解釈学的経営情報学研究部会
1.テーマと前提条件
(1)テーマ
「プロフェッショナル組織の変容」
−軍隊型組織からオーケストラ型組織へ−
(2)前提条件
今回は、群馬交響楽団の音楽監督であり、ベルリンでカラヤンの助手としてカラヤンとベルリンフィルに接した経験を持つ高関健氏の協力により、6月に福井県武生市で行われる武生国際音楽祭に出演する桐朋学園オーケストラの本番直前の練習を公開していただけることになった。なお、本番直前の練習という制約と練習会場の制約があり、公開練習の会場は桐朋学園の練習室で行う事を前提として企画を進めている。従って、会場の制約から参加者は50名に限定する。(事前予約制。定員オーバーの場合は立ち見となる)
2.趣旨
プロフェッショナル組織は、専門家の集団である故の権威と独自性を持ち、企業組織とは異なる発展をして来た。しかし、その実態は必ずしも理解されているとは限らない。例えば、オーケストラ型組織については、ドラッカー、ミンツバークを始め多くの研究者が論文を書いてはいるが、企業組織とは異なる組織運営について本質的な違いを語っているとは言えない。
(1)プロフェッショナル組織と個人のキャリアパス
オーケストラ団員はその所属団体に縛られず、リサイタル、アンサンブル活動を行っている。そして、上位ランクのオーケストラのオーディションを受けることにより、そのキャリアと能力を向上させている。(所属する組織外で修行し、キャリアアップして行く)
この点に関しては、大学病院を頂点とし、傘下の系列病院を持つ大学病院組織と医師の研修とそのキャリアアップには共通点がある。開業医となった場合も、医師の派遣、専門的な治療を必要とする患者の入院先として必ずどこかの大学病院の系列に入らざるを得ないという現実がある。
(2)社会的な要請による変化
また、時代の変化の影響を受けその閉鎖性を変えざるを得ないプロフェッショナル組織もある。先進的な国家の軍隊組織は男女平等の原則から女性兵士を受け入れるという試練を受け入れている。典型的な官僚型組織である日本の医学部も、臓器別の診療から総合医療、チーム医療という新たな医療システムを模索している。
(3)リーダーと組織の個性
指揮者には「ドライブ型」と「キャリー型」の2タイプがあると言われている。その各々のタイプの指揮者により、オーケストラの個性が形成されていく。ところが、セル時代のクリーブランド管弦楽団は室内楽のようなアンサンブルとしてその緻密なアンサンブルを絶賛されたが、団員は必ずしも幸福ではなかった。多くの著名なソリストがセルに反発してオーケストラを退団している。
カラヤンとベルリン・フィルの軋轢も有名であるが、次の音楽監督としてベルリン・フィルはアバドを選択した事は指揮者のリーダーシップとオーケストラの自主性の問題に関する典型的な事例である。(ちなみに、カラヤンは帝王としてオーケストラに君臨したが、演奏の場では「キャリー型」の指揮者であった)
こうしたプロフェッショナル型組織の実態を解説していただくと共に、他のプロフェッショナル組織と比較しつつ変わりつつある組織と個人の関係について議論を行いたい。
3.開催日時
企画:経営情報学会 解釈学的経営情報学研究部会
日時:6月9日(日)午後1時−6時
場所:桐朋学園大学音楽学部
定員:50名(先着順予約制)
4.プログラム
(1)ご挨拶 13:00-13:10
(2)趣旨説明 13:10-13:30
(3)軍隊組織における女性兵士(仮題) 13:30-14:20
田中雅一(京都大学人文科学研究所 助教授)
(4)病院組織と医師(仮題) 14:30-15:20
佐藤 徹(慶応大学医学部循環器内科 講師)
(5)公開練習見学 15:30-17:00
高関健(群馬交響楽団音楽監督)
桐朋学園オーケストラ
演奏曲目:ベートーベン:交響曲第5番「運命」
(6)指揮者と演奏家の対話 17:10-18:00
高関健、峰岸壮一、杉野(聞き役)
(7)パネルディスカッション 18:10-18:40
パネリスト
・田中雅一(京都大学人文科学研究所)
・佐藤 徹(慶応大学医学部)
・高関 健(群馬交響楽団音楽監督)
・三輪えり花(劇団昴演出家 新国立劇場 講師(オペラ・バレエ演技指導))
・峰岸壮一(桐朋学園大学教授 フルート)