軍事環境問題の研究 -- A Transdisciplinary Study of the Environmental Impact of Military Activities

Fieldwork

マーシャル

マーシャル諸島調査(2013年8月14日~28日)(中原)

8月14日から23日にかけて、核実験被害のためロンゲラップ環礁の人びとが避難しているメジャト島にて、被爆当時の食事について聞き取り調査を行った。これまで出版されているマーシャル諸島における被ばく関係の文献によれば、一部の被爆者は被ばく後の食料の「味」や「食感」の違いについて言及していて、私自身もそのような証言を聞いていた。今回改めて、より幅広い聞き取り調査を行ったところ、この違いを指摘する人はごく一部であることが明らかになった。

 24日から28日にかけては、首都マジュロで、今後の被ばく調査に関する人的ネットワークを構築した。ビキニ環礁地方政府広報官ジャック・ネイザンダール氏、マーシャル諸島上院議員ケネス・ケディ氏、マーシャル諸島新聞の記者ギフ・ジョンソン氏、核実験裁判所のビル・グラハム氏らと面会した。彼らとの談話から、マーシャル諸島政府も地方政府も、放射能汚染の実態を明らかにするという関心は低いことが明らかになった。また、核実験裁判所のビル・グラハム氏は、核実験裁判資料アーカイブの設立準備を行っており、本共同研究に有効なネットワークを構築できた。また、東北大学は過去にマーシャル諸島の被ばく者の健康調査を、マーシャル諸島核実験裁判所の協力のもと行っていることが明らかになった。

今回は、5月に公開された核実験機密文書の入手も一つの目的であったが、アメリカ大使から大統領に手渡された資料は行方不明となっており、マーシャル諸島での入手は出来なかった。このことからも、核実験データに関する意識の低さを感じた。今後の研究継続は、この認識の低さの中でいかに協力体制を構築するのかが大きなポイントだと考えられる。(文責:中原聖乃)