長江流域社会の歴史景観

班長 森 時彦

長江流域社会の歴史景観
長江上流、四川省自貢の井塩生産施設。産業革命以前における最大規模の産業施設といわれる。

長江は青海高原に源を発し、6300キロにわたって両岸を潤した後、大海に入る。その流域面積は180万平方キロ、日本のほぼ5倍に達する。ここに形成された長江流域社会は宋代以来、中華世界の心臓部ともいうべき役割を果たしてきた。とくに下流の長江デルタ地帯は、稲作を中心とする豊かな経済を背景に優れた学術、文化を育んできた。本研究班(2008年4月~2011年3月の3年計画)は、長江流域社会が如何に形成され、如何に発展して近代世界と向きあうようになり、そして中国社会に如何なる影響を及ぼしたのかといった様々な問題を人文学的、とりわけ歴史学的なパースペクティブから多角的に解明することを目指してスタートした。

この研究計画はまた同時に、人文科学研究所附属現代中国研究センターが人間文化研究機構との共同事業として推進している「人文学の視角から見た現代中国の深層構造の分析」というテーマの総合研究(2007年4月~2012年3月の5年計画)の一翼を担うものでもある。現代の中国社会は如何なるプロセスを経て形成されてきたのかというトータル課題を、その中枢部である長江流域社会を例にして検討してみようという試みである。

班員は京阪神各大学の研究者が多くを占めるが、とくに博士課程からポストドクターにかけての若手研究者が多数にのぼる点が際立っている。さらに最近では、中国、欧米などの外国人研究者にゲストスピーカーとして研究成果を披瀝していただく機会も頓に増え、中国近現代史研究の国際拠点としても機能している。


班員
石川禎浩、岩井茂樹、袁 広泉、小野寺史郎、籠谷直人、金 文京