ゼミ スケジュール(2005年度〜)


2005

7月8日
●場所 総合人間学部 1207教室
○発表1 加藤
「食材採集からみる定住狩猟民の熱帯雨林利用ーボルネオ・シハン族の事例」

○発表2 錦織
「奄美大島・潜水追込網漁師にみる漁場利用、組織構造、新人参入」

○発表3 高田
生野区の韓寺調査より」
○発表4 鈴村「女性にとってのポルノグラフィー 」


10月7日

○発表1 梶丸 「中国における「民族」とは何か」

○発表2 池田 「性同一性障害医療とトランスジェンダーする身体をめぐって」

○発表3 和崎 「『乞食』の生活秩序形成にみる創発的実践
―ポスト・ソビエト期のウズベキスタン都市における『物乞い‐施し』交渉と日常性」


10月14日 

高田Migrant "Illegality" and Deportability in Everyday Life  Nicholasd P. De Genova


10月21日 

担当内山 "Family Values" and Domestic Economies
Gerald W. Creed


10月28日 

福西担当WAR: Back to the Future Anna Simon


11月4日金曜日 13:30〜

発表1 岩谷洋史(神戸学院大学) 
「マンネリズムを目指す酒造についての覚書―同じことを同じようにしようとする行為について―」
私は兵庫県のある酒造場で働きつつ、調査をしていたのですが、今回はそのことについてのお話をさせてもらいます。酒造り現場では、毎日朝から晩まで繰り返し、所定の手続きの束に沿いながら、同じようなことが行なわれます。作業を行なっている人にとってそれは退屈になってくるものです。それはある意味、マンネリズムと言えるかもしれません。わたしたちは、このマンネリズムという言葉を、普通、否定的に用いることが多いと思います。しかし、たとえ、繰り返している当人物がそうとは気がつかないとしても、繰り返されることは時として重要な側面があるかも
しれないと思います。今回は、そういう繰り返しの行為について積極的に意味づけて話をしたいと思います。 よろしくお願いいたします。

発表2錦織
「奄美大島南部・追込網漁師の技術的、社会的成長」
修士論文では奄美大島南部の追込網漁師の技術的、社会的成長がどのような機会を通じて促されているのか、そしてそれらはどのように絡み合っているのかということを示し、 一人の漁師の成長を構成している様々な要素を明らかにする。
今回の発表では、修士論文の章立て案とその中で参照するデータの提示を行う。中でも今回は漁師の成長について考えるのに役立つと思われるデータを中心に提示し、 章立ての妥当性、データの利用法について考えて見たい。

発表3 比嘉
「人への贈与/神への贈与というモデルの再検討」
本発表では修士論文での議論を先行研究と再度照らし合わせ、検討する。
トンガの人びとが「それは神への贈与である」と証言するにせよ、その贈与物が食物であり、費用と労力を投下した後に華やかに飾られ、周囲の人びとの視線にさらされた後に食されていく、その限りにおいては、人への、神への、という区分をすることは不可能なのではないか。 贈り手→受け手」という静的な図式で描かれ続けてきたオセアニアの贈与論を乗り越えるべく、どのような視点の導入が可能なのか。検討したい。


11月11日 
<発表1>
発表者:内山正太
タイトル:世帯編成と出家―インドヒマラヤ・スピティ地方の事例を通して―
要旨:
 本研究はインドヒマラヤ・スピティ地方における世帯編成について考察するものである。本研究に関する調査を行なったスピティ地方はチベット仏教が優勢な地域であり、そこでは長子以下の兄弟を出家させるという出家慣行が存在する。このような出家慣行は世帯編成において世帯から人員を排出することの重要な局面である。しかし同時に、世帯は結婚、相続を通じた世帯への人員補充によっても編成される。本研究の目的は、スピティ地方の世帯編成においてこのような排出と人員補充のプロセスが複雑に絡まりあっている様を、世帯と一種象徴的な家屋との関係のなかで世帯がどのように編成されるのか、そのプロセスに着目しつつ明らかにすることである。そこでは、世帯の文化的社会的個別性に着目するために、「世帯」に該当する土着の言語にも注目しつつ考察する。そしてでここで取り上げた事例の考察を通じて、世帯が個別には存続できず、世帯の維持のためには構造的に世帯外の「他者」を必要とし、それゆえに世帯は外部からの影響が入り込む隙間を常に持ち合わせた存在であることを示唆しいきたいと考える。

<発表2>
発表者:鈴村綾子
タイトル:「女性向けアダルトビデオをめぐって」
要旨:
 日本において「女性向けアダルトビデオ」はどのような歴史をたどり、現在どうなっているのか。女性向け作品をめぐるアダルトビデオ業界全体の動き、個々の制作・販売者の考えを通して、現代日本ではポルノの消費者としての女性がどのように捉えられているかを考察してみたい。(のですが、現在もデータ収集中なので、今後展開が変わることもまだまだありえます)今回は@インタビューから得られたデータの提示、A修論の章立て構成案、の2つをメインに発表したい。(テーマがテーマだけに少々過激な言葉も出るかと思いますので、苦手な方は心してご参加くださいね)

<発表3>発表者:徐玉子
タイトル:駐韓米軍基地村の女性たちの生活世界とネットワーク(仮)
要旨:
 基地村の女性たちの生を一般的に表象される、服従的.依存的.情緒的といった「韓国人女性像」に照らし合わせて、そのズレに着目し、家父長制の「犠牲者」のイメージで表象されることを拒む彼女たちの生をより積極的で肯定的に捉え、その生き方の発する意味を探りだす。「韓国人女性像」に合致しないばかりか、むしろその家父長制に挑戦する韓国人女性という観点から基地村の女性たちの生を描く。


1125()の田中ゼミは、★14:00から★です。
13:30
からではないので、ご注意ください。
場所は212教室の予定ですが、変更の場合は人文研入口事務室前のボードに掲示します。

発表者は、池田、福西さん、橋本さんです。
池田:ポスター発表
福西:(Annu. Rev. Anthropol.文献講読) War: Back to the Future
橋本:先行研究の紹介


日時:113()1330
場所:総合人間学部1号館 1207教室

■発表者1:神本秀爾

「予備調査報告〜エチオピア・アフリカ国際会議派(E.A.B.I.C)のラスタファリア ン」

■発表者2:坂崎広志

「グループホームのメンバーの非診断・非治療場面における会話の事例分析」

■発表者3:福西加代子

「戦艦「大和」と戦争の展示−広島県呉市 呉市海事歴史科学館・大和ミュージアム」


2006年2月3日(金)

○発表
・李ぶんぶん
 「中国陝西省カトリック村における日常的宗教実践と宗教意識」

 本発表では、調査村に住む18歳以上のカトリック信徒113名の(男女年齢分布は表1 3)を対象に行ったインタビュー調査に基づき、村人の個々人の日々の宗教実践と宗教 意識を考察する。
 村人にとって「カトリックである」ことの意味を、教会に通うことや告解と聖体受 領の実施状況などの実践レベルと、自村と他村の区別や信仰の意味に対する考えなど 認識のレベルの両方から検討する。明らかになったのは、旧来の伝統的な共同体や 家・氏族の絆の中で生きていた村人の生活に、キリスト教の枠が与えられたことであ る。村人が教会に通い、平和を求め祈祷し、罪を定期的に告白することは生活の中で 重要な位置を占めている。そのうえ、キリスト教は道徳倫理や精神的な側面でも大き な役割を果たしていることが明らかになっている。他の時代や社会にみられるよう に、教会は世俗権力と結びつくことはないが、村落社会に深く根付いて、伝統的な慣 習や生活様式を変革しようとした。この変革の最大の武器が「罪」 という概念なのであり、それは天国と地獄あるいは煉獄というイメージと結びつい て、人々の日常生活に大きな圧力をかけている。
 しかし、教会の教義にも拘らず、伝統的な考え方や慣習は消えてしまうことはなか った。それはやや形を変えながらも、現在まで生き残っている。教会に代表される権 力は個々人の生活にも介入しながら、個人の人格は認められ、共同体と個人の間には 一線が画されている。このことは、カトリックの教義や儀礼への関与の仕方は個人に よって異なり、また、同一人物であっても、一生のうちで関与の仕方が変化すること から明らかにすることができた。
 本発表は現在執筆中の博士論文の中の重要な一章である。皆様の意見とコメントを ぜひ参考にさせていただきたいと思います。

・中村平
「マイケル・タウシグの、暴力・テロルの文化の(対抗的)記述について: 台湾先住民族タイヤルの植民()状況の歴史と現在を、いかに記述するか」
マイケル・タウシグの論文を通して、暴力と文化、そしてそれを語ること自体を考えたいと思います。 できれば、台湾高地でのフィールドワークでの出会いを接合したいと思います。 タウシグの論文は、(わたしにとって)難解ですので、できれば皆様に少しでも読んできていただければ、幸いです。

タウシグ、マイケル1996「暴力の文化――死の空間:ロジャー・ケースメントのプトゥマイヨ報告と拷問の解釈をめぐって」『現代思想』24(11): 198-231大島康典ほか訳
Taussig, Michael. 1992. Culture of Terror---Space of Death: Roger Casements Putumayo Report and the Explanation of Torture, N. Dirks ed., Colonialism and Culture, Ann Arbor: the University of Michigan Press. 135-173.

・河西瑛里子
「イギリスのペイガニズムに関する予備調査の報告と、今後の本調査の予定について」
ペイガンとはどのような人々か、ウイッチと女神信仰者の違いは何か、どのような活動をしているのか、ウイッチたちのハーブと儀式、日常、治療にはどのような例があるか、ペイガンとキリスト教徒の両方にとっての聖地グラストンベリーとはどのようなところか、これからどのような調査の可能性があるか、について発表します。


  • 2006年度
  • 4/19 神本:文献レビューRastafari;from outcast to culture berers Ennis Barrington Edmonds

  • 4/26 池田:Annual Review of Anthropology HANG ON TO YOUR SELF: Of Bodies, Embodiment, and Selves (Steven Van Wolputte

  • 5/10 徐:Annual Review of Anthropology When Anthropology is at Home: The Different Contexts of a Single Discipline ( Mariza G. S. Peirano

  • 5/17 武田:Annual Review of Anthropology MULTIPLE MODERNITIES: Christianity, Islam, and Hinduism in a Globalizing Age Robert W. Hefner
    場所:人文科学研究所211教室

  • 5 /19  田中・菅原合同ゼミ

【場所】総合人間学部1号館 1207号室
【時間】14:45〜

発表者:李ぶんぶん
タイトル:中国カトリック村における権力構造と人事

 中国の農村基層に対する政府の管理体制は、改革・開放による人民公社解体後、一種の機能不全に陥っていたそのような状況のなかで、村民自治と村民選挙、すなわち「村民委員会」の組織化、その構成メンバーの直接選挙、という代替的な集団管理方式が、村民により自発的に行なわれるようになってきた。その結果、1997年のはじめに、全国80%の村では村民委員会の直接選挙が普及するにいたった。海外の一部のメディアには、村民自治・直接選挙の実施を、中国の民主化の突破口であるとし、その意義を強調する。しかし、実際農村の権力構造および人事はいかなるものなのか。本章では筆者と村の権力者との対面、村の権力構造と社会関係、幹部と村人の関係を一連の具体的な事件を通じて具体的に検討する。最後に、共産党と教会の関係も村人の語りから考察する。

発表者:坂崎 広志
タイトル:「破綻」を含んだ会話に参与すること

 私は統合失調症のグループホームにおける会話を収録しています。今回は、現象の解釈ではなく、データの分析中心に話をしていきたいと思います。
 集められたデータを分析するうえで方針の1つとして、会話の「破綻」という特徴的な現象に目を向け、スタッフ(や私)あるいはメンバーがいかにして会話を維持するかについて紹介していきたいと思います。
 多様な会話のかたちを持つメンバーと「破綻」を前提に対峙するとき、(1)スタッフのや私の予想や期待がいかに裏切られるのか。(2)予想外の展開がきたとき、次の反応をどのように生み出すかということを示すことを目標とします。

発表者:比嘉夏子
タイトル:「神への贈与」とそのゆくえ−トンガ王国における教会への献金とその使途−

トンガでは、キリスト教会への献金や聖職者への贈与といった機会ごとに、信者たちが奔走する。この国の経済状態からすれば莫大な額ともいえるその献金は、もちろん彼らの信仰の篤さや贈与という行為の重要性をあらわしているだろう。今回の発表では特に、それがどういった形で個人から中央へと集められ、また集められた後にどのように利用されているのか、前回のフィールドワークで得たデータを中心に分析する。彼らの生活世界を覆う教会組織とはどのような存在か、またそのありようは王権社会というヒエラルキーと重ね合わせて考えることが可能なのか、といった論点にもふれながら、考察したい。


  • 5/24 文化人類学会リハーサル
    李ぶんぶん15001545
    揺れ動く信仰共同体
    ―中国西北農村教会におけるポリティックス
    小池郁子 15501635
    ナイジェリア由来の宗教、オリシャ崇拝における託宣−アフリカ系アメリカ人の宗教文化考察−
    池田瑞恵 16401725 
    性の歴史的転換と性を移行する経験−現代日本の「性同一性障害」医療化において−
    徐玉子 17301815 
    国家の思惑と生活苦を乗り越えて−韓国京畿道における米兵相手の韓国人売春女性の語りを中心に−

  • 6/9 田中・菅原合同ゼミ

【場所】総合人間学部1号館 1207号室
【時間】14:45〜
発表者:中谷和人
タイトル:現代日本における障害者芸術/アウトサイダー・ア ートの人類学的研究
内容
今回の発表では、知的、精神的障害を患う者たちによってなされる表現行為=技芸が歴史的、社会的にどのようにまなざされてきたか、医療、福祉、芸術の側面から概観するとともに、それらが抱える矛盾や対立を踏まえ、修士論文に向けた自分の関心を述べていく。

発表者:是枝邦洋
タイトル:「実験室研究」再考
内容
近年の「実験室研究」とよばれる一連の人類学的研究は、科学のもつ聖性を引き剥がすことを目標としてきた。すなわち、他の知の体系(たとえばエスノサイエンス)と比べ、科学は特殊ではない、ということを主張し続けてきたのだ。しかし、科学の恩恵に浸って暮らす我々からすれば、「科学は特殊ないとなみではない」という主張は受けいれがたい。現象を制御し、予測し、新たに生み出すような科学的実践は、やはり特殊であるといわざるを得ないだろう。 そこで本発表では、科学者集団をある特殊な実践共同体としてとらえる方途を模索したい。


  • 6/14

時間15:00
場所:人文科学研究所211教室
発表者:越智香予
文献:Sexuality, Culture and Power in HIV/AIDS Research
 Richard Parker

ABSTRACT
 本論は AIDSに関する人類学的研究の発展を考察するもので ある。AIDSが流行し始めた最初の10 年間において、社会科学研究の大半は、HIV感染者個人間での行動的相関現象に主な焦点を当てており、より広範な社会的・文化的ファクターを考慮するものではなかった。しかし、1980年代後半になり、人類学者によるパイオニア的研究が、HIV感染とその予防に作用する性行為(sexual practice)が構成される際において、文化体系を考察することが重要だと主張しはじめる。1990 年代初頭以来、文化の分析に関する上述のような主張によって、HIV 感染への脆弱性(vulnerability)をうみだす構造的ファクターに注目する人類学的研究は活発化していくことになる。さらに、HIV/AIDS に内在する社会的不平等や政治経済などの問題に関する研究は、今日まで、とりわけ重要な存在であり続けてきた。近年行われている研究の多くは、より個別的な行動学研究の理論的枠組みにオルターナティヴな枠組みを提示しながら、文化的問題と構造的問題の双方を統合していこうと試みている。


  • 6/21 束:Annual Review of Anthropology ()Urban Violence and Street Gangs James Diego Vigil

要旨

 何が都市の街頭暴力団の暴力を引き起こすか?また、どのようにして、私たちがこの青春期と青年行為のタイプwp形成する力をより良く理解できるのか?一世紀近い間に、社会学者たちは、いろいろな方法を取ってこの複雑な問題を解明しようと試みていた。特に、大規模の都市向けの移民の背景において。この二十年以来、これらの研究者たちは主として、大量な調査アプローチから収集されたデーダーに依頼してしまう。このレビューはエスノグラフィックな戦略が再び流行になってしまう今日ではどのようにして分析の構造がもっと完全で、また多次元的になってしまうのかという展開と概説のいくつかを明らかにする。


  • 6/28

発表者:中谷和人

文献のタイトル:
The Anthropology of Online Communities
 (Samuel M.Wilson and Leighton C.Peterson

Abstract
インターネットを基礎とする情報、そしてコミュニケーションの技術は、新種の共同体や通信実践―それらは人類学の調査者にとって見過ごせない現象である―の出現を促した。インターネットが持つその革命的な性質と、それが引き起こした劇的な変容に対する初期評価にもかかわらず、その変化は日々の生活のなかで見出される実践や権力関係のなかに、劇的にではないにせよ、ますます埋め込まれてきている。このレビューでは、人類学とそれに関係する諸分野において調査者の疑問、研究方法、洞察に関して探求し、また研究のための信頼すべき新たな方向性を定義づけることを求めている。全体的な結論としては、インターネットを構成する技術、そしてその内部に生じるあらゆるテクスト、メディアは、それ自体において文化的な生産物であるということだ。したがって人類学は、それらの新しいまたそれほど新しくもない現象に対して、さらなる調査をするに合致したものといえるのである。


  • 7/7 田中・菅原合同ゼミ
    発表者 小池、山 本、朴

【場所】総合人間学部1号館 1207号室
【時間】13:30〜

【発表者】:小池郁子

【タイトル】:合衆国の社会運動家、オセイジェマン・アデフンミ―イニシエーションを介して大西洋を横断するヨルバ人たち―

【概要】
本発表では、合衆国にアフリカ系アメリカ人として生まれた男性が1950年代後半にはじめた社会運動をとりあげる。とくに、アフリカ系アメリカ人とナイジェリア人とのイニシエーションを介した宗教・文化交流に注目し、こうした宗教・文化交流が社会運動に与える影響について考察する。

【発表者】:山本達也

【タイトル】:接触領域としてのTi-POP

【概要】
これまで、チベット難民社会の研究において、音楽を扱ってきた研究は数少ない。その中でも、現代的なチベット音楽に関しては、発表者の知る限り、Diehl一人である。彼女は、現代的チベット音楽を「チベット人の愛国的感情からなり、表演によってそれらの感情を確認、増幅し、共同体に共有された記憶や目標を強化するものである」(Diehl 2002;222)と定義する。しかし、この視点の下では愛国心という、その発現が本来文脈依存的な特色が過剰に前面化されている。また、その視点には現代的チベット音楽が孕むより広義の政治性が含まれていない。実際、Diehl本人が作品製作のプロセスに関与する際生起した政治性というものが存在するではないか。
 調査者であるDiehlが制作に関与した(それは発表者も同様である)ことが示すように、作品製作というプロセスは、まさに接触領域である。接触領域とは、「植民地主義や奴隷制、または今日グローバルに生きながらえているそれらの結果のような、しばしば支配と従属からなるきわめて非対称的な諸関係のなかで、まったく異なる複数の文化が出会い、衝突し、たがいをつかみあう社会的な諸空間[Pratt1992:4、林 2001:12]を指す。プラットらに考察されている接触領域は、あくまでテクストという物質を、閉鎖系の中でなく未来に向けて拓くテクスト解釈の試みである。つまり、「書かれたテクストの分析」である。本発表では、作品製作のプロセスに注目することで、接触領域概念を「テクストが書かれるプロセスの分析」に拓いていく。そして、そのテクストがいかに受容され、テクストと聴衆との間に何が起こっているかということも含めて考察する。
 本発表では、「チベット語を用いた現代的な音楽」という緩い定義を施すことで現代的チベット音楽から、Ti-POPという名称に変更し、作品製作のプロセスを追い、そこで生起する政治性を浮かび上がらせることを目的とする。

【発表者】:朴眞煥

【タイトル】:軍隊に関するディスコースを通してみる韓国の大学内における軍隊文化の再生産

【概要】
本研究は韓国の大学という空間で軍隊文化がどのように実践されているのか、こうした実践により軍隊文化がどのように再生産されるのかに関する研究である. 韓国人にとって軍隊文化は当たり前の文化と認識されている。特に韓国の大学という空間は軍隊と係わる過程が常に起きる空間である。このような状況はどのように軍隊文化が再生産されるのかどうかが效果的に見られる空間である本研究を通じて見ると、大学の成員において軍隊に関するディスコースは政治的性格を持っていることが明らかになる。本研究の現場研究の対象は一般的な韓国の大学の学科の性格と比べると特別な性格を持つ。この学科は女性的な性格を持っている。男性の数も少ない。これで、この学科の男性たちはマイノリティ的な位置である。このような男性たちのマイノリティ的な位置は現役と予備役の関係を最も軍隊文化的関係にするように見える。これによって軍隊文化やディスコースが実践される。学科全体的を見ると、予備役は学科の中で権力をもつため、女性と交渉しながら軍隊文化やディスコースを実践する。女性もこのような実践をする。このような過程の中で軍隊文化やディスコースは実践され、再生産される。                                                 


10月13日(金)菅原・田中合同ゼミ

日時:1013日金曜日1330〜 
場所:総合人間学部棟1207教室

1.発表者:田村さん

タイトル:調査経過報告〜「モノから見る市場経済化のローカルな文脈――トルコの『嫁入り道具』を事例として」

 本研究は、市場経済への参入/市場経済の浸透に応じて、人々がモノのローカルな価値を、いかにグローバルな市場経済と撚りあわせながら変容させているかを、トルコの嫁入り道具の事例をもとに検討するものである。トルコ全土で盛んな「嫁入り道具」の慣習は、ここ数十年間、「インフレーション」の様相を呈している。「嫁入り道具」には、絨毯・レース編みなどから、大型家電製品など、新居で使われる一切のものが含まれる。 「遊牧民文化」の表象として、トルコ絨毯が西洋世界から好奇のまなざしを受け、消費されるようになって少なくとも3世紀が過ぎている。その比較的緩やかな市場経済への巻き込まれ過程において、絨毯生産地の社会経済状況のみならず、絨毯そのものも少なからぬ変容を遂げてきた。 生産地域における絨毯に注目し、グローバル化したローカルなモノのローカルな文脈を明らかにする。また、逆に、大型家電製品などグローバルからローカルに入りこんだモノが、そこでローカルな意味づけがされていることも指摘する。
 今回の発表では、20051月以降の、トルコにおける調査の経過報告をすることによって、みなさんの意見をいただき、留学期間終了(今年末)までの調査計画の指針としたいと考えています。よろしくお願いします。

2.発表者:神本さん
 
  タイトル:「調査報告:ラスタファリアン集団、エチオピア・アフリカ国際会議派」

 2006年度6月から9月のフィールドワークでの調査報告を行ないます。ラスタファリの一宗派としての彼らの教義や生活の概要、国内外の信者や政府との関係を事例をもとに報告いたします。そのうえで、今後の修士論文の執筆に向けての構想(仮)についても意見の交換ができれば、と考えております、よろしくお願いいたします。

3.発表者:池田さん

タイトル:「ニュージーランド・マオリの音楽」

 このたび、ニュージーランドから帰国し、菅原研に復帰することとなったM2の池田です。今回の調査によって得られた成果を大雑把に見ていきたいと思っています。まとめきれず、雑な発表になるかもしれませんが、多くの意見やアドバイスがいただければいいと思っているので、よろしくお願いします。


1018()田中ゼミ

発表者 橋本さん

調査報告要旨

私は今夏、新潟県の十日町市津南町で開催された現代アートの国際展、越後妻有アートトリエンナーレ(大地の芸術祭)にボランティアスタッフとして、会期前の作品制作段階から会期終了後の作品撤去までみっちりと働いてきました。その経験をもとにアート、観光、地域振興、ボランティアといった問題をこれから考えていこうと思っています。


*水曜田中ゼミ文献購読

日時:毎週水曜 15:00
場所:人文科学研究所212教室

1011日無し(合同ゼミ)
10
18日 越智さんか束さん
10
25日休講
11
1日 河西さん World Englishes by Rakesh M. Bhatt 2001
11
8日 武田さん Weber and Anthropology by Charles F. Keyes 2002
11
15日無し(合同ゼミ) 
11
22日 李さん
11
29M2修論構想発表会
12
6日無し(合同ゼミ)
12
13日 小池さん(126日にあたるかも知れない)
12
20日 福西さん

*金曜合同ゼミ

日時:月1回金曜日 1330〜 
場所:総合人間学部棟1207教室

11/17 坂崎・福西・河西
12/22 是枝・徐・池田瑞恵


1213日(水)

福西発表「修士論文の先行研究」

本発表では、修士論文「博物館における軍隊の記憶と展示ー大和ミュージアムを事例にー」の先行研究を紹介し、そこから修士論文においてどのようなことが可能かを考えたい

橋本発表「修士論文の構想について」


2007年度
 
427() 1445分 総人1207教室 比嘉
523() 河西、小池、(未定) * 5月のみ水曜日に変更
622() 田村、坂崎、山野
7月 未定

田中ゼミ
427() 
■発表者:比嘉夏子
■タイトル:「トンガ王国の一村落に生きる人びとの経済的実践と相互行為」
■要旨:本発表では、贈与、交換、売買といったさまざまな経済活動の場においてなされる相互行為や個々の実践に焦点をあてる。モノをめぐって関わりあいながら、人は期待や羨望、見栄や恥といった諸々の感情をも交錯させている。モノのやりとりが単に経済的利益や損失をもたらすにとどまらず、コミュニティにおける人びとの社会関係や生活規範を維持/創出していくさまを描きたい。それはまた贈与・交換を切り口として「全体的社会事実」[モース1973]を記述する企てでもある。主として前回トンガの調査で得られたデータを用い、村落内でなされる相互扶助や贈答などを考察していく。

田中ゼミ
日時:59() 15から
場所:人文研212
■発表者:福西加代子
■発表要旨:The anthropology of globalization10Jonathan 
FriedmanGlobalization and Localizationの要約をします。 

田中ゼミ

日時:516() 15から

場所:人文研212

■発表者:山野香織

■発表要旨:The anthropology of globalization7

Roger RouseMexican Migration and the Social Space of Postmodernismの要約をします。


菅原・田中合同ゼミ
日時:523日(水)1445
場所:人・環B23B
■発表者:河西瑛里子 1445〜  
■タイトル:「スピリチュアルな日常を生きる−英国グラストンベリーにおけるヒーリング実践と女神運動を事例に」
■要旨:
イギリスにおける新しい宗教実践、スピリチュアリティとはどのようなものなのか、イギリスのグラストンベリーに集まる人々の日常生活に注目しながら、みていきます。スピリチュアリティという言葉がさすものについて、人々の日常会話から分析しました。そのあとで、ヒーリング実践と女神運動をスピリチュアルな活動の事例として検討していきます。
■発表者:神本秀爾 1545〜 
■タイトル:「ラスタファリ運動のグローバル化とジャマイカのラスタ−生業の変化を中心に−」
■要旨:
今回の発表は「宗教と社会」学会での発表(6月9日@駒沢大学)の予行演習です。1930年代にジャマイカで出現した宗教社会運動、ラスタファリ運動はジャマイカ移民・ラスタの歌うレゲエの流行を契機としてグローバル化していった。ヨーロッパ、アフリカ大陸、(日本?)でもいまやラスタファリ運動はその地に合わせて独自の展開を示している。従来のラスタファリ運動研究のなかで、ラスタファリ運動のグローバル化は、「均質的なジャマイカのラスタファリアニズムが、世界各地で変容し展開していく」という視点が一般的であり、越境先のラスタファリ運動とジャマイカのラスタファリ運動・ラスタ(信者)との相互作用が見落とされていた。本発表では、ジャマイカのラスタ集団内部での多「人種」化・多国籍化状況を確認したうえで、彼らの生業が徐々にグローバルなものへとシフトしていく様を明らかにする。 
調査対象の「エチオピア・アフリカ国際会議派」(以下、会議派)は複数の有名ラスタ・アーティストを抱える、ジャマイカでは有数のラスタファリ集団である。会議派は1994年に創設者であるプリンス・エマニュエルが死亡するまでは、宗教的・経済的にも比較的「閉じた」集団を形成していた。ところが、彼の死の前後より状況は一変する。そして、会議派に所属する/を表明するレゲエ・アーティストの世界的活躍にともない、会議派ラスタファリアニズム自体のグローバル化も進んだ。複数のレゲエ.アーティストたちはいまや信者たちに労働の機会を提供するものでもあり、本部運営資金の援助者でもある。 グローバル化の結果、信者たちの生活の中心であった本部(bobo shanty)が世界に「開かれた」が、「修行・儀礼の中心」としての機能は残しているものの「労働の中心」ではなくなっていき、信者たちの「個人志向」を推し進めることになった。会議派のなかで信者がばらばらになっていった最大の要因はエマニュエルの死亡であることには間違いないが、信者たちも「生きていかなければならない」。本発表では経済活動を中心に彼らの「葛藤」についてお話しできればと思います。
■発表者:小池郁子 1700〜 
■タイトル:「アフリカの神々を崇拝するアフリカ系アメリカ人の社会運動の再編 ―集合的活動拠点と個人崇拝組織とのつながり―」 
■要旨:
本発表は、西アフリカ・ヨルバの神々を崇拝することを核に形成されているアフリカ系アメリカ人の社会運動をとりあげる。そして、彼らの集合的活動拠点と、成員が個別に設立した個人崇拝組織との関係から社会運動がどのように再編されているのかを考察する。 
■発表者:田村うらら 1800〜 
■タイトル:「駆落ちか家族の承認かートルコ絨毯生産地の婚姻とモノの相関ー」
■要旨:
本発表では、トルコ南西部ミラス地方の絨毯伝統的生産地における、絨毯をはじめとする持参財の変容に対する分析を通して、モノの存在のしかたが社会関係といかに連動しているかについて、考察する。人類学は、かつての博物学的物質文化研究から離れ、象徴論を経て、新たに物質文化研究に接近しつつある(内堀、1997)。その意義は多元的であるが、ひとつには、どんな僻地の人々さえももはや不可避となったグローバル化と、それと同時に進行するローカル化の波を何よりも目に見える形で捉えるアプローチという意義があると考える。発表では第一に、絨毯生産を軸とした社会関係の様相を明らかにする。すなわち、絨毯を通して村の社会生活を成立させ、絨毯を通して外界と連接している織り手たちの生産活動の様子を提示する。第二に、絨毯の、持参財としての側面に着目する。そして、絨毯生産者としての女性の立場と婚姻との関係について検討する。当地において、結婚に至るプロセスの各段階は、双方の親族の承認と共に進められるべきという規範が存在する。駆落ち(逃走婚)は、その「正式な」結婚手順の破綻ともいうべき手段でありながら、調査地では、過去から現在に至るまで頻発している。娘への制裁措置も比較的寛容であり、一定期間の絶縁や娘の親が持参財を譲渡しないことで済まされている。当地で駆落ちが絶えないことの通時的背景として、女性が、換金可能性をもつ絨毯の生産技術に習熟していることを指摘できる。持参財なしに駆落ちしてきた娘を受入れる婚家は、一時的に経済的負担増大を強いられるものの、すぐに織り手として生計の一助になりうることから、このなし崩し的婚姻も許容されやすい。
ただし他方で、消費文化への包摂と、現金収入の増加にともなう「持参財のインフレーション」ともいうべき現象は、娘が一切の持参財を断念して家族の意思に反する駆落ちに向かうことの抑止力にもなっている。ここに当地にとって絨毯のもつ両義性が浮かび上がる。かくして調査地の未婚女性たちは、駆落ちするという選択肢を常に確保しつつ、機が熟すのを待つのである。

田中ゼミ
日時:530() 15
場所:人文研212
■発表者:山本達也
■発表内容:The anthropology of globalization13章。 Vincanne Adams Suffering the Winds of Lhasa: Politicized Bodies, Human Rights, Cultural of Lhasa: Politicized Bodies, Human Rights, Cultural Difference, and Humanism in Tibetの要約です。

田中ゼミ
日時:613日(水)3:00
場所:人文研212
■発表者:梅本響子
■発表論文:The Marriage of Feminism and Islamism in Egypt: Selective Repudiation as a Dynamic of Postcolonial Cultural Politics Lila Abu-Lughod 



菅原・田中合同ゼミ
日時 720日(金)1330
場所 総人棟1207
■発表者@:山本達也
■タイトル:「難民社会の舞踊集団について博論を書く−北インド・ダラムサラのチベット難民舞踊集団TIPAを事例に」  
■要旨:
 今回は、博士論文へのとっかかりとして発表させていただきます。私がこれまで研 究させてもらっているチベット難民舞台芸術集団TIPAとのお付き合いももう5年以上になりました。その間に、まるで観光客状態で上演を見ていたり、TIPAの練習生としてはじめてTIPAとの共同生活を送ったり、いつの間にかものを教える立場になっていたり、さらにいつの間にかTIPAの一員として舞台に上がっていたり、と自分の立ち位置も大きく変わってきました。その間にみたいろんな事柄を最近ようやく整理し思考できる心境になってきました。私がこの5年間での出来事を博論を書く際にこれだけはなんとしてもやる必要がある、と考えているものは、そこで演じられているものと文脈の関係で作られる演目そのものに伴う多層性を失わずに書き、表演のみを分析し、扱ってわかった気になるような能天気なものとしない、つまり、彼らが演じることの困難さを描く、ということです。今回は、これまで私がしてきた議論や事例を提示することで、その整理や思考を皆さんに共体験してもらえるような、遡行的なものにしたいと思います。中途半端に体系的になってしまっているとは思いますが、皆さんからのコメントを糧にそれを違った形でテクスト記述の際「再演」できたら、と思います。
■発表者A:是枝邦洋
■タイトル:「守るために殺す」というかかわり―ニホンザル雑種化問題にみる人間と動物
■要旨:
 これまでの調査では、おもに駆除事業者や研究者の矛盾をはらんだ心情に焦点をあててきました。本発表では、駆除事業の現場で起きたことや、DNA判定を行っている研究者へのインタビュー資料に基づいて、生態系という生態学的概念が、駆除を担うひと
びとの行動や思考のなかにどのように反映されているのかについて考察したいと
思います。
■発表者B:越智香予
■タイトル:「売春婦にむけられるまなざしをめぐってー三重県W島地域住民と売春婦の多層的な関係からー」
■要旨: 
 売春婦にはなぜ逸脱した「他者」というまなざしが向けられているのか。また、非売春女性と売春女性を果てしなく隔てているかのような「亀裂」はどのように生じているのか。そして、その分断を問いなおしにくくさせているものは自分自身のどのような認識か。本研究はこのような問題意識を出発点にしている。発表者は、江戸時代から売買春を主な生業とし続けている三重県W島に視座を据えてきた。この小さな離島は、ときに島外から「男の楽園」・「売春秘島」と名指されながらも、今日まで売買春産業を維持し続けている。その形態や売春に携わる女性・顧客などの諸相は時代によって流動的であるようだが、売春女性が地域住民(島民)とともに、島内に居住している点では今も変わらない。断続的な実地調査を経て、発表者が現段階で最も注目しているのは売春婦と地域住民の多層的なかかわりについてである。今回の発表では、まず1990年代以降にさまざまな立場から交わされた売買春の是非論や善悪還元論、またそれらを批判することで展開したセックス・ワーカーの人権を求める主張などを整理し、そこに通底する固定された枠組みや前提を検討する。続いて、200611月末〜3月半ばにかけて行ったフィールドワークの報告を兼ね、収集した一部の地域住民の語りから、彼らがどのように売春婦を受け入れ、共に生き、またときには反発してきたのかということを考えていきたい。みなさんの意見をいただき、今月末に再開する調査の指針としたいと考えております。よろしくお願いいたします。

10/17の田中ゼミ

日時:1017 1:003:00
場所:人文研212

■発表者:朴さん
■発表論文:Beyond "Culture": Space, Identity, and the Politics of Diffrence (前回の続き)


菅原・田中ゼミ 

日時:1026日(金)1330
☆場所:総合人間学部棟1207教室

☆発表者:橋本博人

 タイトル:都市と農村のあいだ

☆発表趣旨:私は昨年開催された第三回 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2006にサポートスタッフとして参加しました。観光や地域おこしといった側面からこのイベントを考えてみたいと思います。今回は聴講していただくみなさまにこのイベントのことを理解していただけるように、自信はありませんができるかぎりコンパクトながらも論旨を明快にしていこうとかんがえております。それではよろしくおねがいたします。

  

☆発表者:古阪馨

☆テーマ:日本/日本語での「あそぶこと」の人類学/哲学のために
フィールドワークという人類学的実践は、他者理解や自己理解そして解釈学的な地平融合へとひらかれている。しかし、自己の立つ地平への真摯な反省を欠いては、その実践が浅薄な気付きやモノローグにとどまってしまう可能性を否定しえないだろう。そして「あそぶ」というテーマはそのような危険性を孕んだ問題系である。「一緒にあそぼう」―そのように声を掛けられたとき、あなたは何をイメージするだろうか。そもそも「あそぶ」とは何であろうか。「サッカーをする」という表現の自明性に対して、前者の抽象さと喚起するイメージの多様さは際立っている。本発表は日本語における「あそぶ」ことの持つ意味の射程の考究と大まかな先行研究の提示とを試みる。それにより来たるべきフィールドワークへの示唆を得、アドバイスをいただくことを目的としたい。


田中ゼミ

日時:1031日 1500

場所:人文研212(いつもの部屋)

発表者:池田
発表論文:Freeing South Africa: The "Modernization" of Male-Male Sexuality on Soweto
 


菅原・田中合同ゼミ
日時:11211330

場所:人文研401(いつもとは違う部屋)
☆発表者☆:坂崎広志

★タイトル:会話データの分析事例呈示と考察
★要旨:「会話分析は、精神障害者といったコミュニケーションの困難を抱える人たちを対象としたとき、どのような分析が可能であるのか」私は、会話を一つの情報源として見るときの限界と、会話による現実理解の可能性について考えていくことを大きな目的として修士論文を書き進めていきたいと考えています。
 今回の発表では具体的には、精神障害者のグループホーム施設における調査で得られた会話断片を用いて、施設のスタッフとメンバー(慢性統合失調症患者)の間で、どのような会話のやりとりが行われているのかを詳細に分析していきます。
 「妄想を聞き流す」「放逸的な会話を終わらせる」などといった一般的に”逸脱”していると思われる語りにスタッフや私が直面する場面を出していきたいと思います。
その際に重要視するのは、
・メンバー側に「特有の会話における戦略」が見られるのか
・スタッフとメンバーの日々の会話はどのような構造を持つのか
といった、会話と言った観点に立脚した分析です。
 その後、論文全体に繋げるための議論を呈示します。
 時間があればいくつかの断片をビデオで流したいと考えておりますので、機材の準備の協力をお願いいたします。
 

☆発表者☆:中谷和人 

★タイトル: 障害をもつ人びとの「芸術/アート」はいかに語りうるのか―授産施設における創作の現場から

★要旨:本研究の主眼は二つある。一つは障害をもつ人びとの創作活動に「芸術/アート」の権力性がいかに現れるかということ、もう一つはその活動が障害をもつ人びと自身にとって、またその生活のなかでいかなる意味を帯びているかということである。二つのフィールドで得た事例を通して論じることで、障害をもつ人びとの「芸術/アート」の語りがたさ、またそれがいかに語りうるかを探っていきたい。

 ☆発表者☆:山野香織 

★タイトル:プロテスタント化と酒の社会空間―エチオピア西南部コンタ地域の事例―

 ★要旨:コンタのある集落では、アルコール飲料を禁じるプロテスタントの浸透に伴い、「脱アルコール化」という現象が起こりつつあった。しかし、昔からつづくお酒を飲むという習慣はいまだ残っており、それはプロテスタントに改宗した人びとによっても維持されている。本論では、このような背景において、酒が社会や人びとにとってどのような機能を果たしているのかということを明らかにしたい。今回は、10月に行った調査のまとめを中心に発表する。 


11月、12月のM論ゼミ、菅原・田中ゼミの日程

 

11/30() 13:30〜 M論ゼミ     (総合人間学部棟1207)

12/21() 13:30〜 菅原・田中ゼミ (総合人間学部棟1207) −>打ち上げ


26日(水)
13:00-15:00 南出和余、七五三泰輔
場所:京都大学吉田キャンパス本部構内 工学部5号館 102号室(セミナー室2

2008年度
 

田中・菅原合同ゼミ

416日(水)
時間:1430分〜
場所:人文研新館(工学部5号館)331
■発表者:徐玉子
■タイトル:「ホーム」、女性にとってホームとは何か
■要旨:
今回の発表では20082月から3月にかけてのフィリピンでの調査報告を行いたいと思います。今まではフィリピン人女性たちの海外出稼ぎ先である韓国の基地村で調査を続けていたのですが、今回初めて本国フィリピンを訪ねました。韓国の基地村のクラブから逃げ出し本国に戻った女性の家にホームステイをしながら出会った人々、交わした言葉などの綴りになるかと思います。まずは、フィリピンの海外労働者送出し政策やその背景などをまとめて紹介し、次に海外出稼ぎをめぐって浮上する社会問題に触れたいと思います。その上、フィリピンでのインタビューや生活から収集されたデータに照らし合わせながら、女性(海外出稼ぎ労働者)にとってホームはいかなるものであるかを考えてみたいと思います。


菅原・田中合同ゼミ

711日(金)

時間:1430分〜

場所:総合人間学部1207

発表者1:冨谷周 「ミクロネシア連邦・ポーンペイ島の移住現象の人類学的考察(本調査前報告)」

発表者2:渡辺文 「造形芸術における「スタイル」とはなにか?――アルフレッド・ジェルの「スタイルと文化」( Ar and Agency8章)から考える

■要旨: これまで発表者は、調査対象の制作する絵画作品を@モチーフおよびテーマ、Aスタイル、に分けて画像分析をおこなった。その結果前者においては共有が志向されるのに対し、後者においては差異化が志向されていることを明らかにした。今回の発表では以上のデータを分析するための下準備として、造形芸術(とりわけ絵画)における「スタイル」をどのような分析概念として扱っていけばよいのかを考えてみたい。具体的には、視覚芸術におけるスタイルと集団形成との関連を論じたアルフレッド・ジェルの議論を紹介し、最後に簡単な考察を加えていく。


菅原・田中合同ゼミ

117日(金)

時間:1330分〜 
場所:総合人間学部棟1207教室
■発表者:東城義則 (西山研M2)
■タイトル:「奈良のシカ」をめぐる保護の実践とその自然観(仮)―野生動物保護の様態をめぐるポリティクス―
■要旨:「奈良のシカ」を事例とした野生動物保護の実践について整理する。一般に野生動物保護という行為自体は抽象的であり、「保護」や「野生」という概念に再帰性を与えるためにも具体的な考察が不可欠である。そこで「奈良のシカ」の保護活動について現状の整理を行い、シカの保護活動によって創出される自然観や保護活動が「愛護」「保護管理」といった概念とどのように癒着しているのかをまとめる。加えて保護活動から排除されるシカとの関係の様態についても検討してみたい。



田中ゼミ

1119日(水)

時間:15時〜

場所:人文研102(いつもの場所)

発表者:松嶋健

タイトル:「情動」という方法について

要旨:
われわれが生きていくなかで、意識が捉えている現実の過程はごく一部であり、ほとんどの部分は意識に上ることはないというのは、今や「ひと」のあり方に関する知見の前提となっている。そこで意識からはこぼれ落ちる膨大な潜在的認知過程(「無意識」と呼んでもよい)には、ひとまず「言語に関わる無意識」と「身体に関わる無意識」があると言っていいだろう。G・ドゥヴルーが示唆したように、身体をもった生身の人間を直接観察する行動科学においては、観察者の身体の現前はそれ自体、方法論化されなければならないが、情動(感情)はその一つの手掛かりである。情動は身体的なものでありながら、言語ひいては社会システムとの間をつなぐ蝶番の位置を占めるという意味で重要であり、とりわけ精神病者の治療空間においては、情動の回路こそがすべての鍵を握ると言っても過言ではない。今回の発表では、イタリア中部ウンブリア州での精神病者との「演劇ラボラトリー」の経験のなかから、言語でありかつ身体でもある<声>に注目しながら、情動の次元について考えることにしたい


田中ゼミ
2月18日(水)
時間:15時30分〜17時30分頃
場所:人文研新館(工学部5号館)部屋は未定(決まり次第ご連絡いたします)
発表者:田中雅一先生
タイトル:「ライフ・ストーリーから<エス>のグラフィーへ―ーセックスワーカーとの対話から」

2009年度
 
田中ゼミ
日時:414(火)15
場所:人文研新館(工学部5号館)102
発表者:高橋景子
タイトル:下着に関するインタビュー中間報告
要旨:
本発表では、修士論文に向けて行っている下着に関する女性たちへのインタビューを紹介する。インタビュー内容を踏まえ、現在作成中の官能小説データベースの提示、分析を行う。

菅原・田中合同ゼミ
日時:424日(金)1445
場所:総合人間学部棟1207教室
発表者:山野香織
タイトル:エチオピア系アメリカ人の新たな自己表象とネットワークの構築―ワシントンD.C.におけるエチオピアの飲食をめぐる人々の相互行為から―
要旨:
本研究の目的は、アメリカ合衆国で比較的新しい移民集団とされるアフリカ系移民のなかでも、とくにエチオピア系アメリカ人に注目し、彼らの新たな自己表象とネットワークの構築について検討することである。
ここでは、とりわけエチオピア料理店が多いとされるワシントンD.C.を中心に、エチオピアの食をめぐる人々の相互行為に焦点を当てる。今回の報告では、博士論文での研究計画および調査内容を明確にしたうえで、いくつかの先行研究をとりあげながら、200811月から12月にわたる約3週間の予備調査で得た基本的データを提示する。

菅原・田中合同ゼミ
日時:515日(金)13
文化人類学会の予行演習、後半が比嘉さんの発表となっております
場所:総合人間学部棟1207教室
 
<文化人類学会予行演習> 発表15分 質疑応答10
13001325
発表者:中谷和人「『アール・ブリュット/アウトサイダー・アート』をこえて―現代日本における障害のある人びとの芸術活動から―」
13251350
発表者:梶丸岳「歌掛けは観光化できるか―山歌の場をめぐって」
13501415
発表者:福西加代子「軍事力の展示―日本の航空ショーを事例として」
要旨:
本発表では、日本国内でおこなわれる、自衛隊基地及び在日米軍基地における航空ショーを通して、敗戦という歴史的背景を持つ日本が、どのように軍事力を展示しているのかについて報告する。毎年、日本国内の各地の自衛隊基地や在日米軍基地で毎年多くの航空ショーがおこなわれている。今回は2008年に発表者が調査をおこなった、岩国米軍基地、嘉手納米軍基地、横田米軍基地、三沢航空自衛隊基地、入間航空自衛隊基地、那覇航空自衛隊基地を中心に見ていく。航空祭は基地開放デーとして一般に開かれ、地域住民をはじめ遠方からやってくるたくさんの人々でにぎわう。戦争を前提として存在する軍隊を、日本国内においてどのように展示しているのかを、航空ショーを中心に、軍事力の展示と一般市民との関係を明らかにしていきたい。
14151440
発表者:松嶋健「身体と制度のキアスム」
 
<通常の発表>
1500
発表者:比嘉夏子「贈与・交換の「場」における立ち振る舞いートンガ社会の寄付行為にみる個人の戦略と共同性」



田中ゼミ
6月からは『Material Culture : Critical Concepts in the Social ScienceVictor Buchli(編)の各論文を読んでいきます。
 
62日(火)
発表者:飯塚
担当箇所:C. A. BAYLY 24 The origins of swadeshi(home industry) : cloth and Indian society, 1700-1930
 
69日(火)
発表者:中屋敷
担当箇所:R. W. BELK 41 Collecting in a consumer society : a critical analysis
発表者:北川
担当箇所:ALFRED GELL 52 Vogel's net : traps as artworks and artworks as traps
 
616日(火)
発表者:光保
担当箇所:B. BENDER  42 Contested landscapes : medieval to present day
発表者:佃
担当箇所:ADRIAN FORTY 50 Introduction to The Art of Forgetting
 
623日(火)
発表者:秦
担当箇所:MICHAEL ROWLANDS 65 The role of memory in the transmission of culture
発表者:芦田
担当箇所:JAMES G. CARRIER 44 The rituals of Christmas giving
 
630日(火)
発表者:高橋
担当箇所:IGOR KOPYTOFF 31 The cultural biography of things : commoditization as process
発表者:武田
担当箇所:SUSANNE KUCHLER 32 Malangan : objects, sacrifice and the production of memory



菅原・田中合同ゼミ
時間:612日(金) 1330
場所:総合人間学部棟1207教室
発表者:中屋敷千尋
タイトル:「宗教実践の研究:インド・アルナーチャル・プラデーシュ州におけるチベット仏教信者を対象に」 
要旨:
 研究概要(はっきり決まっていませんが、尼僧の研究をするかもしれません)研究しようと思うに至った経緯、卒業論文で行ったこと、先行研究の文献リスト、文献紹介(チベット仏教に関連する著書を一冊レヴューします)という内容で発表を行う予定です。
発表者:清野未恵子
タイトル:霊長類の食場面における狩猟と採集のはざま〜ニホンザルとチンパンジーの隠れた虫捕食行動の事例から〜
要旨:
 賭けを“運を天にまかせて思い切ってする勝負や行動(「広辞苑」)”とすると、サルの世界に運とか天といった概念があるという証拠がないので“賭け”というコトバを彼らの行動にあてはめるのは間違いかもしれない。事実、安定志向の研究者の目には彼らの行動が“賭け”として映ることはないようで、サルの食行動は“結果的にどれだけの利益が得られるかをみこして行われている”と解釈されている。だが、一瞬一瞬を生きるサルの世界は“賭け”に満ち溢れているように私にはみえる。それは私がサルの昆虫を捕る場面にこだわって観察を続けていたことが影響しているのかもしれない。たとえば、目の前の木になっている果実を手にとるときと逃げ隠れする昆虫を手にとるときと比較すると、相手(昆虫)が動くものである場合では、それを見つけるだけでなくちゃんと手でつかんで口まで運べるかどうかというところまでハラハラして観察している私がいた。実際に、せっかく見つけても逃げられてしまうことがあった。であるにも関わらず、昆虫を食べ物として選ぶという選択を少なくとも何世代にもわたって続けられていることから、サルが、昆虫側の性質のもたらす“賭け性”も含めて昆虫と付き合っているのではないかと考えている。さらに、サルは単独でなく群れで行動する動物であることをふまえると、他個体からとられないかどうか、群の遊動からはぐれないかどうか、という社会的な側面が生み出す“賭け性”も含めて、昆虫捕りを続けているようである。そういった観点でサルの昆虫捕獲行動をみてみると、サルの昆虫捕りは採集でも狩猟でもない性質を帯びているように思えてならない。今回は、サルの昆虫捕り映像も含めてサルの昆虫食における賭け性についてご紹介し、採集と狩猟のはざまとは何かを考察してみたい。



田中ゼミ
日時:62日(火)15
場所:人文研新館(工学部5号館)102
■発表者:飯塚
■担当箇所:C. A. BAYLY 24 The origins of swadeshi(home industry) : cloth and Indian society, 1700-1930



田中ゼミ
日時:616日(火)15
場所:人文研新館(工学部5号館)102
■発表者:北川
■担当箇所:ALFRED GELL 52 Vogel's net : traps as artworks and artworks as traps
■発表者:光保
■担当箇所:B. BENDER  42 Contested landscapes : medieval to present day



田中ゼミ
日時:623日(火)15
場所:人文研新館(工学部5号館)102
■発表者:佃麻美
■担当箇所:CONSTANCE CLASSEN 「47 Sweet colors, fragrant songs : Sensory models of the Andes and the Amazon
■発表者:秦玲子
■担当箇所:MICHAEL ROWLANDS 65 The role of memory in the transmission of culture



田中ゼミ
日時:77日(火)15
場所:人文研新館(工学部5号館)102
■発表者:芦田
■担当箇所:JAMES G. CARRIER 44 The rituals of Christmas giving
■発表者:高橋
■担当箇所:IGOR KOPYTOFF 31 The cultural biography of things : commoditization as process



菅原・田中合同ゼミ
日時:710日(金) 1330
場所:総合人間学部棟1207教室
■発表者:井家晴子
■タイトル:モロッコ、シュルーフ社会における出産の想起と実践
■要旨:
モロッコ王国では、高い妊産婦死亡率を背景として、政府が住民たちに対し積極的にハイリスク妊娠・出産の兆候を指導し、症状にあてはまる妊産婦にはすぐに医療施設へ来るよう呼びかけている。これに対し、農村部においては、どのような状態の妊婦であれ自宅での分娩を好むものが依然として多い。しかし、人々は出産に無関心なのではない。むしろ、日常的に自分の見聞きした出産の異常事態について想起し語り合っている。そこで、本発表では、出産の場での人々の語りに焦点をあて、人々がどのように想起しながら、出産の実践が行われているのか考察する。人々の判断や実践は、単なる伝統的な行為でも、医療知識の適用や制度の要請への服従でもない、きわめて複雑で多面的な様相を持っている。そこには、近代医療の知識や技術、個別の経験や出産の事例、日常的な身体の感覚などが、結び付けられている。最後に、このような住民たちの知のあり方と、近代医療の知のあり方がいかに異なり交錯しているか分析をすすめる。
■発表者:生方友理恵
■文献紹介:『マタギを追う旅―ブナ林の狩りと生活』
■要旨:
現在、卒業論文の主題として、「現代日本の狩猟」について取り扱おうと考えています。今回の発表では、それに関連し以下の文献を紹介する予定です。
『マタギを追う旅―ブナ林の狩りと生活』田口洋美 1999 慶友社

本書は、以下の3箇所における、狩猟に関する聞き書きと参与観察によって構成される。新潟県岩船郡朝日村三面 1981年秋〜 信濃秋山郷 1984年冬〜 秋田県阿仁マタギ 1986年春〜伝承の世界の狩猟ではない、現代に繋がる生きた職業猟師の様子を記した資料である。

■発表者:松浦哲郎
■タイトル:「コミュニティメディアの人類学的考察」へ向けて
■発表主旨:
コミュニティメディアの実践と研究に関わってきた。そして、いわゆるメディア・スタディーズにおけるコミュニティメディア研究に不足感を感じてきた。日常的実践への深い眼差しや、現場での長期参与観察から紡ぎ出される理論を、これまでのコミュニティメディア研究に見ることはほぼなかった。机上における理論と、現場への短時間の訪問あるいは見学によって得たデータを切り貼りして「編集」された論文が実に多い。自省の意味も込めて、自身の修論では「コミュニティメディアの人類学的考察」に取り組みたいと思っている。本発表では、コミュニティメディアの実践と研究を発表者から紹介した後、参加者の皆さんから、どのような人類学的アプローチや理論を軸とし、どのようなテーマに絞って研究を進めていくのが面白いのか、様々な可能性を含めて助言をいただければと思っている。



田中ゼミ
日時:1020日(火)15
場所:人文研新館(工学部5号館)102 
■発表者:武田龍樹
■タイトル:
「現代カンボジアにおける仏教篤信家たち ―ポルポト時代以後の東部村落部を事例に―」
■要旨:
 本発表は修士論文を修正したもので、論文投稿や来月のカンボジア研究会に備えたものです。
 カンボジアでは1975年から79年までのクメール・ルージュの支配下において、寺院の破壊、僧侶の強制還俗や処刑、あらゆる宗教活動の禁止がおこなわれ、仏教は一時的に消滅した。しかしその後、特に90年代以降、仏教の復興を含め様々な宗教実践が活性化しているとされる。Marstonは、こうした動向を社会主義から自由主義経済への移行にともなう経済的や政治的要因、社会的要因によるという重要な指摘をしている[Marston 2004; 2008a; 2008b]のだが、そこにはローカ
ルな人々の実際の姿はほとんど提示されていない。
 本発表ではローカルな人々の仏教復興の一端を明らかにするため、在俗の篤信家たちをとりあげたい。ポルポト時代以前の研究では、篤信家たちは僧侶をサポートする役割をもち、多くの時間を共にすることによって同世代の人々との友情を育む、その一方で熱心な信仰や伝統的な知識・経験をもっていたことにより若者や共同体から尊敬をうけるとされ、その宗教的役割の重要性が論じられてきた。現在までの彼らの仏教実践はポルポト時代や内戦という社会的混乱や分裂を乗り越えようとするものだったが、同時にそうした社会的混乱によって、先行研究の中で示されているような非常に調和した人々の関係を想定することはできないだろう。僧侶や若者との関係、篤信家同士の関係を検討することで、ポルポト時代以後に篤信家たちがどのような集団を形成してきたのかを考察したい。



田中ゼミ
日時:1027日(火)15から(申し訳ありませんが16時に変更になるかもしれません)
場所:人文研新館(工学部5号館)102 
■発表者:後藤圭孝
■タイトル:「耳の聞こえない(づらい)こどもに対する人工内耳技術の人類学的研究」
キーワード:先端技術、生命倫理、障害、言語、ろう文化、教育制度
■要旨:本発表の目的は3つある。
 ひとつは人工内耳手術/技術の現況、問題点の整理をすることである。特に幼児期の人工内耳に関する議論を紹介する。
 ふたつめにこれまでの調査状況とこれからの調査状況の提示を行う。現在ボランティアをしている調査地の内部状況が明らかとなり、そこから調査が難しいということが最近になって判明した。その具体的な内容はろう教育界の現況をあらわしているためにここで発表することにする。また夏休みとこれからの取り組みを示す。  
 みっつめはこれまでの調査で得たデータ、資料の提示である。データではインタビューや観察された内容を示す。資料にはメーカーの人工内耳紹介DVDや内耳のシミュレーション音などがある。これを用いてフロアが先端技術の世界を体験・理解できるようにしていきたい。



田中ゼミ

日時:1117日(火)15時から

場所:人文研新館(工学部5号館)102

【発表者】:朴眞煥

【タイトル】:「徴兵拒否運動に携わる人々の日常と運動の関係」

【内容】

 韓国ソウルで行った調査(期間:20093月末〜10月上旬)を基に、そこで得た事例を紹介する。

 昨年(20088月〜9月)行った調査では、「国軍創設60周年記念、国軍の日、軍事パレード」に反対する行動めぐり、二つの徴兵拒否運動団体に見られた葛藤の事例から、「徴兵拒否運動」についての認識の差が生じていることを明らかにし、この認識の差による排除、他者化の過程が「徴兵拒否運動」をいかに構築していくのか、その過程について考察した。

 今回の調査では、昨年の出来事が徴兵拒否運動にいかなる変化をもたらしたのかについて考察する。そして、徴兵拒否運動に携わる人々の日常が、徴兵拒否運動に如何に関係しているのか、「個人」の日常生活に着目し、その関係を明らかにする。




田中ゼミ

日時:1124日(火)15時〜

場所:人文研新館(工学部5号館)102

当日は、以下のテキストとみなさまひとりひとりの調査体験にもとづいて、「調査者被害」について議論ができればと考えております。

【担当者】北川了次・光保謙治・江原等子

【テキスト】『調査されるという迷惑―フィールドに出る前に読んでおく本』(宮本常一&安渓遊地. 2008. みずのわ出版)




田中ゼミ

日時:128日(火)1500

場所:人文研新館(工学部5号館)102

【発表者】福西加代子

【タイトル】『博物館における展示研究 ―平和・戦争・軍隊を展示する―』

【要旨】

 本発表では、まず博物館の成立と人類学における博物館の位置付けや博物館における民族誌展示・表象の系譜を吉田憲司の「文化の発見」を中心にみていく。そして、日本における「平和(戦争)博物館」に関する研究の系譜を「平和博物館研究」に関する文献を通してみていく。そこから、「平和・戦争・軍隊」の展示研究の意味を考えていきたい。




菅原・田中合同ゼミ

時間:1218日(金) 1330

場所:総合人間学部棟1207教室

■発表者@:高垣雅緒

■タイトル:性同一性障害が抱える問題点と今後の課題〜保健研究としての事例報告〜

■要旨

 性同一性障害とは、心と体の性が一致しない状態、多くは幼少時に自覚し生涯に渡って悩まされる“先天的難病”な側面を持った重篤な状態である。そして何よりも自分自身の「生」そのものに困難を抱えており、当事者は「他者から、あるいは社会から理解されない」という以前に「自分自身が何者かが分からない」というきわめて深刻な状態にある。定期的に性同一性障害を抱える人々の自助会に参加し、当事者や家族の意見・悩みなどを聴取した。ここでは特徴的な4つの事例を取り上げ当事者が抱えている問題や苦悩・そこから表出する病態について報告する。当事者の要求をまとめると、@診断と治療のために国内施設の整備充実、A保険適応化、B同性婚の容認と戸籍法の対応、Cメンタルケア、クリニカルパスなどのフォローアップ、D病態解明などであった。

■発表者A:生方友理恵

■タイトル:イノシシ猟と獲物の流通

■要旨

 今回は、イノシシの販売店の調査報告と、文献紹介をいたします。 現在、ほとんどの猟は個人の趣味として行われています。ではその獲物はどのように消費され、狩猟という行為はどのように根付いているのかを考察します。関連して、以下の文献を紹介いたします。「イノシシと人間 共に生きる」高橋春成編




2010年度

 

田中ゼミ

日時:413日(火)15時〜

場所:人文研新館(工学部5号館)102

【発表者】 萩原 卓也

【タイトル】「スポーツとジェンダー ―女子プロレスリングの事例から―」

【要旨】:女子プロレスラーたちが、トレーニング、大会、ファンイベントなどを通して、どのように「女子プロレスラーであること」を維持し、またどのように自分たちの性をマネージし、またそれに「遊んで」いるのか。彼女たちは、「ギャップ」を創出・「利用」することで、自分たちの存在をそこに表現し、生きている。これまでの調査で見えてきたその断片を、ファンの存在、身体との関係(声・痛み)なども交えながら分析したいと思います。まだまだ関心がバラバラなので、みなさんから助言をいただき、固めていきたいと考えております。

【発表者】 中屋敷 千尋

【タイトル】「インド・スピティにおける寺院と社会」(仮)

【要旨】今回は、インド・スピティでの3カ月間のフィールド調査のデータを自分なりにテーマごとにまとめたものの報告を中心に、今後どのような方向性で研究を進めていくのか、そのアイディアを発表したいと思います。まだまだ勉強量や知恵が足りず、どのようにやっていけばいいのか分からない状態なので、ぜひ皆さんのお力をかしてください。


菅原・田中合同ゼミ

日時:423日(金) 1500

場所:総合人間学部棟1207教室

■発表者:黒田さくら

■要旨

2009年度に提出した修士論文を構成順序にしたがって要約したものを発表する。また民族誌の記述法と分析についての反省点と今後の展望を述べる。

・研究目的:米国で最も大きいアフリカン・アメリカンの居住地域であるハーレム地区の現状をふまえ、本論文ではプロテスタント系ペンテコステ派教会に特徴的な礼拝スタイルのなかでも、通常の言語的機能を超えた非言語的、あるいは身体的なパフォーマンスに注目する。その目的は、信徒のパフォーマンスにおける熱狂性の変容過程と、説教やゴスペルなど言語、非言語的な媒体との関係を明らかにすることによって、日常生活と礼拝の双方における信徒のスキーマについて明らかにし、また黒人ペンテコステ派信徒のアイデンティティについて若干の考察を提示することである。

・第一章「ハーレムにおける黒人の生活」では、ハーレム住民の生活におけるニーズを、教会系と非教会系の福祉活動を比較しながら明らかにすることで、日常生活をかいま見る。

・第二章「黒人ペンテコステ派教会の礼拝」では、ペンテコステ派教会の概況を述べたあと、礼拝について、特に説教とゴスペルの唱和に焦点を当てて民族誌として記述したものの一部を事例として挙げる。

・第三章「礼拝における熱狂的パフォーマンス」においては、熱狂的な礼拝をヴィクター・ターナーのコムニタスの概念によって説明する。また熱狂性を帯びたパフォーマンスについては、スタンレー・タンバイアの儀礼分析を参考にして行為遂行的発話、冗長性の概念から分析する。

■発表者:Erika Alpert

■タイトル:「婚活とコミュニケーションの問題」

■要旨

お見合い、仲人へのインタービュー、そして、モテる男性知人へのインタービューのデータからみて、男女関係のコミュニケーション、そして、そのコミュニケーションの目的また、上手な取り方を探ります


田中ゼミ

5月18日

講読(『Anthropology in theory』)

担当:川本(M1)

43「Writing Against Culture


菅原・田中合同ゼミ

時間:521日(金)1500

場所:総合人間学部棟1207教室

■発表者:秦 玲子(田中研M2

■タイトル:「MaoriTattoomokoの断絶と復興」

■要旨 

 発表者は、New Zealand Maroiの伝統的Tattoomokoを研究対象として、予備調査を含めこれまで2度のフィールドワークを行ってきた。

 今回は、文献とフィールドワークの成果を合わせる形で、@20世紀以降のmokoの断絶とその復興をめぐる動き、そしてAその中で社会的な評価がどのように変化してきたのかを整理する。さらに、Bその評価の転換にCarverWoodCarver)が大きな役割を果たしてきたことを指摘する。

■発表者:佃麻美(菅原研M2

■タイトル:「アンデス高地の南米ラクダ科牧畜における変容」

■要旨

 今回の発表では、2/234/23に行ったフィールド調査の報告をする。

 現在、アンデス牧畜は大きな変容を遂げつつある。伝統的な物々交換を行っていたリャマのキャラバンは減り、国際市場におけるアルパカ毛の需要の高まりにより、アルパカの品質改良が進められている。発表者の調査地においても、人工授精などの取り組みが見られた。これらの新しい取り組みと、それとともに変容する人々の暮らしについて発表する。


田中ゼミ(文化人類学会リハーサル)

日時:6415時〜17

場所:吉田泉殿(グループメニューのブリーフケースに添付した地図を参照)

【発表者1】神本秀爾

【タイトル】アフリカン・ディアスポラから「アフリカ人」へ−ラスタファリアン集団の黒人性の経験について−

【要旨】

Murrellは、ポストコロニアル期には、奴隷制を擁護し、キリスト教化されたアフリカ系人口への抑圧を正当化した聖書が、新たなやり方で被抑圧者の解放、自己の定義や主張の道具になったと述べている[Murrell 2006:169-170]1930年にジャマイカではじまったラスタファリ運動は、自らを「真のキリスト教」と呼び、反白人意識や反(白人)キリスト教意識を前面に出している。本発表では、発表者が20057月から調査しているラスタファリアン集団、エチオピア・アフリカ黒人国際会議派(以下、会議派)の事例を通して、従来のラスタファリ運動研究においては自明視されていた「アフリカ人」「黒人」の中身の再検討をおこなう。ジャマイカ首都キングストン郊外に本部を置く会議派では、エチオピア皇帝ハイレ・セラシエを神(God, Jah)、会議派創始者プリンス・エマニュエルをキリストやモーゼの再来として崇拝しており、衣食住を含む独自の規範は「伝統的アフリカ」での生活として聖書によって正当化されている。また、信徒たちは他のラスタファリアン(運動の参加者・信徒同様に)「アフリカ人」と自称している。調査からは次のことが明らかになった。

1、アフリカン・ディアスポラがつくりあげた黒人性が多国籍・多人種のラスタ(信徒)の間で、それ自体が真正性を帯びるものとして受容されていた。

2、会議派で実現されている黒人性は、それは「現前/不在」のアフリカとの関係・社会関係などのなかで絶えず構築され経験されるものであり、必ずしもアフリカ人(アフリカン・ディアスポラ)であることを必要としないものであった。しかし、このように信徒を「黒人」として統一化していく流れがある。一方、肌の色や国籍などを元に排除する流れも存在していた。

本発表で発表者は、ラスタファリ運動における黒人という語の重層的なものであり、多元的である点が、運動のグローバル化・多国籍化・多人種化をうながしたひとつの原動力であることを指摘する。

【発表者2】武田龍樹

【タイトル】「カンボジア村落部の仏教的知識に関する一考察:老人と若者との関係から」

【要旨】

本発表は、カンボジア村落部における仏教的知識の断絶と持続について報告するものである。カンボジアでは、1975年から1979年までのポルポト時代において、仏教の殲滅が試みられ、寺院の破壊、僧侶の強制還俗や処刑、あらゆる宗教活動の禁止がなされたことにより、カンボジアの仏教は一時的に消滅した。続く1980年代の人民革命党政権の下で仏教は復興されたが、その活動には様々な制限が加えられた。そのひとつが50歳以上の元僧侶にしか出家を認めなかったことであり、当時のカンボジア国内にはわずかな僧侶しか存在しなかった。1989年のベトナム軍の撤退とそれ以後の社会主義体制から自由主義経済への移行の中で、出家制限の撤廃をはじめとして政府による宗教活動への制限は徐々に緩和した。1990年代には、かつて破壊された多くの寺院が再建され、出家者である僧侶の人数も増加していく。しかしその一方で、豊富な知識・経験を有した僧侶の不足や経典・寺院の破壊などから、若年の僧侶の知識不足やモラルの欠如が指摘されている。また、1970年代から1980年代にかけてのポルポト時代や内戦によって若者(…中略…)本発表では、老人から若者へ仏教的知識はどのように伝達されているのか、あるいはされていないのかについて検討したい。本発表はカンボジア東部コンポンチャム州村落部の調査にもとづくものである。調査地ではポルポト時代以後にひとりのカリスマ的僧侶が現れ、俗人たちの仏教実践は活発化したのであり、1980年代にはこの僧侶を中心として仏教が復興した。しかし1990年代から、出家制限は撤廃されたものの、カリスマ的な僧侶が去ったことや都市化の影響などから、伝統的慣習としての一時出家はほとんど行われていない。かつて老年男性たちが一時出家によって寺院内で仏教的知識を身につけたのに対し、現在の若者たちはそうした知識を欠いている。

調査地での老人と若者との知識の差あるいは認識のギャップが明瞭に現われるもののひとつに、「病者のための読経」という儀礼がある。この儀礼は重篤の病人を回復させることを目的としてなされ、かつては僧侶と俗人との協働によってなされていたが、1990 年代半ば頃から、若い僧侶の知識不足により、老年男性を中心に俗人だけでおこなわれている。また、近代の医療観念の浸透により、若者たちは老人たちのおこなうこの儀礼に懐疑的でもある。近い将来、この儀礼自体が変容・消滅していくことが推測でき、ここに知識・実践の断絶が見られる。しかしながら、若者自らが病になる、あるいはその親が病になるという生活の危機の中で、仏教的知識が求められ、それを保持する身近な老人が必要とされる場合がある。ここから、寺院という学習の場ではなく俗人の生活の中で、仏教的知識が伝達されたり持続している可能性を指摘することができる。


田中ゼミ

日時:68日(火15時〜

場所:人文研新館(工学部5号館)102

【発表者】李 愛蘭(M1

【内容】:『Anthropology in theory』の講読

 18Customs and Cultures in Animals and Humans


菅原・田中合同ゼミ

日時:6月11日(金)13:30〜

場所:総合人間学部棟1207教室

■発表者1:江原 等子(田中研M2

■タイトル:閾を生きる―南インド・タミルナードゥ州の第 三ジェンダー・アラヴァニの暮らし―

■要旨 

 発表者は今年3月から5月初旬まで南インド・タミルナードゥ州にて最初のフィールド調査を行いました。大都市チェンナイの海岸部のスラムとその周辺で、物乞いや売春を生業とする、いわゆるインド第三ジェンダー(ヒジュラ)の人々の暮らしに触れるとともに、州内外からこのような人々が集結する農村の祭を見てきました。今回はデータ中心の発表になるかとは思いますが、みなさまの忌憚のない意見を伺いたく、よろしくお願いいたします。

■発表者2:松浦 哲郎(菅原研M2

■タイトル: コミュニティメディアの日常実践と課題 −タミル・ナードゥ州(インド)とトロント(カナダ)の 事例から−」

■要旨

 地域に根付き、非営利な活動を行うコミュニティメディアは、大規模化、商業化するメディアが席巻する現代社会において、周縁化された人々を含む多様な声を伝える貴重な回路となっている。その日常実践と課題を探るため、発表者がインドとカナダで行った予備的調査の概略を紹介する。

 滞在期間がごくわずか(インド、2週間/カナダ5日間)なため、大変薄い内容になることを、あらかじめご容赦いただきたい。


田中ゼミ

時間:713日(火)15時〜

場所:人文研新館(工学部5号館)102

【発表者】 神本秀爾

【内容】博士論文の構想


菅原・田中合同ゼミ

時間:723日(金) 1330

場所:総合人間学部棟1207教室

■発表者@:田村うらら

■タイトル:「村から世界へ、世界から村へ―商品としての「真正な」トルコ絨毯と絨毯商たち」

■要旨

 発表者は、トルコ絨緞という緩慢で数世紀におよぶ「グローバル化」を経た民族手工芸品をめぐって、(主に生産地の)人びとが生活世界のなかでローカル/グローバルな論理をともに織りなす実践について博士論文を執筆中である。本発表では、博論全体の構成を大まかに紹介したのち、そのおよそ一章分に相当する、絨毯の流通の部分を取り扱う。トルクメン絨毯の流通に着目したスプーナー【Spooner1986】は、絨毯の消費現象において交渉されているのは、絨毯そのものというより、「真正性」であるという。しかし「真正性」とは、ローカルな文脈においては、ほとんど問題にされることがない。では、絨毯の「真正性」はどの段階で、いかに出現してくるのだろうか。村落部で織られた絨毯が商品として数々の仲介者を経て流通し、消費される過程に注目し、絨毯をとりまく情報や言説とそれらの扱われ方を通して、ローカルな民族工芸品のグローバルな流通過程における多面性を解きほぐしながら提示してゆく。とくに、その価値づけのされかたや「真正性」に連結する事象に注意を払うことにする。

■発表者A:山野香織

■タイトル:「ワシントン首都圏におけるエチオピア系移民の自己表象とディアスポラとしての社会的戦略」(仮)

■要旨

 2009年におこなった予備調査の報告、および9月からの長期調査計画。主にエチオピア系・オロモによるナショナリズム運動を取り上げる。

■発表者B:翟 魯寧

■タイトル: 未定

■要旨:未定


菅原・田中合同ゼミ

日時:1022日 13:30〜

場所:総人棟1207

■発表者1: 秦 玲子

■タイトル「肌に刻む―ニュージーランドマオリのタトゥー、Mokoの復興と実践」

■要旨

発表者は、20106月から10月にかけてニュージーランドでのフィールド調査を行った。その問題意識は、常に@Mokoをはじめとする「伝統」はどのように復興されたのかA彫師たちの実践、社会はどのようなものであるのかB復興と実践から見えるMaoriの人々の自意識に向けられていた。本発表では、調査での成果を踏まえ、修士論文の方向性を示したい。修士論文執筆にむけ、忌憚ないご意見をいただけば幸いです。

■発表者2:森下翔

■タイトル 【主題1: 科学理論の"論理性"―現象学的分析】

■要旨

自然科学を扱う社会科学において、科学理論の論理学的堅牢性が省みられることはなかった。論理学的意味での証明とは『人間の手によって発見されていなかった新たな事実の発見』ではなく、むしろ『他者を完臂無きまでにを説得する手段の発明』であるとする構成主義的な洞察を基盤として、社会科学者達は既製の理論の論理学的堅牢性を、旧来の社会学的な集合表象(ブラックボックス)と同一視する誤謬を冒し続けてきた。今回の発表では、測地学的研究における"重力"という概念の用法を精緻に分析することを通じて、理論と現象とが交錯する自然科学のアクターネットワーク・プロセスの中に、社会的構築物としての科学理論に特有の正当性を付与する『論理学的構造』が現出する様を描き出してみたい。


田中ゼミ

時間:119日(火)15時〜

場所:人文研新館(工学部5号館)102

【発表者】 川本直美(M1)

【内容】文献発表  Stuart Kirschの『Indigenous Movements and the Risks of Cunter globarization: Tracking the Campaign against Papua New Guinea's Ok Tedi Mine


菅原・田中ゼミ

日時:1119日(金)1330

場所:総人棟1207

■発表者1:松浦哲郎

■タイトル:コミュニティメディアの人類学的考察へ向けてートロントの公営住宅団地の事例からー

■要旨:

地域に根付き、非営利な活動を行うコミュニティメディアは、大規模化、商業化するメディアが席巻する現代社会において、周縁化された人々を含む多様な声を伝える貴重な回路となっている。トロントの低所得者向け公営住宅団地(7割が移民家庭)にあるNPOが行うコミュニティメディア活動には、団地内の子どもが多く参加している。発表者は、今年の7月下旬から、1ヶ月半のフィールドワークを行なった。その概略を、事例を中心に報告する。

■発表者2:光保謙治

■タイトル:災害の記憶と自己像の構築・提示

■要旨:

今回の発表では、修士論文全体の構想について報告したい。

発表者は、「災害によって自己像の基盤となる社会から切り離された人びとが、どのように自らの記憶を管理し、新たな自己像を築いていくのかを明らかにする」ことを目的として、東京都三宅村をフィールドとして調査を行ってきた。中でも着目したいのは、

1.現在の島民たちが、どのような自己を構築し、そして提示しているのか

2.島民たちは避難中、自己像の源となる島の記憶をどのように維持してきたか

3."被災地""被災者"という言説に対して、島民はどのように付き合っているのか

3点である。

発表では、これらの点について事例を提示し、現段階の考察について可能な限り論じたい。


田中ゼミ
日時:113015時〜
場所:人文研新館(工学部5号館)102
【発表者】李娜(M1)
【内容】『修論予備調査報告』
 発表者は中国江蘇省の蘇北地区の卜都村(BUDU)において8月に予備調査を行い、経済活動へ参画による女性の自立性の増大に関する調査、記述を行うことで、この地域の女性の就業構造が家庭内の性別役割にどんな影響を与えるかを明らかにしたいです。
 本発表では、今回の予備調査で得られた情報、村の概要や女性労働者の現実などを整理することで、農村社会の就業構造に大きな変化が女性の家庭内の性別役割との関連性をつかもうと考えています。今回村人に関する基礎的な情報と調査中に当面した問題を中心に発表する予定です。浅はかな発表になると思いますが、よろしくお願いいたします。


田中ゼミ
日時:12715時〜
場所:人文研新館(工学部5号館)102
【発表者】 村上慧次郎 
【内容】
文献発表:Robert J. FosterThe Work of the New Economy:Consumers, Brands, and Value Creation



2011年度

 

田中ゼミ

日時:426日(火)15

場所:人文研 セミナー室2

■発表者:福西加代子

■タイトル:「博覧会にみる15年戦争期の戦争展示」

■要旨:

第二次世界大戦における日本の戦争を15年戦争ととらえ、その15年戦争期に国内において戦争がどのように展示されていたのかを考察する。この時期に日本の国内でさまざまなテーマの博覧会が開催されていたが、各地でおこなわれていた地方博覧会の中から、ここでは日中戦争勃発後に兵庫県の阪急西宮スタジアム(現:阪急西宮ガーデンズ)で開催された二つの博覧会である、『支那事変聖戦博覧会』と『大東亜建設博覧会』を取り上げて見ていく。


菅原・田中合同ゼミ
日時:513日(金)、1445開始
場所:総人棟 1207

報告者(五十音順)

■(1)江原等子

■発表題目:名指しの暴力をめぐって――インド・タミル・ナードゥ州チェンナイの第三ジェンダーの人々を事例に――
■発表要旨:
 これまでの、インドにおける第三ジェンダー(ヒジュラ)研究において、この「男でも女でもない」人々を定義する中心的な要素は、自らの男性器を供儀とする去勢儀礼を通過していることであった。発表者が調査を行っているタミル・ナードゥ州チェンナイにおいては、去勢儀礼を経てはいないが、スラムやいわゆるハッテン場周辺などの生活世界において、去勢者たちと一括りに「ポッタイ(メス)」と呼ばれる人々がいる。「コティ」と呼ばれることもあるこの人々は、実際には、去勢者たちと対比した場合、数の上では圧倒的な優位を占めるにも関わらず、タミル社会のマスメディアや福祉政策、そして第三ジェンダー研究においても、まったく無視されるかあるいは去勢者たちの周縁に位置づけられ、かれら特有の生の様式には光が当てられてこなかった。
 コティをしるしづけるのは、曖昧さである。かれらは普段は男装し、売春や乞食など、時に応じて女装する。また、すでに男ではないが、未だ去勢儀礼を経ていないという意味で、移行を生きているとも言える。しかし、このような曖昧さを生きるということは、絶えず生起する「名指し」という暴力に直面し続けるということでもある。この暴力は時に暴行や強姦などの物理的な暴力となって、生活世界に断絶をもたらす。
 本発表では、ハッテン場の周囲に暮らすセックス・ワーカーと、かれらのために活動するNGOのライフヒストリーを事例に、「名指し」の暴力の生起がいかに受容され、生活世界が再編されるのか、あるいはそれが受容されざるもの、語りえないものにとどまるのか、考察する。

■(2)渡辺文

■発表題目:博士学位請求論文構成(仮)と第6章「絵画制作におけるモノと身体」

■発表要旨:

今回の発表では、現在執筆中である博士学位請求論文の仮目次を示し、その大まかな流れを説明する。そのうえで、第6章として予定している「絵画制作におけるモノと身体」の内容を発表したい。


田中ゼミ
日時:517日(火)15時開始
場所:人文研セミナー室2

■発表者:川本直美
■タイトル:フィールド調査報告
■要旨:
発表者は2011119日から418日の約3ヶ月間、メキシコのミチョアカン州でフィールド調査を実施した。研究テーマを「パン」に変更してからの初めてのフィールド調査ということもあり、特定の町や村に絞らず広範な地域でパンの基礎的なデータを集めてきた。今回はフィールド調査の報告と、これまでのパンの研究史などを発表し、今後の研究の方向性を定めるためのアドバイスなど、皆さんからいただきたいと考えている。よろしくお願いします。


田中ゼミ
日時:5/24(火)、15時開始
場所:人文研 セミナー室2
■発表者(五十音順)(1):北川了次
■題目:ヴァイオリンと職人に関する人類学的研究ー北イタリア・クレモナにおける弦楽器製作活動を事例にー
■要旨
北イタリアのクレモナはヴァイオリンの発祥地であり、かつてはアントニオ・ストラディヴァリなどの巨匠も工房をかまえ、多くの名器を生み出してきた。現在は約140軒もの工房が集積する世界的なヴァイオリンの一大生産地であり、職人の出身地もイタリアのみならずヨーロッパ、アジアなど多岐にわたる。今回の発表では、現代のクレモナに生きるヴァイオリン職人の製作実践の分析を通して、見えてきたことを提示したい。
(修士論文においては、ヴァイオリンの価値に関してまとめようと試みましたが、うまく行かなかったので、ただいま方向転換を考えています。さまざまな視点からのご意見を賜ることができれば幸いです。)

■発表者(五十音順)(2):村上慧次郎
■タイトル:グルビのテーマ的優位性〜理気二元論から見る韓国の干し魚産業〜
■要旨
 本発表では、韓国全羅南道霊光郡において主として製造されるイシモチの干物であるグルビとそれを作り続ける人々を研究することが韓国という地域に関する文化人類学的研究においてどのように位置づけられるかを示す。発表者がを注目しているのは、韓国における「モノ」に関する卑賤観である。韓半島において、17世紀の朱子学化以降、「モノやそれを作る人、売る人、技術そのものさえも卑しい」と考えられてきた。しかし、他方で韓国の伝統的な(=韓国的な)「モノ」であると声高に喧伝し、伝統を経済的資源として利用する事例が見られる。この矛盾した現象を克服する「韓国人」の論理とは何なのか?本発表では小倉紀蔵が提唱する理気二元論によって分析すると同時に、その分析を韓国の「モノ」に関する文化人類学的研究の系譜の中に位置づける。それによって、グルビとそれに関わる人々の研究のテーマ的優位性を示すことを目指す。


田中ゼミ

内容:個人発表、その後に学会リハーサル

時間:67日(火)15時開始

場所:人文研 セミナー室2

■発表者:李娜

■タイトル:農村女性の就業の多様化と性別役割について――江蘇省蘇北地区のカンユ県(〓〓)カン馬鎮(〓〓)卜都村を事例として

■要旨:
中国農村の経済の構造の転換に伴い、農村の就業構造も変わりつつある。この中に特に女性の就業行動に極大な影響を及ばしている。
職場に入り始まる農村の女性は今家庭内でどんな役割を演じているのか常に発表者の関心を引いている。今度1月中旬から、「過年」という中国の一番
重要な期間を経て調査してきた。出稼ぎに行った男性たちが、過年期間、故郷と家庭への思いを持って家に帰った。今度家庭全体像を把握しながら、
男性たちの語りを含めて、それぞれの性別役割を考察したい。

 

学会発表リハーサル17時開始予定)

17:00〜 飯塚真弓 「インド・チダンバラムの神々:空間構造、神話、宗教実践の視点から」

17:30〜 神本秀爾 「神の民と国境:ジャマイカ、ラスタファーライの帰還要求運動をめぐる一考察」

18:30〜 萩原卓也 「スポーツにおけるリスク文化とエンパワーメントの再考:女子プロレスラーの痛みの経験から」

19:00〜 飯塚真弓 「ヒンドゥー寺院司祭集団の婚姻にみる親族関係と儀礼空間南インド・チダンバラムのディークシタルを事例に」(宗教と社会学会)


菅原・田中合同ゼミ
日時:722日(金)13:30
場所:総人棟1207 
■発表者(五十音順) 1):李善英(田中研)
■タイトル:「移住者の根を探す空間韓人教会(韓国人教会)(ドイツのボン韓人教会と日本京都韓人教会を事例に)」
■要旨:
 移住社会での韓人教会はどのように(どんな形態で)トランスナショナリズムを実践しているか、そして韓人教会が国によって移住社会で占めている比重が違うが、どうして違うのかその要因を考察するのが本研究の目的である。この考察を通じて韓国人移住者はなぜ韓人教会に来るのかという本質的な質問の答えを求めるのができると思う。このために移住社会で韓人教会が占めている比重が低い理由を、反対に韓人教会の依存度が高い他の国の事例からアプローチしてその答えを模索しようとする。だから移住社会の中で韓国人のプロテスタントの比率が高い国、ドイツの韓人教会の事例を分析し、必要によって既存のアメリカの韓人教会の研究を引用する。そして最後に日本の韓人教会の事例に適用しようとする。 
■発表者(五十音順)(2):黒田さくら(菅原研)
■タイトル:「商業化されたサンテリーア、宗教実践としてのサンテリーアキューバ国立民族舞踏団とローカルな儀礼集団の比較を通して
■要旨:
 ソ連崩壊、米国の経済制裁を受けて深刻な経済危機に陥ったキューバは、1993年以降急速に国内経済の市場経済化を進めていく。革命の原点を確認しつつ独自の社会主義体制を守るために国営企業も多様な経営形態を模索するが、最大の外貨獲得手段のひとつはサンテリーアをはじめとするアフリカ系カルトの儀礼や公演のショービジネス化であった。本発表では、サンテリーアの儀礼や公演で収入を得る際、それはどのような意味で従来の宗教実践と異なっているのかを、キューバ最大の国家芸能組織であるキューバ国立民族舞踏団と儀礼集団カサを中心とした宗教実践との比較によって具体的に検討してみたい。 
■発表者(五十音順)(3):比嘉夏子(菅原研)
■タイトル:「経済を駆動する共同性:トンガ王国村落部における諸実践の検討」
■要旨:
 本発表では執筆中の博士論文について、暫定的な目次を提示し、全体の構成についてお話しします。論文の方向性としては、オセアニアにおいて展開されてきた贈与・交換をめぐる諸理論および「社会に埋め込まれた経済」の概念やモラルエコノミーの議論を念頭に置きながら、宗教実践をも含む「消費」の場における人びとの相互行為/振るまいをつぶさに検討することで、トンガの経済の駆動力を模索します。未だ目次案の状態ですが、みなさまからコメントをいただければ幸いです。よろしくお願いします。   


田中ゼミ
日時:104日(火)13時〜
場所:人文研セミナー室2
発表概要:

今回の発表は、九州人類学研究会オータムセミナー(1029日〜30日)において同タイトルで開催するセッションのリハーサルという位置づけです。各人の発表内容をブラッシュアップすると共に、セッション全体としてのまとまりを明確にしていくため、ゼミの場をお借りして皆様からのご助言をいただければと思っています。

セッションタイトル:「モノから見る人の集まり、モノの集まりから見る人」

セッション要旨:

近年の文化人類学的議論に見出せるひとつの傾向として、「モノ」の問題系への向かい直しが挙げられるだろう。現地のモノを現地の社会的文脈から明らかにするという1920年代以降の文化相対主義、審美性や形態論の観点からモノの普遍的価値を見出そうとする(とりわけ1980年代以降の)本質主義、そしてグローバルなアリーナにおいてモノの差異がつくられたり捨象されたりする過程へ侵入していく権力批判としての制度論。芸術論を中心に広がったこれら一連の論争は、現在、考古学や科学哲学など広く社会科学の諸分野と出会うことによって、存在論や方法論という根本的なレベルにおいて活発に議論されてきている。文化人類学のひとつの特徴が、人間の集団形成の在り方を描き出す点にあるとするならば、アクター・ネットワーク論やネクサス理論(アルフレッド・ジェル)などをはじめとした現在のモノ論から得られる視座は、「モノが所与の集団を表象する」のではなく、「モノが集団をつくる」、あるいは「モノの媒介によって形成される人間のつながり=集団」という側面を照射してくれる。

 本セッションではこのような問題系を踏まえたうえで、「集団形成におけるモノ」というテーマのもと、メンバーの具体的なフィールドの事例に基づいて議論を展開する。神本はジャマイカの三大ラスタ集団のひとつ、EABIC派信徒の着用するターバンが非EABIC派にも浸透するようになっている状況を、フェティッシュを介したネットワークの拡大と重層化という観点から分析する。田中は日本を中心とした下着の悉皆調査から、「彼女の下着」が徐々に所有者の身体の刻印から離床する過程、すなわち「下着が脱身体化するとき」について論じる。山野はワシントンD.C.におけるレストラン街での調査から得られた事例を検討し、エチオピア系移民の集まりについて考察する。渡辺はフィジーにおいて「オセアニア芸術」というカテゴリーを創造しようとする芸術家たちの制作行為、そして「見る」という行為の分析をとおして、作品の集まりと芸術家たちの集まりとを関連づけていく場について論じる。

このように地域も違えば対象とするモノも多様なメンバーによって構成される本セッションをとおして、モノの次元から人間のつながり、あるいは関係性をいかに描き出すことができるのかを見つめなおしてみたい。

 

発表者(五十音順)@:神本秀爾

「フェティッシュが重層化させるラスタファーライの空間――ジャマイカ、EABIC派のターバンをてがかりに」 

発表者(五十音順)A:田中雅一

「下着が脱身体化するとき――下着の悉皆調査から考える身体・所有・モノの集まり」

発表者(五十音順)B:渡辺文

「芸術家を媒介する作品」


菅原・田中合同ゼ

日時:1028日(金) 13:30

発表概要:

今回の発表は、九州人類学研究会オータムセミナー(1029日〜30日)において同タイトルで開催するセッションのリハーサルという位置づけです。各人の発表内容をブラッシュアップすると共に、セッション全体としてのまとまりを明確にしていくため、合同ゼミの場をお借りして皆様からのご助言をいただければと思って います。

セッションタイトル:「モノから見る人の集まり、モノの集まりから見る人」

セッション要旨:

近年の文化人類学的議論に見出せるひとつの傾向として、「モノ」の問題系への向かい直しが挙げられるだろう。現地のモノを現地の社会的文脈から明らかにするという1920年代以降の文化相対主義、審美性や形態論の観点からモノの普遍的価値を見出そうとする(とりわけ1980年代以降の)本質主義、そしてグローバルなアリーナにおいてモノの差異がつくられたり捨象されたりする過程へ侵入していく権力批判としての制度論。芸術論を中心に広がったこれら一連の論争は、現在、考古学や科学哲学など広く社会科学の諸分野と出会うことによって、存在論や方法論という根本的 なレベルにおいて活発に議論されてきている。文化人類学のひとつの特徴が、人間の集団形成の在り方を描き出す点にあるとするならば、アクター・ネットワーク論やネクサス理論(アルフレッド・ジェル)などをはじめとした現在のモノ論から得られる視座は、「モノが所与の集団を表象する」のではなく、「モノが集団をつくる」、あるいは「モノの媒介によって形成される人間のつながり=集団」という側面を照射してくれる。

 本セッションではこのような問題系を踏まえたうえで、「モノから見る人の集まり、モノの集まりから見る人」というテーマのもと、メンバーの具体的なフィールドの事例に基づいて議論を展開する。神本はジャマイカの三大ラスタ集団のひとつ、EABIC派信徒の着用するターバンが非EABIC派にも浸透するようになっている状況を、フェティッシュを介したネットワークの拡大と重層化という観点から分析する。田中は日本を中心とした下着の悉皆調査から、「彼女の下着」が徐々に所有者の身体の刻印から離床する過程、すなわち「下着が脱身体化するとき」について論じる。山野はワシント ンD.C.におけるレストラン街での調査から得られた事例を検討し、エチオピア系移民の集まりについて考察する。渡辺はフィジーにおいて「オセアニア芸術」というカテゴリーを創造しようとする芸術家たちの制作行為や「見る」という行為の分析をとおして、作品の集まりと芸術家たちの集まりとを関連づけていく場について論じる。

このように地域も違えば対象とするモノも多様なメンバーによって構成される本セッションをとおして、モノの次元から人間のつながり、あるいは関係性をいかに描き出すことができるのかを見つめなおしてみたい。

 

発表者(五十音順)@:神本秀爾

「フェティッシュが重層化させるラスタファーライの空間――ジャマイカ、EABIC派のターバンをてがかりに」 (仮)

発表者(五十音順)A:田中雅一

「下着が脱身体化するとき――下着の悉皆調査から考える身体・所有・モノの集まり」(仮)

発表者(五十音順)B:山野香織

「エチオピア料理から見る移民ネットワーク――ワシントンD.C.のエチオピアンレストランを中心に」(仮)

発表者(五十音順)C:渡辺文

「芸術家を媒介する作品」


田中ゼミ

日時:111日(火)1330分〜
場所:人文研セミナー室2
■発表者(五十音順)@:李愛蘭
■タイトル:未定

■要旨:未定
■発表者(五十音順)A:村上慧次郎

■タイトル:「修士論文「韓食生産の歴史民族誌〜霊光グルビを事例にして〜」執筆にむけて」

■要旨:

本発表では、上記の修士論文のひながたを示すことを目的とする。内容は発表者が2011714日〜930日にかけて行ったフィールド調査で得られた生産、流通、販売の現場を中心となる。発表者は当初、生産者の実践を「生業活動」としてたんたんと記述していこうと考えていたが、それでは劇的に変化している韓国社会において、生産者が与えられた状況の中でどのように判断し、行動しているかを描き出せないという結論に至った。そこで発表者は本田洋の報告を援用して、「近代化の・・・