酒井 朋子 准教授 – Associate Professor SAKAI, Tomoko

酒井 朋子 准教授 – Associate Professor SAKAI, Tomoko

汚穢と非-秩序をめぐる日常現場の倫理

本研究は、「きたない」現象・体験や汚穢忌避についての考察を通じて倫理の新しい次元を描き出すことをめざす。汚穢は生命の象徴であるが、同時に脅威でもある。身体的・空間的なものであれ、社会的・道徳的なものであれ、汚穢は近代を通じて矯正・衛生化、および管理と隔離の対象とされてきた。しかし日常生活の現場では人は、異物やきたなさのあらわれや侵入の強弱とリズムに対し、身構えたり、あきらめたり、みずから変容したりと多様な反応をとる。そうした様子を、親密な人や自分の身体分泌物、飲み物・食物と汚染、災厄への意識と生活様式の改変などを事例に記述し考察していく。また、「よさ」「行為の正しさ」をめぐる道徳や倫理の領域が「きれい／きたない」の概念と密接に結びついていることをいかに考えるべきか、および、あらゆるものを市場化する欲望である新自由主義システムに汚穢はどこまで取り込まれるのか、なども探究していきたい。