京都大学人文科学研究所

研究者・活動について
東アジアの宗教美術と社会

共同研究

東アジアの宗教美術と社会班長:稲本 泰生

 本研究では中国の仏教美術を中心に、東アジアにおける宗教美術と社会の関係性について実作例に即した考察を行う。

 当研究所には水野清一・長廣敏雄らの中国石窟研究に代表される、仏教美術研究の膨大な蓄積がある。 2017~2021年度に組織した『龍門北朝窟の造像と造像記』班ではこの伝統を継承しつつ、今日の国内外における研究水準にみあった基盤の整備に貢献することに重点をおいた。 具体的には、所内で新たに確認された龍門石窟の拓本資料群を活用して、造像記の文面・内容を彫刻の造形と照合しつつ確認する作業を行い、北朝期の事例の過半について検討を終えた。

 その結果改めて浮き彫りとなったのは、造像の様式・図像・制作過程などを理解する前提として、担い手となった個人・集団の属性や構造、すなわち身分の貴賎、出家在家の区別、性別、血縁関係、出身地などを把握することの重要性である。 文字情報が豊富な中国の造像は、こうした観点から宗教美術のあり方を研究する際に、とりわけ有効なモデルを提供する。

 本研究では引き続き、北朝隋唐期の龍門造像記を中心とする、中国仏教美術関連の文字史料の検討を一つの柱とする。 一方で「社会との関係」を共通テーマとしつつ、対象を東アジアの宗教美術全般にも視野を広げて班員による研究発表を行い、多様な事例から議論を深化させる。 両者の総合によって学界の共有財産となる基礎資料を蓄積するとともに、文物研究の場に広く応用可能な新たな視点の獲得と、厚みある成果の創出をめざす。

研究期間:2022年4月 ~ 2025年3月

班員(所内)

稲本 泰生[班長]、安岡 孝一、フォルテ,エリカ、古勝 隆一、倉本 尚徳、呉 孟晋、向井 佑介

2023年07月10日 更新

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