中國中世寫本研究

班長 高田 時雄

この研究班は、これまで五年間にわたり行ってきた「西陲發現中國中世寫本研究」班の發展的繼續です。「西陲」班は敦煌吐魯番など甘肅新疆を中心とする中國西部から發見された古寫本を主たる研究對象とし、いわゆる「敦煌學」百年の傳統を背景としながら、樣々な新しい條件下に、現在の敦煌學の國際的ネットワークを通じて、相當な成果を擧げ得たと自負しています。班員諸氏による研究成果は研究班の滿了時期を待たず、各年度末に《敦煌寫本研究年報》としてすでに五册が公刊されています。

新班ではこの「西陲」班の運營及び成果刊行の方式を、基本的にすべて受け繼ぎながら、對象となる寫本の範圍をさらに別の方面に擴大することを主眼としています。擴大のターゲットは主として日本國内の寺社及び圖書館、博物館等に所藏される日本古寫本です。日本古寫本の重要性はこれまでも注目を集めていましたが、近年の調査によって新たな發見が行われ、その豊富な内容が明らかになるにしたがい、中國の學界でも日本古寫本に對する關心はいよいよ高まっています。さらに同時代の材料として敦煌吐魯番寫本と日本古寫本の比較研究は、中國中世におけるテキストの傳播と變遷を考察する上で重要な視點を提供するものと言えます。これら日本國内に傳承されてきた古寫本を取り上げ、より廣いパースペクティブの中で研究を進めることにより、新たな知見が數多く得られることが期待されます。この種の研究はまた日本の研究者が主體的に擔うべき重要な側面の一つと考えられます。

もちろん敦煌吐魯番など西陲發現寫本を研究對象の中心に据えるという姿勢はこれまでどおり何らの變更もありませんが、本研究班ではそれに若干の新しい材料と視座を付け加えて、研究のさらなる進展を目指したいと思います。研究期間は平成23年4月から3年間を豫定しています。


班員
池田巧、永田知之、藤井律之、
【所外】馬場正晃、赤尾榮慶、赤木崇敏、荒見泰史、岩尾一史、岩本篤志、落合俊典、玄幸子、坂尻彰宏、徐銘、辻正博、高井龍、中田裕子、中村友香、西村陽子、松浦典弘、丸山裕美子、道坂昭廣、宮井里佳、本井牧子、山本孝子、遊佐昇、大西磨希子、佐藤礼子、白石將人、林生海