機構・組織
1.機構・組織
2000年4月、人文科学研究所は1949年の設置以来半世紀以上にわたって続けてきた小部門制から大部門制に移行した。 日本部、東方部、西洋部の3部に分かれていた17小部門+1附属施設を、5大部門+1附属施設に再編し、研究運営の便宜上これを人文学研究部と東方学研究部の2部に分けた。 その後、一つの附属研究センターを加え、現在に至っている。
2.各部門の研究内容
2024年8月1日現在
文化研究創成部門
人間の文化を構成するのは、生物としてのヒトであり、そのヒトから成る家族や民族などの集団であり、会社や国家などの社会組織である。
文化研究創成とは、そうした文化についての研究のあり方を、既存の研究分野やディシプリンにとらわれることなく、根底から見直したうえで、新たな研究視角の提示や研究方法の創出をめざすものである。
この課題を遂行するため、本部門では、従来から重視されてきた社会科学や自然科学との連携に留まらず、芸術学に媒介的な役割を与え、文理融合から文芸理融合へと分野横断的研究を拡大・深化させることを構想している。
本部門が学際的に編成されているのは、こうした課題意識に基づく。
本部門は、他の研究部門の成果を統合する結節環としての機能も担っているが、さらに、研究成果を国内外に発信し社会に還元する課題にも、客員部門と協力しつつ、積極的に取り組んでいる。
構成員
石井 美保、岡田 暁生、立木 康介、瀬戸口 明久、藤原 辰史、森谷 理紗、岡澤 康浩、藤野 志織、
冨山 一郎(客員)、岩尾 一史(客員)
文化生成部門
文化が生まれ、発展し、継承されていくメカニズムの解明なしには文化の本質や根源に迫ることはできないし、錯雑化した現代の文化状況を分析し、そこから将来への展望を切り拓くこともできない。
しかしながら、文化といってもそこには政治・経済からはじまって文学・思想・美術など多種多様な領域があり、それぞれの文化領域を捉えるための方法や視角は、けっして一元的ではありえない。
さらにまた文化が生まれ、変容し、伝承されていく、その様態は時代や地域において著しく異なっており、その時間と空間の違いに起因する多様性を究明することにこそ、文化研究の醍醐味があるとともに困難さも潜んでいる。
時代や地域そして分野によって異なる文化のあり方を、その固有性において把握するとともに、固有性を超えた普遍性のレヴェルをも探求し、文化の本質を明らかにするところに本部門の課題がある。
構成員
高木 博志、直野 章子、KNAUDT, Till、酒井 朋子、福家 崇洋、金 智慧
文化連関部門
文化はひとたび生まれると時代や空間を超えて移動し、相異なる文化との接触を繰り返しながら変貌を遂げる。人類の文明を形成してきたのはこうした異文化接触であった。
加速度的に亢進するグローバリゼーションの時代にあって、経済や政治そして情報は世界的な同時性をもって動き、社会も連動性をもって推移している。
しかし、同時性や連動性と並んで、地域的な文化や生活の固有性を保持しようとする力が作動していることも看過されるべきではない。
また、文化の流動性と持続性がせめぎあう異文化交渉の過程が、時代に応じて大きく変容してきている以上、長いタイムスパンの中で実相を明らかにする努力は不可欠である。
歴史的パースペクティヴなしでは、眼前の趨勢さえ見誤ることになりかねない。
本部門では、文化生成部門の成果を踏まえ、異文化間接触で生じる事態の考察を通じて、グローバル化時代における学知のあり方を探求している。
構成員
小関 隆、森本 淳生、伊藤 順二、小堀 聡、菅原 百合絵、菊地 暁
文化表象部門
継続性と広域性を兼ね備えた東アジアの文化体系について、時間と空間の両面に関わる文化の実相を、文献研究と実地調査の二重証拠法により総合的に研究する。
人間の創造した文化は、そのエッセンスをなす部分が後世に伝えられるに際し、文学や思想などのように文字を介するもののほか、文字以外の形態によって承け伝えられる分野も相当の割合を占めている。
しかも文字を介した文化伝承の場合に比べ、それ以外の媒体で伝承される文化については、その中に込められた思考や価値観を抽出することは容易ではなく、それぞれの分野ごとに独自の方法を用意する必要がある。
本部門では、主たる対象を中国を中心とする東アジア文化圏に定め、考古文物、出土文献、科学技術、図像芸術、礼制習俗など五つの分野に重点を置いて研究対象の歴史的変遷を記述するばかりでなく、形象化して表出された文化の諸要素が、東アジア文化圏のなかで如何なる地位を占め、如何なる機能をはたしてきたのか、また周辺の文化圏とどのように相互交渉を行ってきたのかについても探究する。
構成員
稲本 秦生、FORTE, Erika、古松 崇志、矢木 毅、呉 孟晋、中西 竜也、向井 佑介、平岡 隆二、髙井 たかね
文化構成部門
本部門は、文化表象部門との協同のもとに、おもに中国を中心とする東アジア地域を対象として、その文化体系の全体像を解明する研究の一翼を担う。
文化表象部門が非言語的な文化現象を手がかりに文化観念の側面にまで分析を進めるのとは対照的に、本部門ではまず言語を通じて表出される文化営為に着目して、言語史、宗教史、思想史、制度史、新学史など五つの分野から文化意識の形成を時系列的に追究するとともに、その文化意識の表出としての文化現象にまで考察の対象を広げることによって、意識から表象へというベクトルに沿いながら、文化体系の深層から表層にいたる成り立ちを構造と動態の両面から複合的に解明する。
さらに言語史、制度史の分野では、「人文情報学創新センター(旧:東アジア人文情報学研究センター)」と協力して全国漢籍データベース、人文科学研究所蔵拓本データベースなどの構築を進める。また、新学史分野は現代中国研究センターとともに、人文学とくに歴史学の視角から現代中国の深層構造を分析する。
構成員
池田 巧、稲葉 穣、古勝 隆一、船山 徹、宮宅 潔、倉本 尚徳、野原 将揮、白須 裕之、藤井 律之、宮 紀子
人文情報学創新センター(旧:東アジア人文情報学研究センター)
「人文情報学創新センター」は、「東洋学文献センター」「漢字情報研究センター」「東アジア人文情報学研究センター」と続く漢字史料の研究と情報化のノウハウを近現代史料にも応用するために、2023年10月に改組した。
その主たる任務は、漢字に対して情報科学的な研究を行い、新しいメディアを通して漢字文献を広く研究者に提供することである。
各種のデータベースが作成されつつあり、なかでも長い歴史を有する『東洋学文献類目』は、近年ウェブ上でも利用できるようになった。
構成員
岩城 卓二、WITTERN, Christian、安岡 孝一、須永 哲思、永田 知之、楊 維公、李 媛、李 英美、劉 冠偉
現代中国研究センター
「現代中国研究センター」は、現代中国についての共同研究を重点的に推進するために、京都大学規程に定める附属研究センターとして、2007年4月に発足した。
下に挙げた構成員のほか、学内の関連諸部局(経済学研究科、文学研究科、人間・環境学研究科、法学研究科、学術情報メディアセンターなど)の教員を兼任などの形で受け入れ、京都大学の現代中国研究者が持続的な共同研究を行う場の構築を目指している。
2007年度より10年間は、人間文化研究機構(大学共同利用機関法人)の実施したネットワーク型研究推進事業(現代中国地域研究)の京都大学側の受け皿となったが、同事業の終了後も、中国近現代史分野の研究を中心に、活動を継続している。
構成員
石川 禎浩、村上 衛
3.施設
本館
人文科学研究所本館は、吉田本部構内の北、今出川通りに面してある、地下1階・地上4階建ての建物である。 地下部分は工学部が使用し、地上部分の一部は工学部の講義室および数理解析研究所の研究室となっている。 「人文情報学創新センター(旧:東アジア人文情報学研究センター)」を除く人文研の全教員の研究室、事務室、図書室をはじめ、研究会を開催するためのセミナー室、特別研究員・外国人研究員などの研究室、新たな研究に必要なスペースなどが設けられている。 また、館内には人文研の附属施設の「現代中国研究センター」も併設されている。
人文情報学創新センター(分館)
北白川の閑静な住宅街にたたずむ分館は、東方文化学院京都研究所屋として1930年11月に竣工した。 文化庁の登録有形文化財に指定されている。 武田 五一と東畑 健三の設計。 スペイン僧院を模したロマネスク様式に東洋風を加味した美しい建物で、随所に趣向を凝らした意匠がみられる。 そびえ立つ尖塔に隣接して書庫があり、膨大な漢籍が収納されている。京都の東洋学研究の象徴として名高く、現在は「人文情報学創新センター(旧:東アジア人文情報学研究センター)」が使用している。