田中雅一「死者とともに歴史をふりかえる―米陸軍創設記念日パーティのテキストとビデオの分析」
 本報告は1996年から継続調査をしている在日米軍基地の文化人類学的研究の成果の一部である。在日米軍については、従来国際政治・軍事的視点から、、あるいは基地周辺住民との確執や風俗・サブカルチャーとの関係から注目されてきた。米軍がおこした事故や犯罪は大きくメディアで取りあげられるが、われわれはどのくらい基地の生活を知っているだろうか。そんなもの知る必要はない、という意見もあるだろうが、11万人の米軍関係者が暮らしているという現実を直視し、彼らの生活世界を明らかにすることもまた現代日本社会を理解するうえでとても重要であると思われる。生活世界の研究をテーマに、米軍の日本観光、女性兵士、従軍牧師などをテーマに分析を加えてきた。今回は、軍隊の根幹に関わる戦死者について考えてみたい。1998年6月、わたしは座間陸軍基地(キャンプ・ザマ)で開かれた創設記念日パーティに招かれた。そこで私が見たものは、生者たちと死者たちの交歓、そして陸軍の過去の戦闘の再現であった。軍隊で死者がどのように表象されるのか、それは共同体での死者の表象とどう異なるのか。こうした問題を念頭に、ビデオとテキストを中心に話を進めたい。