灌頂と即位の文化史

班長 藤井正人

灌頂と即位の文化史
2011年4月、アグニチャヤナ祭での祭主の灌頂(インド・ケーララ州地元新聞より)

この共同研究は、2011年3月で終了した共同研究「王権と儀礼」(2005.4-2011.3) を進展させるため、テーマを新たにして発足させるものである。期間は 2011年4月から2014年3月までの3年間を予定している。前共同研究では王権とそれに関わる儀礼全般を対象としてきたが、新しい共同研究では、古代インドなどにおいて即位や入門の儀礼で中心的な行為となっている「灌頂」に焦点をあて、その行為の基本形態、類型、変化、伝播、異文化との混交などに関して、文化史的アプローチから研究する。広範囲の地域と時代にわたる文化事象として、古代インドの、王即位式をはじめとするさまざな祭式に現れる「灌頂」から、インド、中国、日本の仏教の入門入信儀礼における「灌頂」、さらには、天皇の即位儀礼しての「灌頂」などが研究の対象となりうる。

「灌頂」という即位ないし入門に関わる特定の文化事象を研究対象の中心とするので、地域、時代、事例に関して研究視野を広げるために、多様な分野の研究者に集まってもらう予定である(ヴェーダ、ヒンドゥー教、インド仏教、中国仏教、日本仏教、南アジア史、東アジア史、日本史、美術史、宗教学、人類学、ほか)。

研究方法としては、各種事例の比較研究を進めるとともに、他分野の研究者に負担をかけない形で文献資料の基礎研究をも行なう。具体的には、課題に関する研究報告を集中的に行なう「研究集会」と、古代インドの王即位式に関するサンスクリット資料の校訂と訳注を行なう「会読」という二種の研究会を、切り離した形で開催して研究を進める予定である。


所内班員
高木 博志、田中 雅一