共同研究
わたしのかつての雇用者である国立民族学博物館もいまの人文科学研究所も、その売り文句は共同研究です。しかし、人文研と全国の、とくに国立大学共同利用施設と位置づけられている高等研究機関(上記の民族学博物館や歴史民俗学博物館、そして国際日本文化研究センターなど)の共同研究との相違は歴然としています。人文研の共同研究会は本来、学内あるいは所内のスタッフを中心に組織されたもので、月に二回から三回開催されます。一方、共同利用施設の研究会は一般に全国の研究者に声をかけ、年に多くて五回ほどの研究会を行うことが期待されています。人文研の場合、メンバーこそ学外から参加するのが今日では当たり前となりましたが、予算は相変わらず少なく、全員に旅費を出せる体制は整っていません。
イギリスの大きな大学では週一度学科セミナーというものが開かれます。これはかならずしも統一テーマによって組織されるとは限りませんが、一学期(一〇週)を単位に、組織者が責任を持って報告者を決めます。一時間報告して一時間討論する、というのが一般的です。人類学の論文集のいくつかはこうした一学期間のセミナーの成果です。Pat Caplanが組織したCultural
Construction of SexualityのセミナーやBloch &ParryによるMoney and Morality of Exchangeなどが心に残っています。研究会のおかげで論文も書ける(書かされる)、と考えれば研究会がわたしの研究生活におよぼした影響は大きい。研究会の成果と考えられる公刊論文は全体のおよそ三分の一です。成果という形で公刊されなかったものでも研究会で報告したものが多くあります。テーマが重なれば、いくつかの研究会でひとつの論文を――もちろん内容がまったく同じということはありませんが――なんどもリサイクルすることがあります。何度報告しても、レジュメのままで机の引き出しに眠っている、生命力のある(?)論文もいくつかあります。それらのうちの二つがなんとか今年中に印刷されそうです。どちらも最初に報告したのが八七年や八八年、いまから一〇年以上前のことです。以下はわたしが参加した研究会のリストです。
他に以下のURLをも参照。https://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/hub/~shakti/societies.html
- 1984-04〜1988-03
国立民族学博物館共同研究
『文化的プラクティスとイデオロギー:人類学的認識論との関連において』
代表者:田辺繁治
- 1986-04〜1989-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『民族誌記述の方法をめぐって』
代表者:谷 泰
- 1987-04〜1990-03
国立民族学博物館共同研究
『ASIANIZED INDIAの宗教と言語』
代表者:長野泰彦
- 1988-04〜1991-03
国立民族学博物館共同研究
『ヒンドゥー的世界観に関する民族学的研究』
代表者:永ノ尾信悟
- 1988-04〜1991-03
国立民族学博物館共同研究
『性と文化表象に関する比較研究』
代表者:須藤健一
- 1988-04〜1991-03
国立民族学博物館共同研究
『上座部仏教社会の宗教』
代表者:田辺繁治
- 1988-04〜1992-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『家族とハウスホールドの比較史的研究』
代表者:前川和也
- 1990-04〜1994-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『儀礼的暴力の研究』
代表者:田中雅一
- 1991-04〜1996-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『コミュニケーションの自然誌』
(文化相互行為論)
代表者:谷 泰
- 1991-04〜1994-03
国立民族学博物館共同研究
『女神:性と聖をめぐる比較文化論』
代表者:田中雅一
- 1991-04〜1994-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『人文学のアナトミー』
代表者:山田慶児
- 1991-04〜1995-03
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同研究
『東南アジアにおける「正統」の波及・形成と変容』
代表者:石井薄
- 1992-04〜1995-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『ステイタスと職業』
代表者:前川和也
- 1992-04〜1994-03
国立民族学博物館共同研究
『宗教体系と民族誌記述の方法』
代表者:田村克己
- 1993-04〜1995-03
国立民族学博物館共同研究
『数理民族学:その応用的研究』
代表者:小山修三
- 1993-04〜1997-03
国際日本文化研究センター共同研究
『日本人はキリスト教をどのように受容したか』
代表者:山折哲雄
- 1993-04〜1996-03
東京大学東洋文化研究所
『ヒンドゥー儀礼の歴史性、地域性及び社会階層性に関する研究』
代表者:永ノ尾信悟
- 1993-04〜1997-03
『島根半島祭礼行事調査』
代表者:白石昭臣
- 1994-04〜1996-03
国立民族学博物館共同研究
『水産資源利用の人類学的研究:生態・歴史・文化』
代表者:秋道智彌
- 1994-04〜1997-03
国立民族学博物館共同研究
『民族誌的現在の歴史的文脈』
代表者:栗本英世
- 1994-04〜1998-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『主体・自己・情動構築の文化的特質』
代表者:田中雅一
- 1994-04〜1998-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『近代社会における研究者の組織化:研究所・学会・学派』
(近代の学の形成)
代表者:阪上孝
- 1995-04〜1998-03
地域研=AA研連携研究共同研究
『南アジアの宗教・権力・社会』
代表者:押川文子
- 1995-04〜1997-03
国立民族学博物館共同研究
『近代における「異文化」像の形成』
代表者:吉田憲司
- 1997-04〜2000-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『個をめぐるミクロ人類学確立に向けての基礎的研究 対象・研究者・パラダイムの連関的考察』
代表者:田中雅一
- 1997-04〜2000-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『植民地主義と人類学』
代表者:山路勝彦
- 1997-04〜1999-03
(財)国際開発高等教育機構研究会
『ジェンダー』
代表者:内山田康
- 1997-04〜1998-03
国立民族学博物館共同研究
『認知と実践:人類学的アプローチ』
代表者:田辺繁治
- 1998-04〜1999-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『「進化論」を読む』
代表者:阪上孝
- 1998-04〜2000-03
国立民族学博物館共同研究
『実践コミュニティの再検討』
代表者:田辺繁治
- 1998-04〜2003-3
COE拠点形成プロジェクト『アジア・アフリカにおける地域編成』
京都大学東南アジア研究センター
代表:白石隆教授
- 1999-04〜2002-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『「進化論」と社会』
代表者:阪上孝
- 1998-04〜2001-03
国立民族学博物館共同研究
『癒しと救いの民族学的研究』
代表者:立川武蔵
- 1999-04〜2002-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『ポルノグラフィー研究:エロスとその表象をめぐって』
代表者:大浦康介
- 1999-04〜2001-03
特定領域研究『南アジア世界の構造変動とネットワーク 多元的共生社会の発展モデルを求めて』
龍谷大学
代表者:長崎暢子
- 2000-04〜2003-03
京都大学人文科学研究所共同研究
『フェティシズム研究の射程』
代表者:田中雅一
- 2000-05〜2003-3
大阪大学文学部
『戦死者のゆくえ』
代表者:川村邦光
- 2000-04〜2005-03
東京外語大AA研共同研究
『社会空間と変容する宗教』
代表者:西井涼子
- 2000-04〜2003-03
東京外語大AA研共同研究
『アフリカ・アジアにおける政治文化の動態』
代表者:小川了
- 2001-4〜2003-3
科研『日本における文化人類学教育の再検討:新たな社会的ニーズのなかで』
東京大学
代表者:山下晋司
- 2001-4〜2004-3
科研『「人種」の概念と実在性をめぐる学際的基礎研究』
京都大学人文科学研究所
代表者:竹沢泰子
- 2002-4〜2007-3
科研『贈与交換経済における貨幣資源の浸透』
大阪大学
代表者:春日直樹
- 2003-4〜2006.3
人文科学研究所共同研究
『人種の表象と表現をめぐる融合研究』
代表者:竹沢泰子
- 2003-4〜2004-3
『アジアの軍隊の歴史・人類学的研究』
代表者:田中雅一
- 2003.4〜2006.3
『福祉国家の後』
代表 阪上孝
- 2004.4〜2007.3
『東アジアと東南アジアを中心とする軍隊の歴史人類学的研究』
代表者:田中雅一
- 2004.4〜2008.3
『古代文明の生活環境復元の試み インダス文明を例として』
総合地球環境学研究所
代表者:長田俊樹
- 2005.4-2009.3
人文科学研究所共同研究
『王権と儀礼』
代表者:藤井正人
- 2005.4-2006.3
人文科学研究所共同研究
『フェティシズムの社会・文化的脈絡』
代表 田中雅一
- 2005.4-2009.3
東京外語大AA研共同研究
『人間社会の進化史的基盤研究(1)』
代表 河合香吏
- 2006.4-2008.3
人文科学研究所共同研究
『複数文化接触領域の人文学』
代表 田中雅一
- 2007.4.-2009.3
東京外語大AA研共同研究
『社会空間論の再検討―時間的視座から』
代表 西井涼子
- 2007.4-2009.3
東京外語大AA研共同研究
『「シングル」と社会 ―人類学的研究』
代表 椎野若菜
- 2007.4-2009.3
東京外語大AA研共同研究
『「もの」の人類学的研究――もの、身体、環境のダイナミクス』
代表 庄呂郁哉
- 2007.4-2009.3
人文科学研究所共同研究
『第一次世界大戦の総合的研究に向けて』
代表 山室信一・岡田暁生
- 2007.10-2010.3
国立民族学博物館共同研究
『日本人類学史の研究』
代表 山路勝彦
- 2008.4-
京都大学グローバルCOE
『生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点』イニシアティヴ4「地域の知的潜在力研究」
- 2008.10-2011.3
国立民族学博物館共同研究
『平和・紛争・暴力に関する人類学的研究の可能性』
代表 小田博志
- 2009.4-2013.3
東京外語大AA研共同研究
『人間社会の進化史的基盤研究(2)』
代表 河合香吏
- 2010.4-2013.3
東京外語大AA研共同研究
『「シングル」と家族―縁(えにし)の人類学的研究』
代表者 椎野若菜
- 2009.6-2012.3
現代インド研究センター 京大拠点
『プロジェクト2 多文化世界としての現代インド』
代表 田中雅一
- 2009.10-2015.3
現代インド地域研究拠点
京大グループ2
『多文化世界としてのインド社会』
代表 田中雅一
- 2010-2013
人文科学研究所共同研究
『トラウマ経験と記憶の組織化をめぐる領域横断的研究ナラティヴからモニュメントまで』
代表者 田中雅一
- 2010-2012
人文科学研究所共同研究
『グローバル化する思想・宗教の重層的接触と人文学の可能性』
代表者 奥山直司