軍隊にみるトランスナショナリズム
本研究の期間を4年とし、その期間内に文化人類学的および歴史学的視点から日本を含む東アジア、東南アジア、南アジアを中心に活動している軍隊を、そのトランスナショナルな性格に注目して分析することを目的とする。国民によって組織される軍隊は、国民国家を構成する主要な組織である。国家を国民が軍事的に死守すべき存在とみなすとき、ナショナリズムは完成すると言っても過言ではない。兵士になることとは、ナショナリズムの理念を体現し、真の「国民」になることを意味する。軍隊・兵士と国家、国民、ナショナリズムは密接に結びついているのである。さらには男性こそ真の兵士であるという考え方が支配的であるということに注目すればジェンダー規範とも関係する。そのような国民、兵士・男性、国家という結びつきが垂直的なものとすると、複数の国家を横断する形で軍隊が水平的(トランスナショナル)に存在することもまた事実である。このことは、一般社会においても、学術的な点からも十分注目されてこなかった。本プロジェクトの目的は、この水平的な性格を明らかにすることである。
メンバー
代表 田中雅一 京都大学人文科学研究所教授 日本、アメリカ 歴史人類学
班員 Christopher Ames メリーランド大学講師、日本、アメリカ、文化人類学
班員 江田憲治 京都大学人間・環境学研究科教授 中国、歴史学
班員 Sabine Fruhstuck Santa Barbara, California U. 日本、歴史人類学
班員 上杉妙子 専修大学文学部非常勤講師 ブルネイ、ネパール 文化人類学
班員 金柄徹 亜細亜大学国際関係学部教授 韓国 文化人類学
班員 小池郁子 京都大学人文科学研究所助教 日本、アメリカ、文化人類学
班員 田村恵子 オーストラリア戦争記念館調査員 日本、歴史人類学
班員 高嶋航 京都大学文学研究科准教授 中国、歴史学
班員 田辺明生 京都大学人文科学研究所准教授 日本、歴史人類学
班員 福浦厚子 滋賀大学経済学部准教授 日本、シンガポール、マレーシア、歴史人類学
班員 Eyal Ben-Ari エルサレム・ヘブライ大学教横授 日本、イスラエル、文化人類学
班員 森田真也 筑紫女子学園大学准教授
班員 福西加代子 京都大学人間・環境学研究科博士後期課程 日本、文化人類学
班員 徐玉子 京都大学人間・環境学研究科博士後期課程 韓国、文化人類学
班員 朴眞煥 京都大学人間・環境学研究科博士前期課程 韓国、文化人類学
班員 丸山泰宏 歴史民俗博物館研究員 日本、民俗学
班員 宮西香穂里 京都大学東南アジア研究所 日本学術振興会特別研究員 日本、文化人類学
研究会
@「アジアの軍隊にみるトランスナショナルな性格に関する歴史・人類学的研究」第1回
・期間:2008年7月27日(日)
・場所:京都大学人文科学研究所新館セミナー室 331
・時間:午後2時から5時30分まで(予定)
1、趣旨報告:田中雅一
2、研究計画:各班員からの説明
3、報告:福西加代子「軍隊の展示−博物館から航空ショーへ」
A「アジアの軍隊にみるトランスナショナルな性格に関する歴史・人類学的研究」第2回
・
・場所:浜松
・プログラム:13時〜15時 航空自衛隊浜松駐屯地エアーパーク見学
15時30分〜18時 研究会
・報告:朴 眞煥 二つの団体の徴兵拒否運動をめぐる葛藤の事例から見えたこと――徴兵拒否「運動」って何?
福浦厚子 軍事組織とストレス・ケア――家族をめぐる試論
研究会は科研の分担者をはじめ13名の研究者が参加し、活発な意見交換が行われた。朴氏の報告は韓国における徴兵拒否者の支援団体や推進団体の歴史を追うことで、その動機の変化、団体間の対立の存在などを論じた。福浦氏の報告は、いま注目されつつあるイラク派兵のトラウマについてである。自衛隊や自衛官の家族がどう悩みを抱える自衛官を支えているのか、その実態や問題点が論じられた。
B「アジアの軍隊にみるトランスナショナルな性格に関する歴史・人類学的研究」第3回
・日程:2009年2月22,23日
・場所:舞鶴
・プログラム:
22日(日)
10時半 海上自衛隊舞鶴地方総監部 海軍記念館、北吸桟橋見学
13時 ホテルにて研究会
報告者:上杉
タイトル:「非市民兵士と市民社会」
報告者:徐
タイトル:「性労働」、セックスから感情労働へ−在韓米兵相手のフィリピン女性「エンターテイナー」の場合−18時半〜 夕食、今後についての話し合い
23日(月)
舞鶴引揚記念館、赤レンガ博物館見学
C「アジアの軍隊にみるトランスナショナルな性格に関する歴史・人類学的研究」第4回
・日程:2009年4月4,5日
・場所:横須賀(防衛大学校社会科学館1階大会議室、米海軍横須賀基地)
・プログラム:
4日
12時30分 京浜急行電鉄「馬堀海岸」駅集合
13時〜17時半 研究会 防大社会科学館1F大会議室
発表者:田村恵子
タイトル:
発表者:森田真也
タイトル:沖縄渡名喜島における出砂島射爆演習場の諸問題−経済振興と宗教的世界における節合−
18時〜 米軍基地将校クラブ
5日
1、川崎市金山神社 かなまら祭り
2、防衛大学校入校式
12時より祝賀飛行
3、日米親善よこすかスプリングフェスタ
9時〜17時 米海軍横須賀基地(一部開放)
D「アジアの軍隊にみるトランスナショナルな性格に関する歴史・人類学的研究」第5回
・日程:2010年2月16,17日
・場所:東京(陸上自衛隊広報センター、防衛省、京都大学品川オフィス)
・プログラム:
16日
13時 和光市駅集合
13時半 陸上自衛隊広報センター
17日
9時 防衛省正門前集合
9時10分〜11時45分 市ヶ谷ツアー
*ツアー後、防衛省大臣官房広報課の方から20〜30分ほど「防衛省全般について」
13時 研究会 京都大学品川オフィス
発表者:福西加代子
タイトル:韓国調査の日程と内容
発表者:上杉妙子
タイトル:在韓米軍基地統合の現場にて―韓国平沢市の巡検
発表者:福浦厚子
タイトル:平和運動と平和博物館設立をめぐる韓国の諸事情
発表者:福西加代子
タイトル:韓国ソウルの戦争記念館
E「アジアの軍隊にみるトランスナショナルな性格に関する歴史・人類学的研究」第6回
・日程:2010年4月24,25日
・場所:東京(国立歴史民俗博物館ガイダンスルーム)
・プログラム:
24日
12時50分 歴博の正門前に集合
13時〜17時 研究会 国立歴史民俗博物館内 ガイダンスルーム
発表者:田中雅一
タイトル:
発表者:小池郁子
タイトル:
発表者:Aaron Skabelund
タイトル:
25日
国立歴史民俗博物館見学
F「アジアの軍隊にみるトランスナショナルな性格に関する歴史・人類学的研究」第7回
・日程:2010年7月16日
・場所:京都大学人文科学研究所セミナー室331
・プログラム:
16日
13:00〜 研究会
発表者:新堂善史
タイトル:空のまち三沢
発表者:福西加代子
タイトル:岩国調査報告―基地周辺をめぐる問題
G「アジアの軍隊にみるトランスナショナルな性格に関する歴史・人類学的研究」第8回
・日程:2011年4月6日
・場所:京都大学人文科学研究所セミナー室331
・プログラム
6日
13時〜 研究会
発表者:高嶋航
タイトル:大日本帝国の軍隊とスポーツ
発表者:中原聖乃
タイトル:核実験による環境難民状況における親族ネットワークの役割−マーシャル諸島ロンゲラップコミュニティ再定住計画
H「アジアの軍隊にみるトランスナショナルな性格に関する歴史・人類学的研究」第9回
・日程:2011年6月4日
・場所:京都大学東京オフィス 会議室1
・プログラム
4日
13時〜18時
『文化人類学会分科会リハーサル』
趣旨説明:上杉妙子(専修大学)「軍隊がつくる社会、社会がつくる軍隊―トランスナショナルとナショナル、ローカルの接合と再定義―」
発表1:福浦厚子(滋賀大学)「コンバット・ストレスのマネジメント―トランスナショナルな視点とローカルな視点からみた自衛隊―」
発表2:金柄徹(亜細亜大学)「『聖なる義務』の行方―『兵役問題』からみる韓国社会の現在―」
発表3:森田真也(筑紫女学園大学)「占領という名の異文化接合―戦後沖縄における米軍の社会教育政策と琉米文化会館の活動―」
発表5:上杉妙子(専修大学)「移民退役軍人と軍隊、市民社会―英国陸軍・退役グルカ兵の団体についての分析―」
コメント1:田中雅一(京都大学)