地域化する仏教―研究の視点と可能性

班長 船山 徹

東アジアの歴史において、仏教に関する様々の事柄が並々ならぬ影響を及ぼしていることは、何人も否定できないであろう。本研究班では、仏教の歴史を教理学とか歴史学のいずれかに限定することなく、ひとつの文化体系として総体的かつダイナミックに把握する試みとして、仏教やその他の宗教において「地域」が果たした役割に注目したい。地域とはそれぞれの地域特性、地域的特色であり、それはまた異なる地域間の相互関係を探ることでもある。インドと中国、あるいは中国と朝鮮半島、日本といった大きな意味での地域の交渉関係も重要であるが、同時に、より細かい意味での地域の問題、たとえば中国内部の各地域のそれぞれの特徴もまた重要である。地域性と関わる問題として、インドに発生した仏教が中国に伝来し独自の発展を遂げる中で生じた「仏教の中国化」の問題や、同様に「日本化」の問題、儒教や道教、神道、ヒンドゥー教といった異なる宗教間の相互交渉や葛藤、同化の問題などもまた興味深い視点となるであろう。

本研究班の班員の研究領域は、インド・チベット・中国・日本その他の仏教教理学史や仏教文化史、また、中国史、内陸アジア史、考古学、日本史、道教、儒教など、多岐にわたる。それらの多様な観点から各班員が宗教の地域的特色に関する事象を検討する時、そこから一体なにが新たに見えてくるかを、研究班としては各専門分野を超えた立場から探ってみたい。


班員
稲葉穣、VITA, Silvio、WITTERN, Christian、岡村秀典、金志玹、金文京、古勝隆一、高田時雄、麥谷邦夫
【所外】石井公成、大竹晋、河上麻由子、熊谷誠慈、倉本尚徳、末木文美士、中西久味、麦文彪、藤井淳、宮崎泉、向井佑介、村田澪、室寺義仁