軍事環境問題の研究 -- A Transdisciplinary Study of the Environmental Impact of Military Activities

Activities

第4回研究会

日時:2013年11月9日
場所:総合地球環境学研究所 セミナー室3・4

発表:

  • 「米軍の環境保護主義に関する考察――グアム統合軍事開発計画を事例に」/西 佳代(広島大学大学院総合科学研究科 准教授)

    要旨:
    冷戦終結後、米軍は環境の管理者としての役割を強調するようになった。本発表では、アメリカ国防総省が2006年に明らかにしたグアム統合軍事開発計画(GIMDP)の環境影響評価をめぐる経緯から米軍の環境主義について考察する。また、米軍の環境主義が土地の軍事利用を正当化していることについて問題提起を行う。 GIMDPには、沖縄県に駐留する九千人近い海兵隊を米領グアムへ配置し、そこに本格的な海兵隊基地を建設する計画が含まれていた。島政府と島民は、島の人間環境に甚大な負の影響をもたらす計画を連邦政府が一方的に決定したことに対して強く反発した。一部の連邦議員も、基地の安定性を損なうとして、国防総省に計画の見直しを迫った。その結果、国防総省は「順応的管理」にもとづき、実施期間の延長やグアムに移転する海兵隊の規模縮小を明らかにしたほか、チャモロ族の文化財保護に配慮する姿勢に転じた。 米軍の環境主義は、チャモロ族のGIMDPに対する抵抗をある程度緩和したが、逆にGIMDPを正当化する働きを持っている点に留意すべきである。

  • 「沖縄県調査――嘉手納・普天間基地周辺における航空機騒音暴露に関する疫学調査」/平松幸三(京都大学東南アジア研究所 名誉教授)

    要旨:
    1995年から4年間沖縄県の依頼を受けて、嘉手納基地ならびに普天間基地周辺において航空機騒音曝露に関する疫学調査を実施した。曝露量は、防衛施設庁が1977年に引いたWECPNを指標とする騒音コンターによった。騒音の影響にかかる調査項目は、聴力低下、生活妨害(睡眠妨害を含む)、児童の発達への影響、胎児への影響、循環器系への影響などである。得られた結果は、概略以下のとおり。激甚騒音曝露地区において一部住民に騒音曝露を起因とする可能性のきわめて高い聴力低下を認めた。低出生体重児出生率と騒音曝露量との間に正の相関関係のあることを認めた。児童の記憶力(長期記憶)に騒音曝露が負の効果をもたらすことを認めた。騒音曝露と血圧との間に正の相関関係を認めた。高騒音曝露地区において高血圧と認定される人員の増加を認めた。騒音曝露が心身症を主とする身体的影響を与えることならびに種々の生活妨害をもたらすことを認めた。さらに詳細な解析の結果、騒音による「不快感」がストレスとなって身体的影響が発現するのではなく、睡眠妨害がもっとも大きく寄与することを認めた。

これまでの関連活動

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