多文化社会におけるインド
(京都大学・現代インド地域研究拠点プロジェクト)
プロジェクト趣旨
現代インドをどのような視点からとらえるべきか。本プロジェクト・グループでは主として文化人類学的な手法や考え方を基盤に、コンタクト・ゾーン(接触領域)という概念をキーワードに、これからのインド研究の可能性を探る。
コンタクト・ゾーンは、アメリカの文学研究家Mary Louse Prattの提唱した用語で、欧米の植民地勢力と非欧米との接触のあり方を理解するために提唱された。彼女の言葉をここで引用しておきたい。
「コンタクト・ゾーンとは、植民地における邂逅の空間である。それは地理的にも歴史的にも異なる人びとが接触し、現在進行形の関係を確立する空間である。」このような視点は、厳密に植民地支配だけに限定する必要はない。グローバル化の進む現代社会における「異文化」との接触なども、コンタクト・ゾーンという概念に依拠しながら考察することが可能であるからだ。また「異文化」の単位も宗主国と被植民地というように固定化する必要はない。あえて言えば、インドの外に「現代インド」を探索するという試みがあってもいいのではないか。これこそグローバル化にふさわしい研究視点と言えないだろうか。
その際、インド亜大陸外においては「インド性」の探求、インド亜大陸においては「インド性」解体という異なるベクトルを同時に抱くような視点が必要となろう。その際、重要なのは、文化史的視点だけではなく人類学的手法としてのミクロな視点である。他者との邂逅の場としてのフィールドへの注目、ライフ・ストーリーの収集、そして越境するマテリアル・カルチャーである。このような問題意識に基づいて、多文化世界としてのインドの現代的様相を明らかにしていきたい。(代表者 田中雅一)
参加メンバー
足立明(京都大)、秋山晶子(京都大)、飯塚真弓(京都大学)、飯田玲子(京都大)、*石井美保(一橋大)、岩谷彩子(広島大)、江原等子(京都大)、*梶原三恵子(京都大)、*金谷美和(民博)、木下彰子(京都大)、*國弘暁子(群馬県立女子大)、七五三泰輔(京都大)、:*田中雅一(京都大)、、田辺明生(京都大)、、外川昌彦(広島大)、*常田夕美子(大阪大)、*中谷純江(民博)、*中谷哲弥(奈良県立大)、*藤井正人(京都大)、*藤倉達郎(京都大)、舟橋健太(日本女子大)、山本達也(京都大)
*は現代インド地域研究拠点登録メンバー
研究活動
●日 時:200911月13日(金) 16:00〜20:00、アジア・アフリカ地域研究科
場所:京都大学 総合研究2号館(旧工学部4号館)4階 大会議室
1)宮本万里(北海道大学)「自然環境保護」をめぐる文化の政治─ブータン牧畜民の生活、信仰、開発政策―
2)外川昌彦(広島大学)「バングラデシュの聖者廟における人類学者と現地の人々」
●
場 所:京都大学人文科学研究所本館(新館) 1Fセミナー室
1)13:00-13:20「現代インド地域研究」プログラム全体の説明: 田辺 (10分説明+10分 質疑応答)
2)13:20-14:10「多文化世界としての現代インド」研究計画の提案: 田中
3)14:20-15:302について、質疑を交えてのブレインストーミング
研究報告
●論文
1)田中雅一 2009「スリランカの民族紛争――その宗教的位相」『現代宗教』2009、pp.165-182。
2)田中雅一 2009「エイジェントは誘惑する――社会・集団をめぐる闘争モデル批判の試み」 河合香吏編『集団――人類社会の進化』京都 大学学術出版会、275-292ページ。
●発表
1)2009年5月6日「ひとりだけどふたり?ひとりだからふたり?――ダブルの民族誌をめぐって」
東京外大アジア・アフリカ言語文化研究所『「シングル」と社会―人類学的研究』研究会
2)2009年6月17日「エイジェントは誘惑する――社会・集団をめぐる闘争モデル批判の試み」
東京外大アジア・アフリカ言語文化研究所『人類社会の進化史的基盤研究(2)』研究会
3)2009年7月17日「歓待の人類学」趣旨説明・コメント
京都人類学研究会7月季節例会
4)2009年7月24日「多文化世界としての現代インド」
京都大学人文科学研究所現代インド研究センタープロジェクト2第1回会合京都大学人文科学研究所
5)2009年8月10日Education
on Religious Culture in Religious Studies and Education in Britain: Some
Findings科学研究費補助金 基盤研究(A)「大学における宗教文化教育の実質化を図るシステム構築」
国際集会国立民族学博物館
6)2009年8月11日-14日「Management and Marketing of
Globalization Asian Religions」コメント
国立民族学博物館国際シンポジウム
7)2009年9月12日パネル「ジェンダー宗教学の確立にむけて」コメント
日本宗教学会第68回学術大会
8)2009年10月17日「京都大学における探検と人類学」
国立民族学博物館『日本の人類学史の研究』研究会
9)2009年11月14日「軍隊――ナショナルとトランスナショナル」
日本文化人類学会公開講演会講演「文化人類学から世界を見る」
10)2009年11月20日「異に触れ、異に交わる 文化人類学の立場から」
シーズとニーズの会講演
11)2009年12月5日「多文化世界としての現代インド」
人間文化研究機構プログラム「現代インド地域研究」2009年度全体集会京都大学稲盛ホール
12)2009年12月19日「21世紀アジア社会の人類学:回顧と展望」コメント
南山大学人類学研究所
13)2010年2月15日「コンタクト・ゾーンとしての占領期ニッポン」
京都大学人文科学研究所『複数文化接触領域の人文学』
14)2010年3月23日「ボーダーズ――国境とサブカルチャー」
京都大学現代インド地域研究拠点総括班第1回会合京都大学稲盛ホール
15)2010年3月28日「コンタクト・タイムゾーン」
東京外大アジア・アフリカ言語文化研究所『社会空間論の再検討―時間的視座から』研究会
16)2010年3月29日「儀礼化をめぐって――制度への実践論的アプローチ」
東京外大アジア・アフリカ言語文化研究所『人間社会の進化史的基盤研究(2)』研究会
17)2010年3月30日「強壮する男性身体」
東京外大アジア・アフリカ言語文化研究所『「もの」の人類学的研究――もの、身体、環境のダイナミクス』研究会