「植民地主義と人類学」研究班 (1997-2000)
Colonialism and Anthropology
班長 山路勝彦
近代の西欧諸国が生み出し、また日本も世界史の流れの中でその一翼を担った植民地主義は、「未開社会」を「文明化」させていく一方で、地球上の随所で、様々な社会・文化変化をもたらした。そればかりか、その植民地主義は、現在においても「多文化主義」、「エスニシティ」、「エスノ・ナショナリズム」などの概念でくくれる社会問題と深い関係がある。人類学の観点から、そして学問としての人類学との関わりから、植民地主義について研究をする。本研究班は関西学院大学社会学部教授の山路勝彦先生を客員教授に迎え、組織された研究班です。私が副担当になっています。
原稿締切は11月末に決まりました。
班員
所内 小牧幸代 田中雅一 竹沢泰子 水野直樹 安田敏郎 山室信一
学内 松田素二(文学部) 田辺明生(アジア・アフリカ研究科)
学外 李仁子(民博COE)上杉妙子(民族学振興会)荻野昌弘(関西学院大)岡田浩樹(甲子園大)春日直樹(大阪大)金谷美和(人文研研修員) 川村清志(学振・特別研究員) 窪田幸子(広島大)栗本英世(民博)小林致広(神戸市外大)常田夕実子(学振・特別研究員)冨山一郎(大阪大)中谷純江(学振・特別研究員)福浦厚子(滋賀大)細谷広美(京都文教大)元木淳子(法政大) 森木和美(薫英女子大・非) 脇村孝平(大阪市大)池亀彩(人環・院)石井美保(人環・院)岩谷彩(人環・院)
例会の記録
1997年度
第1回 04/21
山路勝彦 文明の神聖なる信託のもとで──同化論、先住民問題、そして植民地主義と人類学
第2回 05/19
橋本和也 キリスト教と植民地主義
栗本英世 日本人の見たアフリカのイメージ
第3回 06/02
冨山一郎 「琉球民族」という主体
荻野昌弘 植民地主義の生成──19世紀「日本」における3つの他者像
第4回 06/16
森木和美 植民地主義と家父長制度
田中雅一 19世紀インドにおける宗教と政治
第5回 07/14
松田素二 植民地主義の文化と暴力
春日直樹 食人と他者理解──宣教師の見たフィジー人
第6回 10/20
岡田浩樹 仏教、かくも長き不在──韓国<伝統>文化の表象における植民地主義と文化人類学(民俗学)者
小林到広 未墾地の記憶──メキシコ・チアパス州東南部における先住民族意識の形勢
第7回 11/10
窪田幸子 オーストラリアの植民とミッション──フィールドから見たキリスト教
細谷広美 植民地的状況下における他者と恐怖──アンデス妖怪ピシュタコをめぐるうわさの分析
第8回 11/17
酒井啓子 ニューディール期のインディアン政策における人類学者の関与について
元木淳子 アフリカ文学と植民地主義──女性作家の視点から
第9回 12/01
Timothy Tsu 植民地論としての台湾宗教研究──迷信習と民心徳義の狭 間に
石塚道子(大阪薫英女子短大)「<カリブ海人>の不在言説としてのクレオール」
第10回 12/15
安田敏郎 「方言」の語り方と植民地──大東亜省調査官・寺川喜四男の場合
水野直樹 戸籍・名前・植民地主義──植民地期朝鮮における<同化>と<差異化>
第11回 01/19
安井眞奈美 植民地の記憶──パラオをめぐるさまざまな語りから
山路勝彦 日本人への道──皇民化政策下の台湾と蕃童教育所の子供たち
第12回 01/26
Margarita Winkel(ライデン大学)
第13回 01/19
崔 吉城 無題
福浦厚子 英領シンガポール期における華人の社会結合
第14回 02/16
吉岡雅徳(神戸大学)メラネシアのカスタム概念をめぐって
高岡弘幸 植民地から社会主義へ──ベトナム北部紅河デルタ農村の経験
第15回 03/16
岡本仁宏(関西学院大学)「アジアのアイデンティティ」と自由主義
山室信一──『キメラ』その後
1998年度
第16回 04/06
山本真鳥『植民地主義と文化』(新曜社 山本・山下晋司編)を編集して コメンテーター 窪田、安井、岡田
第17回 04/20
栗本英世 エヴァンズ=プリチャードに語られなかった神話──アニュワ人と“モダニティ”
田中雅一 儀礼的暴力の改革──インドのフックスィンギングとスリランカの動物供犠
第18回 05/18
荻野昌弘 民族を展示する
吉田憲司 制度としての文化財と博物館
第19回 06/01
冨山一郎 労働力という経験──ユートピアの海
森木和美 植民地主義と家父長制──「内鮮結婚」関連資料からみる家父長制
第20回 06/15
山路勝彦 梁山泊の人類学、それとも?──台北帝国大学土俗人種学研究室
中生勝美(和光大学)植民地主義と民族学──西北研究所の歴史的意義
第21回 07/06
大杉高司(京都文教大) 「抵抗論」の誘惑に抗って──トリニダード・トバゴのスピリチュアル・バプティストの儀礼を中心に
田辺明生 植民地的「公共領域」と共同体──インド・オリッサの事例から
第22回 10/05
- T. Fujitani 帝国・ジェンダー・国民化:朝鮮人皇軍兵士と「男の友情」
- 岡田浩樹(甲子園大)韓国親族研究における両班モデルと実証モデル
第23回 10/19
- 小林致広 先住民族自治は国内植民地の再生?:サンアンドレス合意(1996年)以降の論争を中心に
- 脇村孝平 アノフェレス・ファクターとヒューマン・ファ クター:20世紀初頭のインドにおける マラリア防あつ
第24回 11/16
「ミクロ人類学の基礎的研究」研究班と合同研究会
- 高媛(東京大学大学院人文社会研究科) 日露戦争以降における日本人の『満州』観光
- 米山リサ 植民地ディアスポラと批判的多文化主義の実践:家族・人種・セクシュアリティーと柳美里の「揺れ」
第25回 12/07
- 細谷 広美 記憶の植民地化:ペルーにおけるヘンティル(異教徒)神話とインカリ(インカ王)神話を手がかりとして
- 松田 素二 植民地状況下の生活実践の可能性:戦間期の西ケニア山村の暮らしから
冬休み
第26回 99/01/18
- 棚橋訓(慶應義塾大学)ポリネシア・クック諸島における土地問題の淵源歴史的省察
- 安田敏郎 近代的「言語」の構築をめぐってーー小倉新平と朝鮮語方言研究
- 成果刊行についての話合い
- 新年会です!
第27回 99/02/01
- 元木淳子 「アフリカ人女性作家と植民地主義:カリクスト・ベヤラの語り」
- 伊知地紀子 「生活世界の創造と実践:韓国・済州島の生活誌から」
第28回 99/02/15
- 上杉妙子(民族学振興会研究員)「英国陸軍グルカ兵のダサイン祭礼:二元的忠誠と集合的アイデンティティの自己表象」
- 子島進(総合研究大学院大学)「パキスタン周縁部における自律性の獲得:イスマーイール派の開発戦略」
第29回 99/03/15
- 松田京子(大阪大学)「歴史表象と植民地主義:人類学者・伊能嘉矩の 『台湾史』記述をめぐって」
- 宮崎恒二(東京外語大AA研)「植民地と人類学:蘭領東インドにおける民族学、 慣習法研究、古典学」
- コメンテーター:ティモシー・ツー(シンガポール大学)
春休み
1999年度(研究会の最終年度です)
第30回 99/04/19
- 合評会 春日直樹編『オセアニア・オリエンタリズム』(世界思想社)
コメンテータ 栗本英世・清水昭俊(国立民族学博物館教授)・田辺明生
第31回 99/05/17
- 窪田幸子「ミッション女性とアボリジニ社会のジェンダー」
- 李仁子「植民地支配が生みだす出稼ぎ移動民の擬似村共同体」
第32回 99/06/14
- 金谷美和「『民衆工芸』という他者表象--植民地状況下の中国北部における
日本民芸運動」
- 山路他全員「成果刊行についての話し合い」
第33回 99/06/28
- 栗本英世「植民地支配と民族内関係、民族間関係の変容--エチオピア帝国、イギリスとアニュワ人」
- 池亀彩「過剰性としてのムラージュ--パリ・インドシナ美術館と遺跡保存」
第33回 99/07/05
- 森木和美「植民地主義と家父長制―「内鮮結婚」にみる民族と性―」
- 田中雅一「応用人類学の系譜ーーインドとアフリカ」
夏休み
原稿締切は11月末に決まりました。
第34回 99/10/04
- 上杉妙子「英国陸軍のグルカ政策とグルカ兵の国民アイデンティティ」
- 福浦厚子氏「現代における植民地主義の記憶と再生産:シンガポールにおける「神聖」な空間の利用をめぐって」
第35回 99/10/18
- 合評会栗本・井野瀬編『植民地経験ーー人類学と歴史学からのアプローチ』(人文書院)コメンテータ/秋田茂(大阪外大)・伊地知紀子・窪田幸子・清水昭俊(民博)・和崎春日(名古屋大)
第36回 99/11/1
- 菊池暁「<民俗>を紡ぐ者たち:奥能登のあえのこと1934-1999」
- 森木和美「移住者たちの「内鮮結婚」」
第37回 99/11/15
- 荻野昌弘「博物館と暴力〜民族の展示をめぐって(ビデオ上映あり)」
- 窪田幸子「植民地におけるジェンダーとミッション」
第38回 99/11/29
- 伊地知紀子「植民地化と生活世界の可変性−韓国・済州島の一海村の事例から」
- 水野直樹「朝鮮植民地化直後の差異化政策―「内地人ニ紛ハシキ姓名」の禁止をめぐって」
第39回 99/12/6
- 安田敏郎「植民地と「バイリンガリズム」−安藤正次と台湾」
- 冨山一朗「植民地主義を書くーー法・暴力・危機」
冬休み
第40回 00/1/17
坂部晶子(文学部院生)「植民地の記憶の社会学ーー日本人にとっての「満洲」経験」
金谷美和「インド手工芸の『発見』ーークーマラスワミとカマラデヴィ」
第41回 00/1/31
細谷広美「ペルーにおけるインディオ像ーー農民(カンペシーノ)とインカの末裔の間で」
元木敦子「アフリカ人女性作家と植民地主義ーーカリクスト・ベヤラを中心に」
第42回 00/2/21(2/7は休みます)
岡田浩樹「韓国仏教の屈折ーー妻帯僧問題に現れるジェンダーとポストコロニアリズム」
石原俊(文学部院)「軍事−地政的欲望と「歴史」の収奪ーー沖縄占領統治と初期民主化運動をめぐって」
第43回 00/3/6 最終回です。
小林致広「グアテマラのマヤ運動と国内植民地論」
石塚道子「カリブ海地域の植民地主義と文化人類学」
懇親会
おかげさまで3年間の研究会、無事に終わりました。あとは成果刊行にむけてもうひとがんばりです。メンバーの方、ゲスト・スピーカーの方、助手、院生ら、研究会を支えてくれた方々に感謝します。
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