京都大学人文科学研究所

共同研究:基盤研究班(C班)

「異端」の人文学班長:石井 美保・向井 佑介

 人文社会科学において、「異端」は思想・宗教・芸術・科学をはじめとする幅広い領域を含む重要な研究テーマであり続けてきた。 たとえば思想史においては丸山真男を中心とした「正統と異端」研究会の存在や、歴史学と人類学ではカルロ・ギンズブルクやタラル・アサドらによる異端研究が挙げられるが、人文科学研究所においても1970年代に旧西洋部・日本部・東方部の研究者たちによって「異端運動の研究」研究班が組織され、その成果として1974年に会田雄次と中村賢二郎を編者として『異端運動の研究』が刊行されている。 これらの研究の蓄積を踏まえた上で、本研究班では、東方部と人文部の若手・中堅研究者が中心となり、それぞれの研究領域を「異端」という切り口から捉え直すことを試みる。 そこで検討されるテーマは、たとえば隋・唐時代に「異法」として弾圧の対象となった三階教、漢代以降の儒教規範の周辺にあって独自の発展を遂げた宗教的建築物と祭祀、17・18世紀フランスにおけるジャンセニスム、植民地期アフリカにおける「魔女」の告発と弾圧、科学的農業のオルタナティヴとしての有機農業の展開、日本の社会運動におけるイデオロギー対立に至るまで多岐にわたる。 このように地域的にも時代的にも幅広い領域における多様な「異端」のありようを検討することで、本研究班はそれぞれの事例の独自性とそれらに通底する普遍性を探究するとともに、正統と異端、権力と周辺の間に存する排除と包摂、対立と相互依存といった緊張関係の様相を多角的に明らかにする。 さらに本研究班は、共同研究班における活発な議論と対話を通して、両部の若手・中堅研究者がそれぞれの研究に関する相互理解を深め、これからの人文学のあり方をともに考えていくための基盤となることを目指している。

研究期間:2024年4月 ~ 2027年3月

班員(所内)

石井 美保[班長]
向井 佑介[班長]
倉本 尚徳
呉 孟晋
小堀 聡
酒井 朋子
菅原 百合絵
須永 哲思
瀬戸口 明久
永田 知之
中西 竜也
野原 将揮
平岡 隆二
福家 崇洋
藤原 辰史

2024年08月01日 更新

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