラ語、アズマリ語(日本語字幕)/カラー/DV/55分/2005年(撮影2001〜2004年)

エチオピア高原の音楽職能集団アズマリの少年タガブとイタイア。単弦楽器マ
シンコを携えゴンダールの街で演奏機会を探す彼らに、大人たちの反応は冷たい。
 本作品は、フィールドワークにおける特定の場所、時間に生じた調査対象の人
々と私とのやりとりの現場の微視的な記録から、新たな“民族誌的”表象のあり
かたを模索する。そのため各エピソードを、首尾一貫したストーリーに収斂させ
たり、人類学議論のなかにあてはめたりするのではなく、私自身が思春期の彼ら
とともに遊び悩みつつ重ねた対話の記録という形式をとる。
 なお本作品は、アズマリの少年少女が歩む人生の道程を、映像によって数年ご
とに記録してゆくプロジェクトの第一作目である。

分藤 大翼 (ぶんどう だいすけ)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了(地域研究博士
)。1996年よりアフリカ、カメルーン共和国東部州の熱帯林に暮らす狩猟採集民Baka(バカ・ピグミー)の調査をおこなう。2002年より調査集落においてドキュメンタリー映画の制作を始める。近著は「木霊する森−ピグミーと精霊−」(『神奈
川大学評論』第51号)、「ピグミーの森の音楽」(『ソトコト』12月号)など。
現在、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科研修員。

『Wo a bele −もりのなか−』 監督:分藤大翼
日本/2005/日本語、Baka語/カラー/ビデオ/30分

『Wo a bele −もりのなか−』は、SKY PerfecTV!(216ch.)で放映されている
「シネアストの眼」というシリーズ番組の第7作目として制作され、2005年に放映
されました。このシリーズは、シネアスト(映画作家)が“自分”と“自分の世
界”についてのドキュメンタリー作品を制作するというものです。本作は、カメ
ルーン共和国東部州の熱帯林に暮らすBakaという人々と、文化人類学者である作
者自身を対象としたドキュメンタリー作品です。デジタルビデオカメラを使用し
、撮影、録音、編集の全てを作者一人でおこないました。人類学者であれば、誰
しもが築いているフィールドの人々との親密な関係を描いた作品です。

北村 皆雄 (きたむら みなお)

1942年長野県生まれ。早稲田大学第一文学部演劇専修卒。映像制作会社ヴィジ
ュアルフォークロア代表。駒沢女子大学講師。映像人類学。インド、ネパール、
チベット、中国、韓国、沖縄などのアジアの人々の生活、宗教、祭祀を映像記録
し、映像人類学、映像民俗学の分野を開拓している。日本の中世にも興味を持ち
、修験や諏訪信仰を研究。TV作品『チベット大河紀行』(NHKスペシャル、1994
)『ヒマラヤ 時空の花園』(TV朝日、1996)、『チョモランマの渚』(TV
朝日40周年記念番組1999)ほか多数。映画『カベールの馬』(1969)、『アカマ
タの歌』(1973)、『見世物小屋』(1997)、『修驗・羽黒山秋の峰』(2204)。

著作「つな引きのお祭り」(福音館2005)、共著『古代諏訪ミシャグジ祭政体
の研究』(永井出版、1975)ほか日本原初考シリーズ2冊、『チベット生と死の文
化』(東京美術1994年)、『原インドの世界』(東京美術1996年)、『見世物小屋
の文化誌』(新宿書房、1999)、『千年の修験』(新宿書房2005)。

『見世物小屋〜旅の芸人・人間ポンプ一座』 監督:北村皆雄 出演:安田里美
一座  制作:ヴィジュアルフォークロア
日本/1997/日本語/カラー/60分 

今や全国で二つになってしまった「見世物小屋」。
かつて各地の祭りの場に忽然と現れ、おどろおどろしい絵看板とたくみなコマシ
で、私たちを不思議で怪しい、恐ろしくも珍しい、面白く物悲しい別世界へと引
きずり込んで、未知の感覚に目覚めさせたあの懐かしい世界。
この作品は、最後の肉体芸のパフォーマンスといわれた、人間ポンプこと安田里
美さんとその一座9人の「秩父夜祭り」興業を内側から記録した作品である。
飲んだ金魚を生きたまま釣って出す、瞼に紐付きボタンを挟んで繋いだ水入りバ
ケツを振り回す・・・
どれもこれも想像を絶する引退の驚異で観客の目をわしづかみにしてゆく。
目が弱くアルビノ(白子)の傷害を持ちながら67年間舞台に立ってきた安田里美
さん(71)、呼び込み役の妻春子さん(68)、客寄せのタコ娘になる知的障害者の
フクちゃん(61)、それに”首だけ人間”になるカズさん(63)と”山鳥娘”の
名で四つから働いてきたナミちゃん(68)等、「見世物小屋」には異形の人たちが
集まっている。医者も救えない、法律も救えない、宗教も救えない人たちを「見世物小屋」が救っている。
ここで生きる人々の芸と人生、移動する人々の光と闇の世界をとらえた。
(119分の作品ですが、今回は1時間バージョンでお見せします)


京都人類学研究会2006年夏;季節例会
シンポジウム『米山学の現在的可能性』
日時 7月8日(土) 13:30開場
場所 京都大学人間・環境学研究科 地下B23教室
コーデイネーター・司会 松田素二 (京都大学文学研究科)

 米山俊直先生は、本年3月、75歳で逝去されました。米山先生は1960年代の
近衛ロンド創立以来、京都大学の文化人類学研究の中心であり、人間環境学研究科に
文化人類学講座を創設された方でもあります。
 米山先生の研究領域は、『過疎社会』『日本のむらの百年』『小盆地宇宙と日本文化』
といった農村研究、『北上の文化:新遠野物語』『クニオとクマグス』『柳田国男の世
界』などのフォークロア研究、『祇園祭』『天神祭』『都市祭礼と祭りの人類学』などの
都市祭礼研究、さらには『ザイールノート』『アフリカ農耕民の世界観』『モロッコの
迷宮都市フェス』といったアフリカ研究と幅広く奥深いものでした。
 今回のシンポでは、米山先生と調査をともにした一線の研究者を話題提供者として
米山学の現在的意義について検討してみたいと考えています。
また今秋10月1日には、京都大学芝蘭会館山之内ホールで、米山先生の佐井顔の著書と
となる『米山俊直ベストセレクション1』(人文書館)の刊行とあわせて、『米山先生に
感謝する集い(仮称)』を予定しています。そちらの方の参加も会わせてお願いいたします。



プログラム
14.00-14.10 開会の挨拶 松田素二
14.10-14.45 『飛び込み型フィールドワークの可能性』鵜飼正樹 (京都文教大学)
14.45-15.20 『ひと、ひとと会う:ライフヒストリー方の地平』小林多寿子 (日本女子大学)
15.20-15.30 休憩
15.30-16.05 『米山学とザイール研究』梶茂樹 (アジア・アフリカ地域研究研究科)
16.40-17.00 『日本のむらの見方、聞き方、語り方』嘉田由紀子 (京都精華大学)
16.40-17.00 総合討論
17.00-    懇親会

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